三間飛車関連の指定局面
水匠のファイナル優勝で幕を閉じた、第2回電竜戦TSEC。

電竜戦TSECは、数多くの指定局面から対局開始する形式の大会です。第2回電竜戦TSECでは、30を超える指定局面が採用されました。
将棋の序盤戦術は多種多様。三間飛車関連は、そのうちの4局面でした。
相三間飛車
予選2回戦とファイナル・B級第1部8回戦は、相三間飛車(第1図)でした。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=6 △3二飛まで
先手立石式石田流(立石流四間飛車)
予選7回戦&ファイナル決定リーグ3回戦&ファイナル・B級第3部9回戦は、先手立石式石田流(立石流四間飛車)でした(第2図)。
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・v金 ・ ・v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・v銀v玉 ・ ・|二 |v歩 ・v歩v歩v銀 ・v桂v歩v歩|三 | ・v飛 ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 歩 歩 ・v歩 ・ ・ ・|五 | ・ ・ 飛 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 桂 ・ ・ 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 銀 金 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八 | 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 手数=29 ▲5六歩まで
先手三間飛車VS後手向かい飛車
ファイナル・B級第1部9回戦は、先手三間飛車VS後手向かい飛車でした(第3図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v銀 ・v角 ・v歩|三 | ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 銀 金 金 玉 銀 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=18 △2二飛まで
先手角道クローズ居飛車VS後手ノーマル三間飛車
ファイナル・B級第3部1回戦は、先手角道クローズ居飛車VS後手ノーマル三間飛車でした(第4図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金 ・v金v銀v桂v香|一 | ・ ・ ・v玉 ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 ・ ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=6 △6二玉まで
相三間飛車の戦い方
本記事ではこれら指定局面戦のうち、最も現れやすくポピュラーな相三間飛車の指定局面戦(再掲載第1図)について、詳しく紹介しておきます。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=6 △3二飛まで

▲3八金型VS△7二金型
第1図以下、上位チーム同士の対局でよく現れたのが、先手が▲5八金や▲4八玉ではなく▲3八金と上がり、後手も△7二金と追随する序盤戦術でした(第5図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀 ・v玉v金v銀v桂v香|一 | ・ ・v金 ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 ・ ・ ・ 金 ・ ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 ・ 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=8 △7二金まで
例えばファイナル第1部8回戦の水匠 VS 名人コブラ、B級リーグ8回戦の上位対決、dlshogi VS 白ビール、タヌキの為に鐘は鳴る VS koron、GCT VS elmoなどです。いずれも表/裏(先後入れ替え)両方で第5図となっています。


NNUE勢・ディープラーニング勢のいずれも採用
NNUE勢だけでなくdlshogiやGCTといったディープラーニング(DL)勢も▲3八金と△7二金を採用していることから、学習方法によらないようです。
序盤の序盤であり、読み(探索)ではなく大局観や形(評価関数)的にこのほうが優秀と評価しているのでしょう。
人間的には、早々に右辺が壁形になるのと、壁系を解消して▲4八銀~▲4六歩~▲4七銀としてもあまり玉が堅くならないことから、抵抗があって今も昔もあまり採用されていないと推測します。
将棋AIが将棋の神様の境地に到達しているわけではないですが、人類をはるかに超えたソフトによる相三間飛車における大局観は、参考にすべきところがあるでしょう。
実戦例
第5図以下の戦い方は多種多様です。少し進んだ局面をいくつか紹介しておきます。
水匠 VS 名人コブラ
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀 ・v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・v金 ・ ・v銀v飛 ・ ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩v角 ・ ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩v歩 ・|五 | ・ 歩 ・ ・ ・ 歩 ・ ・ ・|六 | 歩 ・ ・ 歩 歩 銀 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 銀 ・ ・ 金 ・ ・|八 | 香 桂 ・ 金 玉 ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=18 △3三角まで
第6図は2二の角を3三に上がった局面。以下、▲3三同角成△同銀▲2三角△8七角と馬を作りあう展開となり、結果は先手・水匠の勝利。
先後を入れ替えた対局では名人コブラが勝利しました。
白ビール VS dlshogi
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v玉 ・v金 ・v桂v香|一 | ・ ・v金v銀 ・v銀v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩 ・v歩 ・ ・v歩|三 | ・ ・ 歩 ・v歩 ・ ・v歩 ・|四 | ・ 歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 ・ ・ 銀 金 ・ ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ ・ 玉 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=19 ▲7四歩まで
第7図以下、△8八角成▲同飛?!△2二飛▲8四歩△同歩▲7三歩成△同銀▲7四歩と進行。
7筋から突っかけているのに△8八角成に▲同飛というのは意表を突かれます。△7四歩で一歩損に終わりそうですが、▲2三角から先手だけ馬を作って先手有利です。
結果は後手・dlshogiの勝利。dlshogiは先後を入れ替えた対局でも勝利しました。
elmo VS GCT
後手の持駒:角 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・v玉v金 ・v桂v香|一 | ・ ・v金v銀 ・ ・v飛v銀 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ 銀v歩 ・ ・|六 | 歩 ・ ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 歩|七 | ・ ・ 飛 ・ ・ ・ 金 ・ ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 手数=19 ▲4六銀まで
第8図以下、△8七角▲8八飛△6五角成▲8七角?!△7五馬▲4三馬とこちらも馬を作りあう展開に。完全に力戦です。
結果は後手・GCTの勝利。GCTは先後を入れ替えた対局でも勝利しました。
相三間飛車にも強くなった?DL勢
上記の通り、白ビール VS dlshogi、elmo VS GCTの上位対決にて、結果的にDL側(dlshogi、GCT)が4戦全勝となりました。
第1回電竜戦TSECでの相三間飛車指定局面戦の結果から、DL勢は相三間飛車が苦手?と当時考察していました。
電竜戦TSEC、相三間飛車は個人的に興味が強いのでさらに紹介します。▲GCT対△nozomi戦。
GCTは向かい飛車にせず、▲4六歩から盛り上がっていきました。
第4図以下▲5八金△7六歩▲7五歩△4七角成!?と進行。
結果は後手勝ち。 pic.twitter.com/00VeN4IjgR— Fireworks@三間飛車のひとくちメモ (@thirdfilerook) January 16, 2021
再び相三間飛車の指定局面戦、▲dlshogi対△名人コブラ戦。
GCTと同じくdlshogiも向かい飛車には振り直さず、右辺盛り上がりの構想でした。
玉が左に行ったのは面白いところ。名人コブラは向かい飛車に振り直し。
結果は後手の勝利でした。
現状のディープラーニング勢は相三間飛車が苦手? pic.twitter.com/Af22zrxkQ3— Fireworks@三間飛車のひとくちメモ (@thirdfilerook) January 17, 2021
サンプル少ない中でのソフトの相三間飛車の勝手な考察(Numberでの某教授の考察よりはましだと思います)・・・
現在のDLソフト:三間のままを好む。右辺盛り上がりを好む。
NNUEソフト:向かい飛車振り直しを好む。低い陣形を好む。
結果:後者の構想の方が勝ちやすい。— Fireworks@三間飛車のひとくちメモ (@thirdfilerook) January 17, 2021
しかし、DL勢はこの弱点(?)をすでに克服しているのかもしれません(単純な棋力差という説ももちろんあります)。
関連記事



コメント