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平成に入り再評価された、もうひとつの急戦定跡
「▲4五歩早仕掛け」とは、先手居飛車急戦VS後手ノーマル三間飛車で、▲7九銀型船囲いから右桂を跳ねる前に▲4五歩と仕掛けていく急戦定跡です(第1図)。
定跡書により呼び方は様々ですが、本ブログでは「三間飛車道場〈第3巻〉急戦」での呼び方である「▲4五歩早仕掛け」にあわせます。
なお、昭和の代表的急戦定跡にはもうひとつ「▲5七銀左型急戦」(参考1図。こちらも「三間飛車道場〈第3巻〉急戦」での呼び方)があります。
こちらについては下記記事を参照ください。
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「▲5七銀左型急戦」とは、先手居飛車急戦VS後手ノーマル三間飛車で、居飛車が船囲い▲5七銀左型に組んだあと4筋から仕掛けていく急戦定跡です。定跡書により呼び方は様々ですが、本ブログでは「三間飛車道場〈第3巻〉急戦」での呼び方である「▲5七銀左型急戦」にあわせます。
歴代永世名人も採用
この▲4五歩早仕掛けは、昭和42年に中原誠十六世名人が木村義徳九段相手に用いるなど古くから知られていましたが、▲5七銀左型急戦などのほうが優秀と判断されていたためか、一時的な流行にとどまったようです。
それが昭和後期になって再評価され、平成に入り実戦例が増えました。
谷川浩司十七世名人、森内俊之十八世名人、そして羽生善治十九世名人といった歴代永世名人も採用しています。
2004年には、深浦康市九段がこの早仕掛けを解説した「振り飛車破り超急戦ガイド」をリリースしています。
仕掛け方と受け方
▲4五歩と仕掛けた再掲載第1図。
ここで後手は△4五同歩と取ることができます。
以下▲3三角成には△同銀で2筋を守れており、自陣に角打ちの隙もありません。
また、▲3七桂には△2二飛と先受けすれば、▲5五歩と突いても△同角、また▲4五桂には△8八角成▲同銀△4四歩で攻めになりません。
そこで先手は△4五同歩に対し▲5五歩(第2図)とするのが面白い仕掛け。
第2図で△5五同角だと▲同角△同歩に▲2四歩で2筋を突破できます。
△4三銀と立って厚みを作って受ける手もありますが、最も有力とされているのは単に△5五同歩で、以下▲3七桂△5六歩!▲2四歩△同歩▲3三角成△同銀▲4五桂(第3図)と進むのが定跡です。
手順中、△5六歩がさばきを狙う振り飛車らしい美しい一手です。
第3図以下△4六角から定跡が続きますが、定跡を抜けた局面では三間飛車が十分に戦えるとされています。
許されない手順前後
第3図までの手順中、▲3三角成としてから▲4五桂としているのは重要なところで、単に▲4五桂とすると振り飛車良しとされています。
有名な一局は昭和61年に行われた順位戦C級2組、▲羽生善治四段 対 △小阪昇五段戦で、手順前後をとがめた小阪五段が新鋭・羽生四段に勝利しています。
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VS▲4五歩早仕掛け・手順前後
1986年、▲羽生善治VS△小阪昇戦より(敬称・段位略)。後手三間飛車に対して先手が素早く動く、▲4五歩早仕掛け(第1図)。定跡では、▲4五桂の前に▲3三角成△同銀をいれることになっています。単に桂跳ねだとどうなるか。
モダンな▲4五歩早仕掛け
玉の囲いを最小限の船囲いにとどめ、桂跳ねを後回しにして▲4五歩からスピード感のある早仕掛け。
船囲いの進展に手数をかける▲5七銀左型急戦に比べ、とても現代調の作戦といえます。
三間飛車側が早めに△4三銀型にしたり、居飛車側が▲5六歩も後回しにしたりと、現在の流行とは異なる点があるため全くの同型が現れることはまれでしょうが、類似形は今後もちらほらと現れるのではないでしょうか。
関連棋書
所司 和晴 毎日コミュニケーションズ 2004-10
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