石田流本組みVS棒金
2019年8月15日に行われた朝日杯将棋オープン戦一次予選、▲戸辺誠七段 対 △青野照市九段戦。
本局の模様は、AbemaTVにて放送されました。また、棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリでも観ることができます。
先手番となった戸辺七段は、初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩以下、石田流を採用。
対する後手・青野九段は4手目△4二玉から棒金を採用しました。左美濃ではなく棒金を採用するあたり、さすがA級在籍通算11期を誇る昭和の名棋士だなぁと感じます。
棒金に対しては、漫然と石田流本組みに組むと作戦負けになるというのが通説です。しかし、相手の形に応じて的確に石田流本組みを目指せば十分に戦える、というのが戸辺七段の主張で、自身の著書「石田流の基本―本組みと7七角型」や「石田流を指しこなす本【急戦編】」で詳しく解説しています。そして実際本譜でも石田流本組みを採用しました。
戸辺攻め炸裂
その後青野九段は、棒金(△8四金)に加えて二枚銀(△5三銀+△6三銀)に構え、さらには袖飛車(△7二飛)に。ものすごい圧力で7筋から押さえ込みにいきます。
それに対する指し回しが、まさに戸辺七段の真骨頂でした。小技を織り交ぜながら、ついには大駒を二枚とも切り飛ばし大きく駒損しながらも小駒だけで敵陣に食い付きます。そしてさばけず取り残された相手の飛車を小駒で召し捕り、その飛車を用いてあっという間に寄せ切ってしまいました。「戸辺攻め」の面目躍如です。
戸辺七段は自身のブログにて本局を振り返っています。
こちらが美濃囲いの堅陣なので、極端にいえば攻めさえ続けば勝ちやすいという考え方が出来ます。
この辺りの変化は、石田流の基本をベースに類似で研究していて、感覚的に覚えていたのが幸いしました。
私を含む戸辺七段ファンにとって(おそらく戸辺七段本人にとっても)、近年の戸辺七段の苦闘には歯がゆい思いもあるでしょうが、本局の快勝にはひとまず溜飲が下がったのではないでしょうか。今後のさらなる活躍に期待したいと思います。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 4.88 / 振電改
関連棋書
「石田流を指しこなす本【急戦編】」のほうが新しく、また次の一手問題形式になっており読みやすいのでオススメです。
場所を取り携帯に不便な紙の書籍版を泣く泣く買い揃えています。
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