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VS西山朋佳女王戦
2019年1月9日に竜王戦6組ランキング戦、▲西山朋佳女王(奨励会三段)対△山本博志四段が行われ、62手で山本四段が勝利しました。詳しい棋譜と解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
本局は山本新四段にとって四段昇段後2局目の対局で、1局目の高田尚平七段戦に続き対抗形ではなく相振り飛車での勝利となりました。
初手▲7八飛からの相三間飛車
先手番となった振り飛車党・西山女王の初手は▲7八飛。三間飛車党の山本四段のお株を奪う一手ですが、今や振り飛車党ならば誰でも指す初手になっています。
以下△3四歩▲6八銀△3二飛▲5八金左(第1図)と進行しました。
山本四段が相三間飛車を目指したのは自然ですが、5手目の▲5八金左が珍しい手順です。局後、山本四段もTwitterで以下のように感想をつぶやいています。
従来の相三間飛車定跡
過去にさかのぼると、従来の相三間飛車定跡は初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩△3五歩▲7八飛△3二飛(参考1図)から入るのが普通でした(4手目△5四歩から△5三銀型三間飛車に組む定跡もあります)。
ここから▲4八玉△6二玉▲5八金左△5二金左(参考2図)と進むのが一般的です。
ここで10年前までは▲4六歩から高美濃囲いに組むのが定跡でしたが、これには阿部健治郎四段(当時)考案の金無双に組んで速攻を狙う後手番構想が優秀とされています(詳しくは「相振りレボリューション」(杉本昌隆七段 著)など参照)。
そのため2019年現在では参考2図から▲7六飛と上がるほうが勝るとされています。詳しくは「石田流を指しこなす本【相振り飛車編】」(戸辺誠七段 著)などを参照ください。
流行るか?新しい相三間飛車
本譜に戻って、初手▲7八飛の場合、2手目△3四歩に対する3手目は本譜の▲6八銀(または▲4八玉)が定跡です。したがって従来の相三間飛車定跡には合流しにくく、新たな相三間飛車定跡の確立が必要になってきます。三間飛車党の山本四段でさえ上述の通り「5手目(▲5八金左。再掲載第1図)で研究がパー」と言っているくらい暗中模索の状態です。
初手▲7八飛からの先手三間飛車に手を焼いた居飛車党や振り飛車党が、相三間飛車を指向するようになり、山本四段の目論見通り相三間飛車が流行るかどうか?今後の動向が気になります。
なお、初手▲7八飛〜3手目▲4八玉からの相三間飛車については約15年前に「三間飛車のひとくちメモ 旧館」に私の研究内容を掲載しており、加筆修正したものをこの新館の方に転記しています。
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プロ棋士の先生方が実戦や棋書などで研究成果を披露し始めたら、私の研究内容はひとたまりもないかもしれませんが、今のうちは何かしら参考になる手順や解説が含まれているのではと思います。
山本四段、快勝
さて本譜は、後手・山本四段がデビュー戦に続き素早い動きを見せました(第2図)。
途中難しいところはあったものの、結果的には62手の短手数で山本四段の快勝。
連勝がどこまで続くか、初の居飛車VS振り飛車の対抗形はいつ見られるか、今後の戦いに引き続き注目です。
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