藤井聡太四段 対 コーヤン流、ふたたび
第31期竜王戦5組ランキング戦、中田功七段 対 藤井聡太四段戦は、後手・藤井四段の勝利。
棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
2度目の対戦となった中田功七段 対 藤井四段戦。
「コーヤン流 VS 藤井聡太四段の居飛車穴熊」で紹介した通り、前回の対戦では先手・藤井四段の居飛車穴熊 対 後手・中田七段のコーヤン流三間飛車でしたが、今回も先後を変えてコーヤン流 対 居飛穴となりました(第1図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・v金 ・ ・v桂v王|一 | ・v飛 ・v銀 ・v角v金v銀v香|二 |v歩 ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・v歩 ・v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩|五 | ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・ ・|六 | 歩 歩 角 ・ 銀 ・ 桂 歩 ・|七 | ・ ・ 飛 ・ 金 ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=32 △7四歩まで
この居飛車穴熊△6二銀・△4二角型は、コーヤン流にとって頭の痛い課題局面のひとつです。

新手△5五歩
実戦は、第1図から▲6五歩△7三桂▲6八飛△5五歩!?(第2図)と進行。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・ ・v金 ・ ・v桂v王|一 | ・v飛 ・v銀 ・v角v金v銀v香|二 |v歩 ・v桂v歩 ・v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・v歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ 歩v歩 ・ ・ ・ 歩|五 | ・ ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六 | 歩 歩 角 ・ 銀 ・ 桂 歩 ・|七 | ・ ・ ・ 飛 金 ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=36 △5五歩まで
△5五歩は藤井四段の新手です。前例は、多い順に△8六歩、△5三銀、△4一金でした。短い考慮時間で着手されたことから、おそらく事前に研究していた一手なのでしょう。
この手は、将棋用語で言うところの「不利感」があり、指しにくい一手と言えます。理由は例えば以下の通りです。
- 居飛車の角は4二にいて5五には利いていない一方、振り飛車の角は5五に利いており、取り返せない純粋なタダ捨て
- ▲5五同歩と取らせれば振り飛車の角筋をいったんとめられるものの、▲5四歩の一手で解消され、かつ5三の地点を狙われる
- 穴熊の急所・弱点である端攻めに必要な歩をやすやすと献上する
この不利感に屈して読みをストップしてしまうことなく、△5五歩に可能性を見出し、とことん事前研究していたのでしょう。
5筋突き捨ての手筋
なおこのような5筋の突き捨ては、部分的には居飛車▲5七銀左急戦 対 三間飛車で最も有名な定跡形でも現れる必修手筋です(第3図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・v王v銀 ・v金v銀 ・v飛 ・|二 | ・v歩v歩 ・ ・ ・v角v歩v歩|三 |v歩 ・ ・v歩v歩v歩v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ 桂 ・ 歩|七 | ・ 角 王 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=0 ▲5五歩まで
第3図から△5五同歩▲4五歩と進んだとき、△4五同歩と取ってしまうと▲同桂△4四角▲5四歩(第4図)となって居飛車良しとなります。
後手の持駒:歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・v王v銀 ・v金v銀 ・v飛 ・|二 | ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩|三 |v歩 ・ ・v歩 歩v角v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・v歩 桂 ・ 歩 ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|七 | ・ 角 王 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=0 ▲5四歩まで
このように相手の歩の裏から歩を打つのが手筋です。したがって▲5五歩△同歩▲4五歩には△5三銀と受けるのが定跡で、この場合互角の展開が続きます。
以下の定跡手順や、そもそも▲5五歩の前に▲4五歩を先に突いたらだめなのか、などについては、「これだけで勝てる 三間飛車のコツ」や「コーヤン流三間飛車の極意」を参照ください。

課題局面が増えたコーヤン流
実戦は藤井四段の新手・新構想が功を奏し、80手で快勝。
三間飛車党にとっては残念な結果であり、コーヤン流党にとっては課題局面が増えてしまいしたが、注目される藤井四段の対局で三間飛車が披露されたのは良い出来事だったといえるでしょう。
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