長時間エキシビションマッチ
2021年8月15日に、電竜戦エキシビジョンマッチとして水匠 VS dlshogi戦が行われます。
本エキシビジョンマッチは「古くから研究の盛んな従来型で優勝した将棋AI」と「近年成長著しい深層学習モデルによるAI(人工知能)」を長時間における持ち時間設定にて公開対局するものです。
先後を入れ替えて2局行われます。
水匠とは
水匠は、2020年5月に行われた世界コンピュータ将棋オンライン大会(WCSOC2020。COVID-19の影響により中止になった第30回世界コンピュータ将棋選手権(WCSC30)に代わって行われたオンライン将棋大会)と、今年(2021年)7月に行われた第2回電竜戦TSECのファイナルで優勝した、標準NNUE型の将棋ソフトです。
dlshogiとは
一方のdlshogiは、ディープラーニングを使用した将棋ソフトです。2020年11月に行われた第1回電竜戦で優勝したGCTには、dlshogiと同じ探索部が採用されていました。dlshogiは、第2回電竜戦TSECのB級リーグで優勝を果たしています。
標準NNUEとディープラーニングの違い
標準NNUE型とディープラーニングの違いについて、例えば以下の記事と少し下で紹介しているログミーTechの記事などが参考になります。
今年5月に「第31回世界コンピュータ将棋選手権お疲れ様座談会~将棋AIの開発秘話を語る~」というトークイベントが開催され(私はこのイベントを聴講しました)、水匠開発者の杉村達也氏、dlshogi開発者の川島馨氏、そしてPAL(WCSC31で準優勝した将棋AI。NHK杯テレビ将棋トーナメントでの評価値表示にも使用されています)開発者の山口祐氏が登壇していましたが、このイベントを通じて本エキシビションマッチへの流れが生まれたのかもしれません。
dlshogi、長時間対局の弱点克服なるか
今年5月の時点で、dlshogiは持ち時間の長い対局が苦手だった可能性が指摘されています。
今回の世界コンピュータ将棋選手権は、15分5秒加算のルールで、長い持ち時間になっています。
dlshogiは、Resnet10ブロック192フィルタという軽めのモデル(AlphaZeroは20ブロック256フィルタ)を使用して、指し手のみを学習しているため、長い持ち時間を活かしきれない条件だったと推測しています。
はたしてこの弱点を克服しているのかどうかにも注目です。
豪華な解説陣とゲスト
本エキシビションマッチの解説は、阿部健治郎七段と佐々木勇気七段。そして特別ゲストとしてなんと渡辺明名人も招かれるという、豪華な布陣です。冒頭に紹介した記事よりまた少し引用します。
本イベントは学術的な意味だけなくプロ将棋棋士2名による解説。ならびに渡辺 明 名人を短時間ながらゲストに招くことにより、幅広くAI技術の発展を社会に啓蒙できるものと考えています。
主催者の松本浩志さん(カツ丼将棋開発者)は、以前から解説に力を入れたい旨をコメントしていましたが、エキシビションマッチで時の名人をゲストに招くとは驚きました。
コンピュータ将棋界がこのようにトップ棋士を招くことができた背景に、ついにAIトレーナー契約でも結ばれたのか?と勘ぐってしまいました。公になることはないでしょうから、妄想にとどめておきます。
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