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電竜戦TSEC
2020年秋に開催された新たなコンピュータ将棋大会、第1回世界将棋AI 電竜戦は、ディープラーニング勢のひとつであるGCTの優勝で幕を閉じました。
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2020年11月22日、第1回世界将棋AI 電流戦の2日目が行われ、「GCT」が6勝1敗2千日手の成績で優勝しました。おめでとうございます。一方で、予選全勝で優勝候補筆頭だった「みずうら王 with お多福ラボ」は6勝3敗でまさかの4位に終わりました。
そしてこの冬、今度は局面指定のコンピュータ将棋大会である「電竜戦TSEC」が開催されています。
「TSEC」は「Top Shogi Engine Championship」の略で、チェスの「TCEC(Top Chess Engine Championship)」を参考にしているそうです。
将棋界では今までに無かった試みです。
コンピュータ将棋ソフト同士が普通に対局すると、相居飛車の戦型になることが大多数ですが、初期局面を変えることでいつもと違う戦型でのソフト同士の攻防を鑑賞することができます 。
公平を期すため、先後を入れ替えた2局1組が1回戦分となります。
BURNING BRIDGESとどうたぬきが決勝進出
予選は2020年12月26日に開催され、「BURNING BRIDGES」が第1位、「どうたぬき 極」が第2位となりました。
上位2チームによるファイナル、およびそれ以外のチームによるB級ウルトラリーグは12月30日、31日に行われます。
予選で使用された指定局面
予選では15回戦(30番勝負)まで行われ、15の指定局面が用いられました。
局面の選出には、コンピュータ将棋の造詣が深く「教授」の呼び名でおなじみの勝又清和七段と、コンピュータ将棋をいち早く取り入れスムーズな居飛車党転向を果たした遠山雄亮六段が協力されているようです。
予選の勝敗表とすべての棋譜は、以下のページから参照することができます。
振り飛車党にとって興味深い局面を紹介しておきます。
4回戦 ノーマル三間VS居飛車穴熊
先手ノーマル三間飛車VS後手居飛車穴熊△4四銀型が、4回戦の指定局面でした(第1図)。
【第1図は26手目△1一玉まで】 後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金v銀v桂v玉|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|二
|v歩 ・v歩v歩 ・v歩v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v銀v歩 ・ ・|四
| ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ 歩 銀 ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 角 ・ 歩 歩 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・ 銀 玉 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=26 △1一玉まで
この局面は2020年現在三間飛車側も十分戦えるとされている局面で、そのためプロ棋戦では△4四銀型ではなく△4四歩型で三間側の構えに応じて美濃囲いと居飛車穴熊を両天秤にかける戦術が流行しています。
互角とされている局面にふさわしく、結果はほぼ互角(わずかに居飛車勝ちが多いか)で、強いソフトが居飛車・振り飛車どちらを持っても勝つ結果が多くみられます。
10回戦 振り飛車ミレニアム
先手居飛車穴熊VS後手四間飛車ミレニアムが、10回戦の指定局面でした(第2図)。
【第2図は38手目△6二金まで】 後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v玉v金 ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v桂 ・v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩v歩v銀 ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 角 金 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| 香 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 玉 桂 金 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=38 △6二金まで
2020年3月に「将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法」 (村田顕弘六段 著)が発売され、俄然注目を集めるようになった振り飛車ミレニアム。
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「将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法」2020年3月発売
2020年3月末に、振り飛車でミレニアム囲いに組んで戦う戦術書「将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法」が発売されます。「ミレニアム囲い」(「トーチカ囲い」とも呼ばれています)は、従来居飛車VS振り飛車の対抗形で居飛車が採用する囲いです。このミレニアムを、振り飛車で採用する戦術を解説するのが本書です。
一発勝負だから何が起こるかわからないとはいえ、興味深い結果となったのは、ディープラーニング勢対決となったGCT対dlshogi戦で、先後を入れ替えたいずれの対局でも振り飛車側が勝利したところです。
他は基本的に居飛車側の勝率が高い結果となりました。
11回戦 先手四間飛車藤井システム
先手四間飛車藤井システムVS後手居飛車穴熊(に組む直前の形)が、11回戦の指定局面でした(第3図)。
【第3図は28手目△3二金まで】 後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金v玉 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v銀v金v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 ・ ・|六
| 歩 歩 角 銀 歩 ・ 桂 歩 ・|七
| ・ ・ ・ 飛 金 ・ 銀 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=28 △3二金まで
先手藤井システムでおなじみのテーマ図。
ちなみに藤井システムは、現在「将棋世界」 で連載されている勝又七段の短期集中講座「居飛車VS振り飛車 対抗系の軌跡」にて解説の真っ最中です。
こちらも居飛車の勝率が高い結果となっています。
14回戦 先手石田流
先手石田流が、11回戦の指定局面でした。先手石田流の中でも、3手目▲7五歩に対し居飛車が4手目△8四歩~6手目△8五歩と一切妥協しなかった形です(第4図)。
【第4図は6手目△8五歩まで】 後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=6 △8五歩まで
新・石田流(鈴木流急戦)や久保流急戦などで石田流側の研究にハマることを恐れてか、最近ではなかなか実戦に現れることのない本テーマ図。
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「新・石田流」とは、鈴木大介八段が考案した7手目▲7四歩からの一連の新構想に付けられた呼び名です。「鈴木新手」や「鈴木流急戦」とも呼ばれます。第32回(2005年)升田幸三賞に輝きました。
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久保流急戦とは、2009年に行われた第34期棋王戦五番勝負第2局、▲久保利明八段 対 △佐藤康光棋王(段位は当時)戦で、久保八段が披露した新手▲7五飛、およびその後の一連の構想です。この新手で、久保八段は第36回升田幸三賞を受賞しました。
ほぼ互角の局面といえるようで、基本的には強いソフトのほうが居飛車・振り飛車いずれを持っても勝っており、勝敗が割れたケースでもほぼ互角の結果となっています。
興味深いのは、上位10位に入ったソフトはすべて、先手番を持ったときに7手目▲7四歩(第5図)と突いている点です。
【第5図は7手目▲7四歩まで】 後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=7 ▲7四歩まで
▲4八玉と上がって升田式石田流を目指すより、新・石田流のほうが勝るのでしょうか?
ファイナルは54局面?
12月30日、31日のファイナルおよびB級ウルトラリーグでは、なんと54回戦(108番勝負)まで行われるそうです。
54もの指定局面が用意されているということかもしれません。
予選では相振り飛車の指定局面が全くなかったので、相三間飛車、三間飛車VS向かい飛車など、相振り飛車の主要なテーマ図が入っていることを期待しています。
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