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松尾歩八段のセクシー三間飛車とセクシー四間飛車

棋界ニュース
2021年9月24日
駒
目次

「セクシー」松尾歩八段

低いトーンの美声と端正な風貌から、「セクシー」の異名を持つ松尾歩八段。

ニコニコニュース オリジナル
セクシーな男（松尾歩八段）【叡王戦24棋士 白鳥士郎 特別インタビュー vol.11】 第４期叡王戦本戦トーナメント開幕までの期間、『りゅうおうのおしごと！』作者である白鳥士郎氏による本戦出場棋士へのインタビュー連載記事。第11弾は松尾歩八段。

デビュー当時は振り飛車も指していたものの、今では完全に居飛車党になっています。

最近では、第34期竜王戦2組ランキング戦での藤井聡太二冠（当時）との横歩取りの一戦が大いに話題を集めました。

松尾八段が切られ役ではありましたが、伝説級の「▲４一銀」は、双方が一歩も引かない激しい中盤戦を演じたからこそ生じた「神の一手」であり、敗れた松尾八段の指し回しも総じて見事でした。

セクシー三間飛車

そんな松尾八段が、今年2021年に新設された非公式棋戦「SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦2021」の東京予選Ａブロック、行方尚史九段戦で、意表の三間飛車を採用しました。

日本将棋連盟
SUNTORY 将棋オールスター 東西対抗戦2021　東京予選

松尾八段が指した三間飛車だから「セクシー三間飛車」。そんなシンプルなパワーワードが、ごく一部の将棋ファンの間で駆け巡りました。

残念ながらその一局に敗れてしまった松尾八段。

ちなみにこの東京予選Ａブロックにて、戸辺誠七段が「戸辺攻め」を炸裂させて見事予選突破を果たしました。おめでとうございます。

セクシー四間飛車

そして3日後、2021年09月22日に行われた第93期ヒューリック棋聖戦二次予選にて、松尾八段は若手強豪・近藤誠也七段相手に、今度はノーマル四間飛車を採用しました。

棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。

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将棋連盟ライブ中継アプリ｜日本将棋連盟 日本将棋連盟の「将棋連盟ライブ中継アプリ」のページです。いつでもどこでも対局中継が毎日観れる、満足度90％以上のアプリです。藤井聡太七段をはじめ、プロ棋士も愛用中...

こちらも自然と「セクシー四間飛車」と呼びたくなってしまうのは、何という語彙の貧困さでしょうか（気にしていません）。

出だしは、先手・近藤七段の居飛車を相手に、角道を止めて端歩の交換および△３三角・△４三銀を早めに決める一方、居飛車か振り飛車かの態度を極力保留する形でした。

このような形（参考図。本譜とは異なります）はプロ棋戦で最近特に多く指されている気がします。

【参考図は12手目△４三銀まで】
後手の持駒：なし
  ９ ８ ７ ６ ５ ４ ３ ２ １
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 ・ 玉 ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒：なし
手数＝12 △４三銀まで

最終盤、あまりにぴったりの華麗な寄せを披露して松尾八段の勝利。おめでとうございます。

追記：耀龍セクシー四間飛車

上述の対局から約２週間後の10月7日、松尾八段が今度は耀龍四間飛車を採用しました。

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将棋ウォーズの戦法コレクションに耀龍四間飛車と振り飛車ミレニアムが追加 2021年4月1日に、第48回将棋大賞受賞者が発表され、大橋貴洸六段の「耀龍四間飛車」が升田幸三賞を受賞しました。大橋六段は、2018年4月に放送された第68回NHK杯1回戦、三浦弘行九段戦で、四間飛車金無双の布陣から玉頭を盛り上げて三浦九段の居飛車穴熊に勝利し、注目を集めました。

さながら「セクシー耀龍四間飛車」、いや「耀龍セクシー四間飛車」でしょうか？

松尾八段の振り飛車が今後も続くのか、注目です。

捲土重来を期す松尾八段

松尾八段は今年度ここまで指し分けている（６勝６敗）ものの、順位戦Ｂ級１組では４連敗と精彩を欠いています。

AI定跡の暗記合戦の様相を呈している相居飛車から少し離れ、久しく指していない振り飛車を取り入れることで感覚を取り戻し、不調を脱しようという取り組みかもしれません。

ただ、佐藤天彦九段のように振り飛車をコンスタントに採用するほどには至らない気がします。

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オールラウンダー化を試みる佐藤天彦九段 昨年末あたりから2021年2月現在まで、佐藤天彦九段が振り飛車を多数採用して注目を集めています。注目を集めるきっかけとなったのは、2020年10月に行われた第70期王将戦、▲佐藤天彦九段 対 △藤井聡太二冠戦。先手番となった佐藤九段がゴキゲン中飛車を初めて採用しました。

「鬼のすみか」順位戦Ｂ級１組

昨年度まで、「鬼のすみか」順位戦Ｂ級１組に長い間共に在籍し続けていた松尾八段と山崎隆之八段。2021年1月14日、この両者の順位戦の激闘（相掛かり）は、山崎八段が制しました。

続く2021年2月4日、松尾八段は郷田九段との一局（矢倉）にて、最終盤に自陣の飛車を１七から８七へ大転換する大技を決めて逆転勝ち。同日山崎八段は久保九段に敗れていたものの、これがアシストになり山崎八段がＡ級昇級を決めました（あくまで結果論ですが、この松尾八段の勝利が無ければ山崎八段は昇級できませんでした）。

結果的にＢ級１組の「戦友」をＡ級へ送り届けた格好となった松尾八段。

ここは俺に任せて、お前は先に行け。

そんなセクシーな台詞が当時私の頭をよぎりました。

10年前、Ａ級昇級まであと一歩だった松尾八段。

Number Web - ナンバー
10年前、将棋会館は激しく揺れた　A級をかけた“屋敷伸之vs松尾歩”、盤の前からすぐには動かなかった理由（... 「いってらっしゃい！パパ頑張ってね！」午前8時半過ぎ、自宅を出る屋敷伸之は陽希君の声を背中で聞いた。いつもと変わらない。対局に臨む朝の風景だった。

今期踏ん張り、来期また上を見て戦い、そして山崎八段と同じくＡ級の舞台で一度は戦ってほしいと願います。

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