目次
▲伊藤真吾六段 対 △山本博志四段戦
2021年11月18日に行われた第80期順位戦C級2組7回戦、▲伊藤真吾六段 対 △山本博志四段戦。
棋譜と詳しい解説は、名人戦棋譜速報で観ることができます(有料)。
あわせて読みたい
???l????????????E???l?폇?ʐ????????T?C?g
???l?????????F?????E???l?폇?ʐ????????T?C?g?u???l?????????v?͂?????B???l??E???ʐ?̊???????͂??????A?[???̉???A?nj???̗Տꊴ?????`?????鉞???f???ȂǁA?????t?@???K???̃R???e?...
居飛車急戦VSノーマル三間飛車
居飛車急戦VSノーマル三間飛車の戦型となった本局。伊藤六段の意欲的な急戦戦術に対し、三間飛車らしい3筋からの反撃で山本四段が優位に立ちました。
中盤、馬で玉頭を守る伊藤四段に対し、それを上回る飛車角2枚で玉頭攻めを仕掛けます。
その後、細そうに見える攻めをつなぎ切り、終わってみれば山本四段の快勝となりました。山本四段、おめでとうございます。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 6.00 / 騨奎紫(たけし)
山本四段も認める「へなちょこ急戦」
局後にTwitterで本局を振り返った山本四段。そのうちの1つが、以下のツイートでした。
私はこのツイートを見て「へなちょこ急戦」のことを知りました。
へなちょこ急戦の名付け親であり本戦法を喧伝しているのが、アマ強豪で将棋系YoutuberのSugarさん(すぎうらさん)。先日行われた第2回電竜戦に、ソフトを使用しない人間枠で出場していました。
あわせて読みたい
第2回電竜戦 GCT連覇 QhapaqがTAKESHI賞を連続受賞
2021年11月21日から22日にかけて行われた第2回世界将棋AI電竜戦。2日目、最上位のA級リーグにて、GCTが13勝5敗の成績で優勝しました。GCTは第1回に続く連覇です。おめでとうございます。
へなちょこ急戦とは
対四間飛車もありますが、本記事で紹介するのは対三間飛車のへなちょこ急戦です。先後どちらでも採用することができます。
以下、居飛車を先手として説明します。対三間飛車のへなちょこ急戦(代表図)の特徴は以下の通りです。
▲6八金型のいわゆる「左金無双」にしてから仕掛ける解説の動画もありましたが、より新しい動画ではその一手を省略して通常の▲7九銀型船囲いで仕掛けているようで、船囲い型のほうが最新形と考えられます。
もともと▲4五歩早仕掛けには様々な亜種があり、船囲いの形の違い(▲7九銀型、▲6八銀型、▲5七銀左型)、右桂を跳ねてから仕掛けるか否か、など様々な組み合わせがあります(参考1図)。
あわせて読みたい
VS急戦の基礎知識 ▲4五歩早仕掛けとは
「▲4五歩早仕掛け」とは、先手居飛車VS後手三間飛車で、▲7九銀型船囲いから右桂を跳ねる前に▲4五歩と仕掛けていく急戦定跡です。定跡書により呼び方は様々ですが、本ブログでは「三間飛車道場〈第3巻〉急戦」での呼び方である「▲4五歩早仕掛け」にあわせます。
▲5七銀左型から仕掛ければ、「▲5七銀左型急戦」などとも呼ばれます(参考2図)。
あわせて読みたい
VS急戦の基礎知識 ▲5七銀左型急戦とは
「▲5七銀左型急戦」とは、先手居飛車急戦VS後手ノーマル三間飛車で、居飛車が船囲い▲5七銀左型に組んだあと4筋から仕掛けていく急戦定跡です。定跡書により呼び方は様々ですが、本ブログでは「三間飛車道場〈第3巻〉急戦」での呼び方である「▲5七銀左型急戦」にあわせます。
これらとへなちょこ急戦の違いは、先にも述べた通り何といっても▲5六歩の一手を省略した「▲5七歩型」である、ということでしょう。
▲5六歩の必要性
三間飛車に対し居飛車穴熊を目指すとき、一手でも速く穴熊に囲うために5筋の歩突きを省略する戦略は有名です。そしてそれをとがめるべく誕生したのが「トマホーク」でした(参考3図)。
あわせて読みたい
VS居飛車穴熊の基礎知識 トマホークとは
「トマホーク」とは、5筋の歩を突いてない居飛車穴熊を相手に、ノーマル三間飛車▲6七銀型から左銀と端桂の進出を軸に強襲を仕掛ける、超攻撃的戦法です。アマチュア棋界でタップダイスさんがトマホークを解説した電子書籍(「トマホーク解体新書」など)をリリースしたことが主なきっかけとなり、その名が広まりました。
一方、三間飛車に対し急戦で挑むときは、参考1図、参考2図の通り、昭和の定跡ではなぜか▲5六歩を突いておくのがもっぱらです。この理由を私は把握しておらず、正確に突き止めるには過去の文献を漁る必要があります。
5筋の歩を突いておく理由として、思い付くのは例えば以下の通りです。
POINT
- △5五角(打)の反撃を防ぐ。
- △6四角(打)に対し▲5五銀(打)や▲5五歩を用意する。
