ノーマル三間飛車▲5七銀型VS居飛車穴熊を徹底解説
「真部流の極北 モクモク流三間飛車対穴熊編」のひとくちレビューをお送りします。
すべて三間飛車側を先手番として、後手居飛車穴熊に対しノーマル三間飛車▲5七銀型で対抗する戦術を解説しています。次の一手問題形式です。
著者のモックンさんは、県代表経験ありのアマ強豪将棋系Youtuberです。
真部流だけじゃない、▲5七銀型三間飛車の総合戦術書
「真部流」の厳密な定義は定かではありませんが、ノーマル三間飛車+▲4六銀型美濃囲いの布陣が定義として最もしっくりくるでしょう。
戦法 真部流
将棋の陣形でもっとも美しいものは三間飛車+4六銀型の美濃囲いである。居飛車穴熊に堂々中央を制圧する。勝った時の喜びは格別なものであろう。

しかし、居飛車穴熊側の戦術によっては▲4六銀型に組みたくても組む余裕はなく、▲5七銀型で戦うことになります。
それは本書でも例外ではなく、居飛穴側の全戦術に対して▲4六銀型で戦う戦法を解説しているわけではありません。
ですので全編真部流というわけではなく、中田功八段の「コーヤン流」の戦術や、「鈴木大介の将棋 三間飛車編」(鈴木大介九段 著)で取り上げられている戦術の解説も含んでいますが、「真部流」はとてもキャッチーなワードなのでタイトルに採用されたのかもしれません。


いずれにせよ、後述の通り居飛車穴熊の様々なバリエーションに対する戦術が幅広く網羅されていることは非常に価値が高いと感じます。
本書の目次
本書の目次は以下の通り。
序 章 駒組について
第1章 △4四銀型
第2章 △4四歩型
第3章 △6四銀型
第4章 △6四銀△4二角型
第5章 △6二銀△4二角型
第6章 その他の対策
第6章「その他の対策」では、△4二飛型、△5一銀型、△6三銀型、および第2章の補足変化が解説されています。
この他に2つのコラムがあります。
価値ある対△6二銀△4二角型の解説
第1章「△4四銀型」(参考1図)~第4章「△4四歩型」(参考2図)までは、過去に解説を見たことがあるテーマ図だったと思いますが、本書で解説されている手順に初見のものは多々あり、参考になりました。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂v玉|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v銀v香|二 |v歩 ・v歩v歩 ・v歩v角v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・v歩v銀v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六 | 歩 歩 角 ・ 銀 ・ ・ 歩 ・|七 | ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 玉 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=28 △4四銀まで
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・v金v桂v玉|一 | ・v飛 ・ ・ ・v角 ・v銀v香|二 |v歩 ・v歩v歩v銀v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六 | 歩 歩 角 ・ 銀 ・ 桂 歩 ・|七 | ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 玉 ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=30 △4二角まで
それらにも価値はありましたが、もっとも価値が高いといえるのは、第5章「△6二銀△4二角型」(参考3図)の解説でしょう。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂v玉|一 | ・v飛 ・v銀 ・v角 ・v銀v香|二 |v歩 ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|六 | 歩 歩 角 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|七 | ・ ・ 飛 銀 金 ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 玉 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=26 △4二角まで
早めに△4二角と引いて△8六歩の筋を見せてけん制し、振り飛車の駒組み次第で仕掛けていくか金を玉方に寄せて穴熊を強化するかを都度選択する戦術で、おそらく2021年時点で最有力のコーヤン流対策と見られている「天敵」です。
プロ棋戦でも中田功八段相手に多くのプロ棋士がこぞってこの戦術を採用しています。


本書では、この居飛穴戦術への対策を解説しています。この内容は私にとっては完全に初見で、とても勉強になりました。
「鈴木大介の将棋 三間飛車編」を絶賛
著者のモックンさんは、二つ目のコラムの中で「この本との出会いが私の運命を変えました。」というほど「鈴木大介の将棋 三間飛車編」を絶賛しています。
私もこの棋書を、他の三間飛車本で扱われていないオリジナリティあふれる戦術を解説している名著と感じており、そのことはレビューの中で紹介した次第です。

「真部流の極北 モクモク流三間飛車対穴熊編」を読むにあたっては、この「鈴木大介の将棋 三間飛車編」と「コーヤン流三間飛車の極意」、および「三間飛車道場〈第1巻〉居飛穴VS5三銀」も合わせて読むと、理解が深まるでしょう。

▲5七銀型三間飛車を指したい振り飛車党必見
真部流の解説、および居飛車穴熊△6二銀△4二角型対策の貴重な解説をはじめ、様々な居飛車穴熊戦術への対抗策を網羅した「真部流の極北 モクモク流三間飛車対穴熊編」。
▲5七銀型三間飛車を指したい振り飛車党は必見です。
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