先手番うっかり三間飛車
2019年10月31日に行われた順位戦B級1組、▲菅井竜也七段 対 △郷田真隆九段戦。
棋譜と詳しい解説は、名人戦棋譜速報や将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
先手番の菅井七段は、初手で5筋の歩を突いて中飛車を明示。・・・と思いきや、後手・郷田九段の角道を開けるを見て7筋に飛車を振りました。
まるでうっかり手がすべって7筋まで飛車を移動してしまったかような、いわゆる「うっかり三間飛車」です。
菅井七段としては、2017年7月に行われた王位戦七番勝負第2局、▲菅井七段 対 △羽生善治王位(王座・棋聖)戦(肩書・段位は当時。結果は菅井七段の勝ち)以来の先手番うっかり三間飛車のオープニング採用となりました。相手に的を絞らせないよう、戦術を散らして工夫していることがうかがえます。
なお当時の王位戦七番勝負の棋譜と詳しい解説は、王位戦の中継サイトで観ることができます(2019年11月時点)。
先日まで行われていた第60期王位戦七番勝負、豊島将之王位(名人) 対 木村一基九段(肩書・段位は当時)戦の棋譜も観ることができます。
角交換向かい飛車から相銀冠穴熊へ
先手はこのあと角交換向かい飛車に進展しました。
角道オープン四間飛車からの角交換振り飛車では、▲8八銀〜▲7七銀と駒組みを進めるのがほぼ必然である一方、うっかり三間飛車では▲6八銀型に組むことができるのがメリットです。さらには▲5七銀とスムーズに進出することができます。
その後、両者仕掛けを見送り囲いを進展させ続け、銀冠穴熊にまで組み上げました。
穴熊に囲うと駒が偏るため、角打ちの隙などに気を付ける必要がある中、バランスを取り続けることができるのはさすがプロの技だなぁと感じます。
菅井七段、快勝
長い長い序盤戦の末、菅井七段が仕掛けて中盤戦へ。その後銀冠穴熊同士の玉頭戦へと進みました。
菅井七段が玉頭戦を制したものの、深い位置に構える郷田玉にまで手を付けるにはまだ長い道のりが待ち構えています。
その道中、菅井七段の攻めが完全に切れてしまったと思って観ていたら、実は繋がっていたようで寄せ切って快勝。同じ局面でもプロの先生方と自分とでは見えている世界が違うことを痛感させられる終盤戦でした。
これで菅井七段は順位戦B級1組で6勝1敗となり、首位を継続。
A級の久保利明九段が危うい状況にある中、A級在籍の振り飛車党が一人でも多くなるよう、菅井七段の奮闘にこれからも期待したいと思います。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 4.88 / 振電改
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