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西田拓也五段の石田流組み換え 対 伊藤匠五段の居飛車持久戦

三間飛車党・山本博志四段、相掛かりを採用 順位戦

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山本博志四段、初手から居飛車を明示

2019年11月14日に行われた第78期順位戦C級2組、▲山本博志四段 対 △出口若武四段戦にて、「生涯三間飛車」を標榜する山本四段が初手で飛車先の歩を突き、相掛かり戦法を採用しました。

棋譜と詳しい解説は、名人戦棋譜速報で観ることができます。

まず端的に感想を述べておきますと、山本博志四段の選択はプロ棋士として至極真っ当です。これからも山本四段を応援していきたいと思います。

「予告三間飛車」だけでは厳しい世界

振り飛車党の久保利明九段も菅井竜也七段も、常に振り飛車を指しているわけではありません。相手が振り飛車党であれば自身が居飛車にして対抗形を狙うこともあります。

例えばつい最近の11月26日に行われた第61期王位戦予選、▲久保利明九段 対 △佐々木慎六段戦しかりです(同じく振り飛車党の佐々木六段も居飛車を採用したため相居飛車になり、結果は久保九段の勝ち)。菅井七段にいたっては相手が居飛車党であってもたまに居飛車を指しています。

振り飛車を指すにしても、久保九段も菅井九段も三間飛車はもちろん向かい飛車から中飛車まで、採用する戦法を散らして相手に研究の的を絞らせないようにして戦っています。

これは振り飛車党プロ棋士のほぼ全員に当てはまるでしょう。近藤正和六段もゴキゲン中飛車一本ではなく、「コーヤン流三間飛車」で知られる中田功八段も三間飛車一本ではありません。

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VS居飛車穴熊の基礎知識 コーヤン流とは 「コーヤン流」とは、ノーマル三間飛車の伝説の棋書「コーヤン流三間飛車の極意」(中田功七段 著)によってその名が爆発的に普及した、主に対居飛車穴熊の戦術です。「島ノート 振り飛車編」(島朗九段 著)の命名で「中田功XP」とも呼ばれています。

「予告三間飛車」だけで勝っていけるほど、プロ棋界は甘い世界ではないのです。

居飛車党も大きく分けて矢倉(雁木)、角換わり、相掛かり、横歩取りの選択肢があります。

とはいえ戦法を散らしたからといって勝てるかといったらそういうわけでもないので、人間ですから全プロ棋士が戦型選択には悩んでいることでしょう(その点アマチュアは常に好きな戦法ばかり指していれば良かったりするので気楽なものです)。

雁木系でもひねり飛車でもなく・・・

山本四段の居飛車選択ですごかったのは、相手が振り飛車党ではなくオールラウンダーの出口四段だった(つまり対抗系の居飛車側を持つのが山本四段の狙いではなかった)ことと、振り飛車にすると思いきや雁木系に変化するような「陽動居飛車」戦術ではなく、初手から飛車先の歩を突く最も居飛車らしい手を選択したことです。

しかも相掛かりに進んだ後ひねり飛車系の将棋にすることもなく、普通の相掛かりを選びました(下記山本四段のコメントがありますが、それほどひねり飛車チックでもなかったような・・・)。

中盤、山本四段が飛車を捨てて駒損する展開になりましたが、角をうまく活用して食い付き続け、新人王戦準優勝経験もある強敵・出口四段(その時の優勝者は藤井聡太七段)に勝利しました。

本職の三間飛車

この対局の約10日後の2019年11月25日に行われた第68期王座戦一次予選、▲山本博志四段 対 △斎藤明日斗四段戦では、山本四段は初手で三間飛車を明示。こちらの一局は将棋連盟ライブ中継アプリで棋譜と詳しい解説を観ることができます。

後手の斎藤四段が角交換から早々に2筋突破を目指す激しい序盤戦が繰り広げられました。

初手▲7八飛戦法党必修の2局

同様の展開に進んだのが2019年9月に行われた第5期叡王戦四段予選、▲古森悠太四段 △本田奎四段戦。こちらも将棋連盟ライブ中継アプリで中継され、また、叡王戦のWebサイトでも棋譜を観ることができます。

山本ー斎藤戦は途中まで古森ー本田戦の進行を踏襲していましたが、途中で山本四段の新手が現れました。この2局は初手▲7八飛戦法党は必修でしょう。

激しい序盤戦の後いったん局面が落ち着き、非常に指す手が難しい力戦が繰り広げられましたが、最終盤に山本四段の絶妙の寄せが炸裂し、山本四段が勝利しました。

居飛車で肩透かしを食らった後の三間飛車での勝利なので、喜びもひとしおな気がします。このようなメリハリがあったほうが、指すほうも観るほうも本職を末永く楽しめるとしたものです。

2020年2月追記:好局振り返りで再登場

2月2日に、将棋連盟ライブ中継アプリにてこの▲山本四段 対 △斎藤四段戦が「好局振り返り」として再登場しました。

勝った山本四段のインタビューが随所に追記されています。とりわけ仕掛け付近のインタビューは初手▲7八飛党必見、そして最序盤と最終盤のインタビューは山本四段ファン必見でしょう。

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