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西田拓也五段の石田流組み換え 対 伊藤匠五段の居飛車持久戦

石田流の基礎知識 宮本流とは

宮本流
目次

対左美濃の玉頭攻め戦術

「宮本流」とは、先手石田流▲7七角型 対 後手左美濃の戦いにおいて、左美濃に対して序盤早々玉頭攻めを狙っていく戦術です(第1図)。

【第1図は35手目▲2五桂まで】
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v銀v王 ・|二
| ・ ・v歩v銀 ・v歩v角 ・ ・|三
|v歩 ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ 桂 ・|五
| ・ ・ 飛 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=35 ▲2五桂まで

▲3六歩+▲3七桂型からではなく、▲1七桂から▲2五桂を狙うのが大きな特徴です。また、▲2八玉型だと反動がきついので▲3九玉型で仕掛けていきます。

▲2五桂のあとは、後手の対応次第では、左銀の進出(5六→4五→3四)や飛車の右辺展開も絡めて更なる玉頭攻めを仕掛けます。

2014年11月に行われた第73期順位戦C級2組で、宮本広志五段が永瀬拓矢六段戦で初披露したことから、宮本流と呼ばれています(結果は見事宮本五段の勝ち)。

宮本流の特徴

宮本流の特徴をまとめると、以下の通りです。

POINT
  • ▲3九玉型
  • 端桂から▲2五桂
  • 右辺への左銀の進出
  • 飛車を横に活用

それぞれ説明していきます。

▲3九玉型

玉は▲2八玉型ではなく▲3九玉型で仕掛けていきます。▲2八玉型だと、玉頭から反撃を受けた時にむしろ弱い形となってしまうからです。

そのため、序盤で玉は4八→3八と囲うのではなく、▲3八銀(第2図)と上がってから4八→3九と囲います。

【第2図は11手目▲3八銀まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・v王 ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・v歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ 王 銀 ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=11 ▲3八銀まで

端桂から▲2五桂

一番の特徴はこれでしょう。▲3六歩+▲3七桂型からではなく、▲1七桂から▲2五桂を狙います。

メリットは▲3六歩の一手を省略できることです。これには以下のような効果があります。

POINT
  • 一手早い仕掛けが可能になる
  • 隙が少ない、低い美濃囲いを保てる
  • 飛車を右辺に展開する余地を残せる

▲1七桂が早すぎると△1五歩から逆に仕掛けられてしまうため、▲2六歩〜▲2五歩(第3図)と先に2筋を突き捨ててから▲1五桂と跳ねます。

【第3図は31手目▲2五歩まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v銀v王 ・|二
|v歩 ・v歩v銀 ・v歩v角 ・ ・|三
| ・ ・ ・v歩v歩 ・v歩v歩v歩|四
| ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 飛 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=31 ▲2五歩まで

早い▲2五歩の突き捨てをとがめる術が後手にないため、成立しています。

右辺への左銀の進出

▲2五桂と跳ねたあとは、▲4五銀から▲3四銀がひとつの狙いです。△4四歩と突いていたとしても▲4五銀が成立するケースもあります(第4図。2015年順位戦、▲西川和宏五段 対 △阿部光瑠五段戦より。結果は西川五段の勝ち)。

【第4図は45手目▲4五銀まで】
後手の持駒:桂 歩三 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v銀v角 ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・|三
| ・v飛v銀 歩 ・v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ 銀 ・v王 ・|五
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=45 ▲4五銀まで

もちろん、居飛車が玉頭銀を警戒してきた場合は6五から活用していくこともあります(第5図。前述の▲宮本五段ー△永瀬六段戦より)。いずれにせよ、左銀を攻めに活用していくのがポイントです。

【第5図は49手目▲6五銀まで】
後手の持駒:角 歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・ ・v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v金v銀v王 ・|二
|v歩 ・v歩 ・ ・ ・v桂 ・ ・|三
| ・ ・ 歩v銀 ・ 歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ 銀v歩 ・ ・v歩 ・|五
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 桂 ・ 歩 ・ 歩 ・ 桂|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 王 ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 歩二 
手数=49 ▲6五銀まで

飛車を横に活用

「端桂から▲2五桂」のところでも説明した通り、▲3六歩を保留しているため飛車を3六や2六に展開することができます。前述の▲西川五段ー△阿部五段戦では▲4六飛が現れました(第6図)。

【第6図は53手目▲4六飛まで】
後手の持駒:桂 歩五 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v銀v角 ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・ ・ ・|三
| ・v飛v銀 歩 ・ 銀v歩 ・v王|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|五
| ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=53 ▲4六飛まで

また、文末の関連記事で紹介した2017年NHK杯、▲宮本五段 対 △三浦弘行九段戦では、▲3六飛が現れています(第7図)。

【第7図は45手目▲1七桂まで】
後手の持駒:歩二 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v金v金v王 ・|二
|v歩 ・v歩v銀 ・v歩v角v銀 ・|三
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ 歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・ 歩|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 ・ 桂|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀 歩 
手数=45 ▲1七桂まで

閉そく感を打ち破った宮本流

宮本新手は、将棋世界2016年6月号の付録「新手年鑑2015」の栄えあるトップバッターを飾っており、藤井猛九段が

2015年度1番の振り飛車の新手

と賞賛しています(宮本流が初めて登場したのは2014年11月でしたが、2015年度に流行しました)。

宮本五段自身、宮本新手について詳しく解説した「わかる!勝てる!!石田流」をリリースしています。

このほか、戸辺誠七段の「石田流を指しこなす本【持久戦と新しい動き】(最強将棋21)」のなかでも解説されており、戸辺誠七段は

行き詰まった感のあった石田流▲7七角型に、大きな風穴を開けた斬新な新手

と述べています。

積極的に狙っていきたい宮本流

宮本流誕生の結果、プロ棋界では居飛車側が早めの△2二玉を避けるようになりました。それほど影響力のある新手・新構想でした。

しかしアマチュア棋界ではそんな定跡はつゆ知らず、△2二玉と上がってくれることもあるでしょう。

石田流対左美濃は、居飛車にしっかり駒組みされると意外と左辺から仕掛けづらく、局面が硬直して打開するのが難しくなりがちです。

宮本流を覚えて、チャンスがあれば積極的に狙っていくことができれば、躍動感のある楽しい将棋が指せるのではないでしょうか。

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