王座戦の棋譜利用ガイドラインに準拠
2020年9月現在行われている、第68期王座戦五番勝負、永瀬拓矢王座 対 久保利明九段戦(永瀬王座はこのタイトル戦のさなかに叡王を失冠し二冠から一冠に後退しました)。
この五番勝負開幕に先だって、日本将棋連盟から「王座戦における棋譜利用ガイドライン」が公開されました。
本ブログでは、王座戦における棋譜利用について今後このガイドラインに沿って記事を書いていきます。なお、過去の記事もこのガイドラインに沿うようすべて修正済みです。
久保九段、第3局でノーマル三間飛車を採用
2020年9月24日、五番勝負の第3局が行われました。棋譜と詳しい解説は、王座戦中継サイトで観ることができます。
久保九段は第1局で四間飛車ミレニアム、第2局でゴキゲン中飛車を採用。
そしてこの第3局で、ついに三間飛車を採用しました。角道を早々に止める、ノーマル三間飛車です。
毎局振る筋が違うのは、相手に的を絞られないようにする戦略の意味もあるでしょう。
積極的な振り飛車の駒組み
最近の居飛車VS振り飛車の対抗系は、居飛車の囲い(居飛車穴熊か、左美濃か、ミレニアムか、船囲い系か)だけでなく、振り飛車の玉の囲い方にも注目が集まっています。
はたして、本局でも久保九段が序盤から意欲的な駒組みを見せました(第1図)。
最近流行りの△4三銀型三間飛車ではなく、△5三銀型三間飛車にしているのがポイントのひとつです。四間飛車では飛車が邪魔をして左銀をスムーズに5三に上がることはできません。
そして目下最も注目されている早めの右桂跳ねを△5三銀型と組み合わせているのが、久保九段の一番の工夫と言えるでしょう。
進んで第2図。
出ました。三間飛車ミレニアムです(飛車は三間から四間に振り直されています)。
△5三銀型三間飛車ミレニアム
2019年ごろから登場した振り飛車の新たな囲い、「振り飛車ミレニアム」(略して「振りミレ」とも呼ばれています)は、四間飛車と組み合わせるのが一般的です。
今年(2020年)3月に発売された棋書、「将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法」も、全編四間飛車ミレニアムがテーマでした。
久保九段がこの王座戦五番勝負第1局で採用したのも、四間飛車ミレニアムです。
一方で、▲5七銀型(△5三銀型)三間飛車と振り飛車ミレニアムの組み合わせは有力なのではないか、という記事を私はまさに昨日書いたばかりでした。
記事を書いた翌日に、しかも王座戦五番勝負という大舞台で、この△5三銀型三間飛車ミレニアムが登場したことには驚きました。
ただ、▲4七歩型(△6三歩型)ではなく▲4六歩型(△6四歩型)だったことは想定外でした。
今後採用が増えてくる可能性があります。楽しみです。
永瀬王座、勝利
さて本譜に戻って、中盤戦は久保九段のほうが指しやすいのではないかとも言われていました。
しかし、終盤戦の入り口辺りと言える第3図。
この永瀬王座の攻めに対する久保九段の受けに一失があったようで、永瀬王座が逆転。そのまま押し切って勝利となりました。
もっと観たいタイトル戦での対抗系
これで永瀬王座の2勝1敗となった王座戦五番勝負。
永瀬王座が防衛に王手をかけましたが、久保九段にはぜひとも踏ん張って次戦に勝利し、最終局に持ち込んでほしいところです。
「一局でも多くタイトル戦での振り飛車が見たい。さらには、最終局にも勝って久保九段にタイトル奪取してほしい。」これが私の本音です。
大注目の第4局は、10月6日に行われます。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 4.91 / 振電改
コメント