- 対四間飛車にならう(対四間では△4五歩に▲5七銀を用意するために▲5六歩と突くのは必須。対三間でもその慣習にならってしまっている趣があると考えられます)。
- 5筋に争点を作る。
おそらくプロ的には最後の理由「5筋に争点を作る。」が非常に大きいと私は考えており、▲5六歩△5四歩の形での5筋の突き捨てや、△5三歩型に対する5筋位取りと突き捨てなど、局面を複雑化して力を発揮しやすい展開に持ち込む狙いが思想の根底にあるはずです。
裏を返すと、かつては対振り飛車の居飛車腰掛け銀や右四間飛車は、攻めが単調になりやすいとしてプロ棋界では敬遠されたものでした。
参考動画
仕掛け方、攻め方、手のつなぎ方についてはたとえば以下のSugarさんの動画を参照ください。
個人的に最も感心した手順は、第1図以下△7七角成▲同銀△6五桂▲8八銀△4四角▲4六角△8六飛▲8七歩△8一飛▲5五歩(第2図)で桂を殺しに来るのに対し・・・
以下△6三銀▲6六歩△6四銀▲6五歩△5五銀(第3図)で居飛車良し、という変化です。
桂を取られながらも、6二から5五への猛烈な銀のドリブルで抑え込みが間に合う、というのがすごい。▲6五歩に△5五銀という交わしながらの進撃もアメリカンフットボールのようで美しいです(アメフト知らないけど)。振り飛車は歩切れが祟っています。
名前の由来
へなちょこ急戦の名前の由来は以下の通りです。
元奨励会員の方の初見として、攻め味が少なく腰の入っていない攻めに見えたのでしょう。「へなちょこ」というのは言い得て妙だと思います。
しかし、そんな攻めでも十分に成立することが、将棋AIの力も借りて示されたわけです。単調でも問題なし。むしろ変化や紛れが少なくわかりやすいとも言えます。アマチュア向けの戦法とも言えるでしょう。
かくして、へなちょこ急戦が確立されました。
▲4五歩早仕掛けの新たな雄になるか
将棋AIの力も借りて確立した、▲5七歩+▲3七桂型の「へなちょこ急戦」。▲4五歩早仕掛けの新たな雄になれるでしょうか。
プロ棋界では、攻めが単調なので同じ棋士が毎度採用、というわけにはいかないと思いますが、複数の棋士が「隠し玉」としてたまに採用していくことになるかもしれません。
追記:へなちょこ急戦対策と「へなちょこ持久戦」
三間飛車側のへなちょこ急戦対策と、それに対する「へなちょこ持久戦」についての記事を書きました。
あわせて読みたい
ノーマル三間飛車△2二飛型対策「へなちょこ持久戦」とは?
先月紹介した、対ノーマル三間飛車の「へなちょこ急戦」。三間飛車党・山本博志四段のツイートの効果もあり、へなちょこ急戦の人気が増しているようです。ただ実は、このへなちょこ急戦に対する安全策があります。
関連記事
あわせて読みたい
【2022年5月更新】ノーマル三間飛車の基礎知識、定跡まとめ
ノーマル三間飛車(角道を止める三間飛車)の基礎知識、定跡をまとめました。詳細記事へのリンクも載せています。
コメント
コメント一覧 (2件)
この戦法は凄い話題になってる様でどんな戦法なのかなって思ってたら2016年頃だったかもう少し後だったかに将棋倶楽部24ってネット将棋で指された**nana定跡と同じ様な感じですね。当時はまだ三間飛車への有効性が示される事はなく、対四間飛車限定の必勝戦法って事でしたが斬新でした。へなちょこ急戦って名前は当然なく、指してた人のHNからそう呼ばれてましたね。後にぱったりと消えてしまいどうしたものかと思ってたら**naokoという人が全く同じ戦法を指してました。当時この**nanaさんはいつも8級で来てました。
将棋倶楽部24はレーティング戦の他に「自由対局室」ってのがあり、そちらでの対局に限って会員登録なくても飛び入りでゲスト対局出来ます。ゲストはHNの前に**が付き、対局の記録も棋譜も残らず足が付きません。HNも毎回自由に変えられます。そんな中で当時そこに出入りしてたのが**nanaでした。当時確か週末の深夜~早朝にかけてだけひっそりと来て、来るたびに20連勝とか30連勝とかしてた様な気がします。段級も自由に決めれてソフトや過少申告何でもやり放題の無法地帯と化してましたがいつも8級で来てたと思います。
この急戦を考案したとされるYOUTUBERの方がこの戦法の名前を動画で出したのは2020年頃らしいので、何処で知ったのかは知らないけど、今思えば当時の**nanaはこの方だったのかもしれませんね。当時はまだ確か対四間飛車専用だったので研究途上の段階だったと考えればそれも頷けます。
まあゲストは上の通り何も残らないんで当然ながらもうあの時の**nanaや**naokoが一体誰だったのかを知る術はないですが。
通り縋りの匿名さん
コメントありがとうございました。
将棋俱楽部24は創設当時から知っていて仕組みは把握していますが、2010年ごろ以降の話題には詳しくないので、そのエピソードは初めて知りました。
誰かが指しているのを見て真似して、という良い意味の連鎖が続いているのではないかと個人的には思います。