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元祖・菅井流
相振り飛車での「菅井流三間飛車」とは、向かい飛車+矢倉に対して石田流三間飛車+美濃囲いから速攻を仕掛ける、軽快な戦術です(第1図)。
第1図のように一般的には三間飛車側が後手ですが、逆でも可能です。
菅井竜也七段がプロ棋士になる前の奨励会時代に、奨励会での対局や将棋倶楽部24で連採したことで注目が集まり、プロ棋界でも指されるようになりました。
“24”を知ってからは毎日パソコンにかじりつき、最低でも1日10局、多い日は30局を数えることもありました。
6月号の講座で紹介した「菅井流」はネット将棋から生まれたのです。初めは感覚的だった▲6五歩から▲4五歩という仕掛けが、指し込んでいくことで徐々に戦法と呼べるものになっていきました。
「菅井流」の名の付く戦法や戦術は数多くありますが、菅井七段の奨励会時代に生まれたこの相振り菅井流は「元祖・菅井流」と呼べる戦術でしょう。
にもかかわらず、菅井七段自身のプロ入りしてからの菅井流の公式戦採用数は、2017年時点でなんとゼロ(「菅井ノート 相振り編」内のコラムより)。17歳で若くして四段に昇段した菅井先生が、当時からいかに警戒されていたかがわかります。
なお、居飛車対振り飛車の対抗形における菅井流三間飛車については以下の記事を参照ください。
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B面攻撃が主役
相振り飛車の菅井流三間飛車は、3筋の歩交換に対し▲3七歩打を保留し、金銀を盛り上げて矢倉を組んでくる(第2図)相手に対して用いることができます。
手数をかけて矢倉を組み上げようとする向かい飛車側に対し、菅井流は、少ない手数で△7一玉型美濃囲いを完成させたあと、角や左桂を動かすことなく早速△4五歩と仕掛けていきます(第3図)。
そして▲4五同歩に対し、さらに△6五歩と突きます(再掲載第1図)。
軽すぎるように見える攻めですが、意外に攻めがつながるのが当時の新たな発見でした。攻めがつながる理由は、金銀が密集している相手の右辺を攻めるのではなく薄い左辺を攻める、いわゆる「B面攻撃」が主役だからです。
第1図以下の指し手の一例は以下の通り。
第1図以下の指し手
▲6五同歩 △7七角成
▲同 桂 △3三角
▲7八飛 △5五銀!
▲同 銀 △同 角(第4図)
△5五銀とぶつけるのが急所で、第4図以下は△6七銀や△8七銀から相手の左辺を崩していけます。
向かい飛車側の陣形は、▲3八金の代わりに▲8五歩と突いていたり、▲8六歩の代わりに▲3九玉と引いていたりする場合もあります。が、菅井流の仕掛けが△4五歩▲同歩△6五歩から始まるのは同じです。このわかりやすさが菅井流の長所の1つと言えるでしょう。
避けられる菅井流
2019年現在では向かい飛車側の研究が進み、矢倉への駒組みの手順が万全ならば菅井流を仕掛けられても互角以上に戦えるのではないか、と考えられているようです。
しかし菅井流の他にも、3筋歩交換のあと左銀を4二→3三→4四→3五とスルスルと繰り出していく戦術も現れ(参考1図)、向かい飛車側が▲3七歩打を保留し矢倉に組み上げるのは難しいという風潮にあります。
2019年現在の主流として、女流棋界を見ると、3筋歩交換には▲3七歩と打ってしまって金無双に組む将棋が目立ちます。
結果的に菅井流が現れにくくなっており、残念なところです。
「菅井ノート 相振り編」がバイブル
この相振り菅井流三間飛車を解説している棋書といえば、なんといっても「菅井ノート 相振り編」でしょう。
本書の映えある第1章で、70ページに渡ってこの菅井流が解説されています。第1節は▲3八金・▲8六歩型、第2章は▲3八金保留▲8五歩型、第3章は▲3八金・▲3九玉型、最後の第4節は▲5六銀保留型です。
これだけ読みこなせば、菅井流を十分指しこなせるようになることでしょう。
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チャンスがあれば積極的に狙いたい菅井流
プロ棋界でもアマ棋界でも、相振り飛車戦では矢倉のような厚みのある布陣よりも平美濃囲いや金無双のような低い布陣の人気が高い昨今ですが、相手が矢倉を目指してきたときには、菅井流を積極的に狙ってみたいものです。
菅井七段ファンはもちろん、軽快な攻めが好きな振り飛車党にオススメの戦法です。
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相振り飛車の基礎知識、定跡をまとめました。詳細記事へのリンクも載せています。なお、ノーマル三間飛車については「ノーマル三間飛車の基礎知識、定跡まとめ」を、石田流については「石田流の基礎知識、定跡まとめ」を、奇襲戦法&特殊な三間飛車については「奇襲戦法&特殊な三間飛車の基礎知識、定跡まとめ」を参照ください。
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