目次
振り飛車、冬の時代
コンピュータ将棋に造詣が深く、それを活用した最先端の居飛車研究によりスムーズな居飛車党転向を果たし、好成績を残している遠山雄亮六段。将棋ファンには将棋連盟モバイル編集長としてもおなじみです。
その遠山六段が、最近の振り飛車事情をテーマにした記事をYahoo!ニュースに投稿し、注目を集めています。
遠山六段は、ブログの方にもそれを補完する記事を投稿しています。
まず現状として、振り飛車が冬の時代であることを述べています。
それは、今年度の夏に行われた第59期王位戦で菅井竜也王位が豊島将之棋聖に敗れ失冠し、そしてつい先日行われた第68期王将戦で久保利明王将が渡辺明棋王に敗れ失冠したことからも明らかです。本ブログの下記記事の最後にも同様のことを書きました。
あわせて読みたい
渡辺棋王、久保王将の三間飛車藤井システムを破り二冠に 王将戦
第68期王将戦七番勝負第4局(二日制)、▲久保利明王将 対 △渡辺明棋王戦の2日目。封じ手は、大本命の△6五桂。狙い通り右桂が躍進し、7七と5七に脅威を与えるとともに、後手の角が9五に出られるようになったのが大きく、後手優勢です。
復活のキーワード
その遠山六段が、振り飛車復活のカギ、キーワードとして挙げたのが、以下のふたつです。
ノーマル三間飛車
1つ目のカギは、「三間飛車」。ここでいう三間飛車とは、角道を止めるいわゆる「ノーマル三間飛車」を指しています。
記事では、佐藤和俊六段、西田拓也四段の活躍、そして山本博志四段の登場を紹介しています。
あわせて読みたい
西田拓也四段、石田流で連勝し初優勝 加古川青流戦決勝三番勝負
第7期加古川青流戦決勝三番勝負にて、西田拓也四段が前年優勝の井出隼平四段を2勝1敗で下し、初優勝しました。2勝はいずれも石田流を採用した将棋です。棋譜と解説は、加古川青流戦のWebサイトで観ることができます。
あわせて読みたい
山本博志三段、四段昇段 奨励会三段リーグ
昨年の「三間飛車新時代」(小倉久史七段と山本博志三段の共著)リリースの頃から、本ブログで注目し何度か紹介してきた山本博志三段。この山本三段が、第63回奨励会三段リーグで13勝5敗の成績をあげ、四段に昇段しました。
藤井システム
もうひとつのカギは、「藤井システム」。藤井猛九段が四間飛車藤井システムで再び結果を残していることに加え、三間飛車藤井システム(参考図)の登場を紹介しています。
あわせて読みたい
VS居飛車穴熊の基礎知識 三間飛車藤井システムとは
「三間飛車藤井システム」とは、居玉のまま駒組みを進める、△4三銀型ノーマル三間飛車の総合戦術です。もともとは居飛車穴熊対策として誕生しましたが、居飛車側の戦術の多様化にともない、対急戦、対左美濃などを含んだ総合的なシステムとして体系化されました。
将棋AIによる振り飛車の新たな可能性
遠山六段は、Yahoo!ニュースのほうではさらなるポイントとして将棋AIによる振り飛車研究の進化を挙げています。
振り飛車は相居飛車ほど将棋AIによる研究が進んでいない。なぜなら将棋AIは振り飛車を苦手としているからだ。(中略)相居飛車における矢倉や角換わりでは、将棋AIによる新しい構想によって可能性が広がった。将棋AIがさらに進化することで振り飛車にもそれが起こると筆者は予想している。
これに関連して、つい最近、新たな手法による「振り飛車党」の評価関数、NNUEkaiXFが登場しました。
あわせて読みたい
鰻屋の振り飛車党・NNUEkaiXF登場
コンピュータ将棋ソフトは居飛車を高く評価しており、実際に居飛車党のソフトが世界コンピュータ将棋選手権(WCSC)などのコンピュータ将棋大会の上位を席巻しています。そんなコンピュータ将棋に振り飛車を指させるには、何らかの工夫が必要です。
この評価関数の登場が、遠山六段の言う振り飛車の新しい構想、可能性の広がりに繋がるかもしれません。
振り飛車は終わってない
遠山六段は次の一言でYahoo!ニュースの記事を締めています。
振り飛車の復活を願うファンの期待は大きい。
まさにその通りです。
「振り飛車は終わってない」
自信を持ってこう言える日が来ることを願っています。
関連記事
あわせて読みたい
プロ棋界でノーマル三間飛車が振り飛車の主力戦法に?
将棋世界2017年12月号の久保利明王将と菅井竜也王位の対談にて、久保王将をして「対居飛車穴熊の急所をつかむ感覚が先をいっている」と言わしめた井出隼平四段。その井出隼平四段によると、プロ棋界でノーマル三間飛車(早々に角道をとめる三間飛車)が振り飛車の主力戦法になるつつあるそうです。
コメント