令和の三間飛車の実戦譜を60局収録
「三間飛車勝局集 対居飛車穴熊編」のひとくちレビューをお送りします。
本書は「美濃・銀冠勝局集 四間飛車VS居飛車穴熊」に続く「勝局集」シリーズの第2弾です。「対居飛車穴熊編」とあることから、「対左美濃編」のような続編が期待されます。
先月(2022年6月)発売されたばかりで、久保利明九段監修のもと、令和に入ってから指された三間飛車VS居飛車穴熊のプロの実戦譜が60局収録されています。
令和に入ってからの勝局に絞れたことに、三間飛車の採用数の多さだけでなく「勝ち」という結果が伴っていることを感じさせます。三間飛車党にとって、読んでいて気分が良いのは間違いないでしょう。
また、三間飛車の話題に限った24個ものエッセーが掲載されています(エッセーの中では三間飛車の敗局も取り上げられています)。
本書の目次
本書の目次は以下の通りです(各局の棋戦名、対局日、対局者も目次に載っていますが、長くなるので割愛します)。
第1章 先手石田流
第2章 後手石田流
第3章 ▲4五銀・△6五銀
第4章 コーヤン流
第5章 その他
本書は、全体を通して角道を止めるノーマル三間飛車の勝局集です。つまり第1章の先手石田流は、3手目▲7五歩からの石田流ではなくノーマル三間飛車からの石田流組み換えのことを指しています。
第1章から第5章までの局数はそれぞれ、19局、24局、4局、6局、7局。石田流組み換えの局数が圧倒的です。
特徴的なのは第4章の「コーヤン流」で、6局すべてが中田功八段の勝局であり、中田八段の独壇場となっています。
第3章の▲4五銀・△6五銀は、3四の歩をかすめ取りに行く、いわゆる「玉頭銀」の戦術です。
幅広い三間の使い手とミニプロフィールも
本書には、山本博志四段や南芳一九段、西山朋佳女流三冠(段位は対局当時)ら、若手からベテラン、そして女流まで、様々な三間飛車の使い手の勝局が掲載されています。
なお、居飛車側の棋士含め、1人1回ミニプロフィール紹介が棋譜解説の最初に載っているのがグッドポイントです。
エッセーと特選譜も充実
自玉の囲いが美濃囲いや銀冠の棋譜が基本的に選出されていますが、24個のエッセーおよび「エッセーの特選譜」の中では、三間飛車穴熊や三間飛車ミレニアムについての解説・特選譜や、果ては大山康晴十五世名人の特選譜まで載っており、とても充実しています。
これだけ多いと、バラバラに挿入するエッセーというよりひとつの章としてまとめたほうが読みやすいのではないか、と感じるところもあります。
勝ち将棋を観てモチベーションを上げよう
令和に入ってからの三間飛車の勝局が60局収録された、「三間飛車勝局集 対居飛車穴熊編」。エッセーならびにエッセーの特選譜も載っています。
勝ち将棋を並べることで、勝ち方を学べるとともに、三間飛車採用のモチベーションも上がるのではないでしょうか。
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