軽いさばき重視の角道クローズ型石田流
「石田流▲7七角型」とは、▲7六飛と浮いたあとに角を8八から7七に移動して▲7七角型に構える、角道クローズ型の石田流三間飛車です(代表図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・v金 ・v銀v玉 ・|二 |v歩 ・v歩v銀v歩v歩v角 ・ ・|三 | ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩v歩v歩|四 | ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 飛 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|六 | 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 歩 ・|七 | ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 玉 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=29 ▲7七角まで
同じく角道クローズ型の「石田流本組み」が飛車・角・銀・桂の圧力で7筋から5筋にかけての力強いさばきを狙うのに対し、石田流▲7七角型では軽いさばきと機動力を重視しています。
すなわち、角は▲6五歩から角交換して軽くさばき、飛車・銀は左右の揺さぶりの筋を含む軽いフットワークを見せながらさばくのが狙いです。

桂跳ねと端歩突きが不要なため、石田流本組みに比べ少ない手数で組み上げることができるので速攻に向いています。
その反面、左桂は初形の8九のままなので、7七に桂が飛ぶ石田流本組みに比べ左桂はさばきにくいと言えます。ただし、相手から△7七角成とさせれば手順に▲同桂と跳ねることができるので、それを狙っていくとよいでしょう。
21世紀に入り当たり前になった▲7七角型
石田流▲7七角型は、20世紀までは定跡外し的な戦術だったように思いますが、21世紀に入ってからはとりわけ居飛車左美濃に対してその優秀性が認知され(対石田流の左美濃自体が21世紀に入ってから多く指されるようになったという背景もあります)、一気に定跡化が進み、今では当たり前の形となりました。
対居飛車穴熊や対棒金で使われることもあります(参考1図、参考2図)。やはり早々に角交換するのが基本的な狙いです。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・v金v銀v桂 ・|一 | ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・v王v香|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v角v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 飛 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ ・ ・ 銀 ・ ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ 金 ・ 金 王 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=0 ▲7七角まで
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・v銀v王v角 ・|二 |v歩v金v歩v銀v歩v歩 ・v歩 ・|三 | ・ ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・v歩|四 | ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 飛 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六 | 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 歩 ・|七 | ・ ・ ・ 銀 金 ・ 銀 王 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=0 ▲7七角まで


軽いフットワークとさばき
石田流▲7七角型の軽いフットワークを示す一例が、第1図以下の手順です。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・v金 ・v銀v王 ・|二 | ・ ・v歩v銀 ・v歩v角 ・ ・|三 |v歩v飛 ・v歩v歩 ・v歩v歩v歩|四 | ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 飛 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|六 | ・ 歩 角 ・ 歩 歩 歩 歩 ・|七 | 香 ・ ・ ・ 金 ・ 銀 王 ・|八 | ・ 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=0 △8四飛まで
第1図以下の指し手
▲4五銀 △2三銀
▲6五歩 △同 歩
▲7四歩 △同 歩
▲3六飛 (第2図)
後手の持駒:歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・v金 ・ ・v王 ・|二 | ・ ・ ・v銀 ・v歩v角v銀 ・|三 |v歩v飛v歩 ・v歩 ・v歩v歩v歩|四 | ・v歩 ・v歩 ・ 銀 ・ ・ ・|五 | 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ 歩|六 | ・ 歩 角 ・ 歩 歩 歩 歩 ・|七 | 香 ・ ・ ・ 金 ・ 銀 王 ・|八 | ・ 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=0 ▲3六飛まで
▲4五銀〜▲3六飛と、玉頭の3四の地点を狙う指し回しです。
第2図以下、△7七角成▲同桂△8九角で銀取りをかけながら3四の地点も間接的に受ける手順が見えますが、▲6五桂!(第3図)が▲6六角の王手飛車を狙った好手。
後手の持駒:歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・v金 ・ ・v王 ・|二 | ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・v銀 ・|三 |v歩v飛v歩 ・v歩 ・v歩v歩v歩|四 | ・v歩 ・ 桂 ・ 銀 ・ ・ ・|五 | 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ 歩|六 | ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 ・|七 | 香 ・ ・ ・ 金 ・ 銀 王 ・|八 | ・v角 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 手数=0 ▲6五桂まで
桂をさばきながら先手を取り返すことができます(▲5三桂成〜▲6二角などの狙いもあります)。
石田流本組みの場合、飛車が横に移動すると7七の桂が浮いてしまい角で取られてしまうため、このような構想は成立しません。角が9七ではなく7七にいて、相手玉をにらむ位置にいるからこそ、威力があり有効な玉頭攻めになっています。
▲7七角型を進化させた宮本流
先手石田流▲7七角型VS後手左美濃における石田流▲7七角型の戦い方をより進化させたのが、▲3九玉型美濃囲いと組み合わせて戦う「宮本流」です。
2014年11月に行われた第73期順位戦C級2組にて、宮本広志五段が永瀬拓矢六段戦で初披露し勝利したことから、一躍注目を集めました。
宮本流について、詳しくは以下の記事を参照ください。

▲7七角型を解説している棋書
石田流▲7七角型を解説している棋書は数多くありますが、個人的に評価が高いものをいくつか紹介します。
石田流破り 左美濃徹底ガイド
全編先手石田流VS後手左美濃を扱った棋書です。石田流▲7七角型だけでなく、石田流本組みの解説も載っています。
八代弥七段がプロの定跡を徹底的に解説した渾身の一冊です。

菅井流やんちゃ振り飛車
2019年の4月から9月まで放送していたNHK将棋講座「菅井流やんちゃ振り飛車」。この講座の7月号と8月号のテーマが、それぞれ「石田流VS急戦」、「石田流VS持久戦」でした。
「石田流VS急戦」では石田流▲7七角型VS棒金が、「石田流VS持久戦」では石田流▲7七角型VS左美濃、石田流▲7七角型VS居飛車穴熊が解説されています。
解説の分量は少なく級位者向けですが、とりわけ棒金に対する石田流▲7七角型を解説している書籍は貴重(他に無いかもしれません)なので、読む価値はあると思います。


わかる!勝てる!!石田流
宮本広志五段自身が宮本流の戦術を解説しているのが、この「わかる!勝てる!!石田流」です。
宮本流だけでなく、石田流VS急戦、石田流VS中飛車左穴熊なども解説しています。
縦横無尽に暴れたい振り飛車党へ
石田流本組みよりも速く組み上げ戦いを起こすことができる、石田流▲7七角型。
軽いフットワークで縦横無尽に暴れ回ってさばきたい振り飛車党にオススメの戦術です。
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