三間飛車藤井システムへ
2019年2月24日に開始した、第68期王将戦七番勝負第4局(二日制)、▲久保利明王将 対 △渡辺明棋王戦。棋譜や詳しい解説は、毎日新聞Webサイトの王将戦ページや将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
三連敗で後がない久保利明王将は、この第4局で本シリーズ初の三間飛車を採用。その後居玉のまま端歩を優先する、三間飛車藤井システムの布陣に構えました。
三間飛車藤井システムは基本的に後手番の作戦で、先手番なら普通に美濃囲いに組んでも受け身になりすぎることはありませんが、久保王将はより積極的に戦うことを優先したのでしょう。
なおこの三間飛車藤井システムの原型となったのは、2009年度のNHK杯テレビ将棋トーナメント・▲佐藤天彦五段 VS △久保利明棋王(いずれも当時)戦です。
その後佐藤和俊六段が体系化し、2016年度のNHK杯で羽生善治三冠(当時)を含む名だたる強豪を連破して準優勝したことで一躍有名になりました。
さらには後手が角道を止めたのを見て飛車を4筋に振り直し、雁木囲いへ。初めて見た方には驚きかもしれませんが、これもシステムに含まれる戦術の一つです。
トーチカ囲い(ミレニアム囲い)へ
対する渡辺明棋王は、居飛車穴熊に組むのは危険と判断したか、はたまた当初の予定通かは定かではありませんが、トーチカ囲い(ミレニアム囲い)を採用しました。
トーチカ囲い(ミレニアム囲い)について、詳しくは以下の記事を参照ください。
余談ですが、最近は「ミレニアム囲い」よりも「トーチカ囲い」と呼ばれることが増えている気がします。2000年当時のことを知らない方が増えてきているからでしょうか。いずれこの記事のタイトルや内容を手直しする必要があるかもしれません。
渡辺棋王優勢?
さて、現時点ではまだ二日制対局の初日が終わったばかりですが、解説では早くも「後手有利」と言われています。どうやら囲いよりも攻めを優先した構想が機敏だったようです。
解説では触れられていませんが、もしかしたら先手が角筋を通した手が良くなかった可能性があります。
自然な手ですが、上の記事で紹介した「緩急自在の新戦法!三間飛車藤井システム」(佐藤和俊六段 著)を読んだ方ならご存知の通り、角筋を通す手を早めに指しすぎると、そこを争点とされたり反動がきつかったりと、振り飛車側が幸せになれる変化が少ない印象です。詳しくは本書を参照ください。
はたして本譜も6五の地点を争点に先行されてしまい、先手が守勢に立たされています。
しかしそこは「さばきのアーティスト」の裏の顔、「ねばりのアーティスト」の一面を持つ久保王将。踏みとどまってくれることを祈っています。
山本博志四段、大興奮
ところで、本局の副立会人は中田功八段で、Twitter解説(1日目)は山本博志四段でした。
中田八段は言わずと知れたコーヤン流三間飛車の使い手。山本四段は本ブログでもたびたび紹介している、新進気鋭のノーマル三間飛車党です。
久保王将が三間飛車を採用した背景には、このお二人の存在があったかもしれません。
久保王将の序盤戦術を見て、素直すぎる反応を示していたのが山本四段。
#ShogiLive 山本博志四段>【1手目】うおおお初手▲7八飛車! 家で思わず叫んでしまいました。
— 日本将棋連盟モバイル【将棋連盟ライブ中継】 (@shogi_mobile) 2019年2月24日
#ShogiLive 山本博志四段>【7手目】▲6六歩、これでノーマル三間飛車が確定しました。ありがとうございます。代えて▲6八銀で角交換振り飛車に誘導する指し方もある所です。
— 日本将棋連盟モバイル【将棋連盟ライブ中継】 (@shogi_mobile) 2019年2月24日
山本四段が初手▲7八飛を愛用する(というかプロ入り後先手番では今のところこれしか指していない)ノーマル三間飛車党であることを知らない方は、なぜこんな反応を示しているのかわからなかったのではないでしょうか。
いずれにせよ、山本四段がノーマル三間飛車をこよなく愛する棋士であることが、広く知れ渡ったに違いありません。
2月26日追記:渡辺棋王、二冠に
2日目の記事を書きました。
タイトルの通り、渡辺棋王が勝ち、二冠を手にしました。
コメント