「将棋戦型別名局集4 三間飛車名局集」ひとくちレビュー

本 棋書・定跡書

将棋ペンクラブ大賞受賞作

「将棋戦型別名局集4 三間飛車名局集」のひとくちレビューをお送りします。

石川 陽生 (著) 発売日: 2016/5/25
「将棋戦型別名局集」シリーズは、これまで順に
と発売されてきましたが、このうち三間飛車名局集は四間飛車名局集とともに、その年の優れた将棋観戦記、将棋関係の著作等に授与する賞「将棋ペンクラブ大賞」の受賞作でもあり、とりわけ評価が高いと言えます。

四間飛車名局集は第28回(2016年)の技術部門で大賞を、三間飛車名局集は第29回(2017年)の技術部門で優秀賞を受賞しました。

ちなみに第29回の技術部門大賞は、あの「禁断のオッサン流振り飛車破り」(神谷広志八段 著)でした。

著者は石川陽生七段。「振り飛車党宣言〈2〉新感覚の三間飛車」の著者の一人としても知られています(共著者は「コーヤン流」でおなじみの中田功八段と安西勝一七段)。

時代を彩る三間飛車の名局100局を解説

この三間飛車名局集では、昭和10年から平成24年までの三間飛車の名局100局を、それぞれ4ページずつ解説しています。

文字サイズが小さく、4ページの中にその一局にまつわるエピソードと棋譜解説が凝縮されています。もちろん要所要所の局面図入りです。

また、巻頭特集「三間飛車をめぐる棋士たち」では、大野源一九段、大山康晴十五世名人、升田幸三実力制第四代名人から、中田功七段(当時)、久保利明九段、戸辺誠六段(当時)まで、三間飛車を得意戦法としてきた棋士達の80年間の歴史を解説しています。

大野源一九段は大野流△5三銀型三間飛車として今でもよく知られており、巻頭の久保九段による「推薦のことば」には「私の憧れである大野源一九段の絶品のさばき」とあります。

2020年現在の状況を知っている私としては、菅井竜也八段の棋譜が1局しか入らなかったのが残念ですが、本書が発売されたタイミング(2016年)からそれは止むを得ないかもしれません。

巻末に戦型別索引、棋士別索引も

本書では三間飛車のこれまでの歴史を物語っていくことを重視しているため、100局の名局が古く指されたものから順に並んでいます。

ちなみに2019年に発売された「三間飛車戦記」(小倉久史七段と山本博志四段の共著)は戦型毎に章が分けられています。

本

「三間飛車戦記 2008~2019」2019年8月発売

2019年7月19日

では三間飛車名局集だと好みの棋譜を見つけるのが大変かというと、そんなことはありません。

巻末に戦型別索引、棋士別索引が載っているので、並べたい戦型の棋譜や、好みの棋士の棋譜をすぐに見つけることができます。

棋譜並べのステップアップに

今月(2020年2月)、トッププロの方々の指し手を1手ずつ解説する棋書「1手ずつ解説!将棋の筋が良くなる棋譜並べ上達法」(佐藤慎一五段 著)が発売され、売上1位を達成するなど反響を呼んでいるそうです。

そこに需要があったのかと驚きましたが、たしかに将棋入門者や「観る将」の方々にとっては▲2五歩に対する△3三角(参考図)ですら理解不能でしょうから、なるほどという感じです(ただし以下▲2四歩△同歩▲同飛△同角が思い浮かぶかどうか?と言い出したら切りがないですね)。

【参考図は4手目△3三角まで】
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v王v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 王 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=4 △3三角まで

観る将の方々でも、お気に入りの棋士の応援から将棋の世界に入った後、対局を観ていくうちに気に入った囲いや戦法が生まれてくることでしょう。

一手ずつの棋譜並べから始め、さらにステップアップしたいと感じたら、各戦法の歴史や歴代の達人を学ぶことができるこの将棋戦型別名局集シリーズは難解ながらもオススメかもしれません。

石川七段のまえがきでも、まさに棋譜並べついて言及されています。

上達法の一つに棋譜並べがある。同じ戦型を集中的に並べることは、戦法の練達に有効な方法だ。本書に採録した将棋には、三間飛車を指す上での基本的な定跡と実戦でのプロの呼吸が入っている。

(中略)

棋譜並べは上達法だけでなく、将棋の楽しみ方の一つのジャンルでもある。三間飛車を指す棋士は、大野源一九段を代表に個性的な将棋を指す。そうした古今の名棋士たちの名棋譜の紹介も本書ではできたと思う。長く続くプロ棋界の魅力を感じとってもらえれば、著者冥利に尽きる。

リアル将棋盤で棋譜並べを

私自身は、本書や将棋年鑑を買い揃えているものの、棋譜と局面図を漫然と見ているだけでリアル将棋盤で並べることは近年ほぼ全くなく(興味があるのは年間のトレンド戦法の記事をはじめとする読み物系のみ)、ただの棋譜集コレクターのようになっています。この記事を書きながら反省するしかありませんでした。

これを機に、三間飛車名局集100局の棋譜並べをしっかりやろうかと思案中です。