三間飛車の棋書、売上絶好調
2019年に入り、三間飛車関連の棋書の発売ラッシュが続いています。今月(2019年3月)はマイナビ出版から「振り飛車の新機軸!初手▲7八飛戦法」と「次の一手で覚える 三間飛車定跡コレクション414」が発売になりました。
先日Amazonの棋書全体ランキングを確認したところ、この2冊の書籍版とKindle版でなんと上位4位を独占。また、Kindle棋書に限った売上ランキングでも、下図の通り上位5冊のうちこの2冊を含む4冊が三間飛車関連本でした。
ここで、多くの方が不思議に思うことでしょう。「4位と5位の「あぴまる流」ってなんだ?」と。
本記事では、この2冊のひとくちレビューをお送りします。
あぴまる流とは
あぴまる流将棋定跡シリーズ 今日から捌ける三間飛車「①ノーマル三間飛車vs.居飛車早仕掛け」と「②ノーマル三間飛車vs.▲4五歩急戦」は、アマチュア三間飛車党のしめりけさんがリリースしているKindle棋書で、Amazonで販売されています。
なお、2019年時点で「あぴまる流将棋奇襲シリーズ①~今日から使える台パン戦法~①アヒル戦法②▲7七飛戦法」というKindle棋書もリリースされています(こちらはいはてんさんと共著)。
「あぴまる流」とは、しめりけさんが自身の三間飛車の流儀に対して名付けた愛称です。
次の一手問題形式で、各問題にはヒントも載っています。アマチュアの方の棋書であるため中身が心配になりますが、後述の通り問題も解説も本格的です。
表紙と中身のデザインは、一般的な出版社の棋書に比べてとてもユニークで、好みが分かれるかもしれません。
あぴまる流 今日から捌ける三間飛車②の下書きがやっと終わりました|ω・`)
いよいよ清書していきますが、こんな感じのデザイン(書体)は見づらくないですかね。
なお、サンプルのため図や文章は適当です。また、図中の先後記号が本文中と違うのは検討中です! pic.twitter.com/ykvHfp6Xl4
— しめりけ (@shimerike023) 2019年1月13日
ひとつのページ内に縦読みの文章と横読みの文章を含む斬新なレイアウトで、先に読むべき文章がページ毎に入れ替わることがあり、やや読みにくい時があります。
①ノーマル三間飛車vs.居飛車早仕掛け
まず「①ノーマル三間飛車vs.居飛車早仕掛け」は、第1図と第2図をテーマ図としています。
第1図は、本ブログで「▲4五歩早仕掛け」と呼んでいる急戦定跡です。
第2図は、三間飛車側が△2二飛よりも△7二銀と△5四歩を優先した局面で、一般的に三間飛車側が不利と言われています。先日まで放送されていた深浦康市九段によるNHK将棋講座「振り飛車なんてこわくない」の11月号「三間飛車のさばきを封じよう」でも、居飛車側を持って解説されていました。
が、果敢にもこの戦型を三間飛車側を持って解説しています。
NHK将棋講座には載っていない手を解説しており、さらに調べてみた結果、「東大将棋ブックス 三間飛車道場 第3巻 急戦」には載っているものの、そこから進んでこの定跡書で「居飛車良し」とされている局面から本書では新手を披露しています(57ページ目)。
手元のコンピュータ将棋ソフト(やねうら王+elmo)で解析してみたところ、たしかに三間飛車良しでした。コンピュータ将棋ソフトの評価は絶対ではありませんが、一般に知られている定跡の結論が覆っているかもしれず、驚くべきことです。この手順を知るだけでも本書を読む価値があるかもしれません。
②ノーマル三間飛車vs.▲4五歩急戦
続いて「②ノーマル三間飛車vs.▲4五歩急戦」は、第3図をテーマ図としています。
本ブログでは「▲5七銀左型急戦」と呼んでいる急戦定跡です。
この定跡は、このあと第4図のように進みます。
ここで振り飛車の手段として△5四銀と△5六歩の2つに分かれるのですが、その両方を解説しており、それぞれで「三間飛車道場」や「コーヤン流三間飛車の極意」に載っていない研究手順を披露しています。これら手順も、従来知られている定跡を上回っている可能性が大いにあります。
温故知新の昭和の急戦定跡
人類の叡智が結集した昭和の急戦定跡には、ロマンが詰まっています。が、居飛車穴熊をはじめとする持久戦の隆盛により、過去のものになっていました。
そこに近年強力なコンピュータ将棋ソフトが次々に現れ、後に「elmo囲い」と呼ばれるようになる▲7九金型の新しい船囲いの進化形を発掘しました(参考1図) 。
そして現在、この囲いと組み合わせる急戦形に脚光が集まっています。まさに温故知新です。
間もなく平成時代が終わろうとしていますが、今回紹介したあぴまる流のKindle棋書や過去の急戦定跡の棋書を読んで昭和の急戦定跡を学び、それとelmo囲いを組み合わせ、来たる新時代に向けてあなたならではのelmo囲い急戦を生み出すのも面白いのではないでしょうか。
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