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居飛車VSノーマル三間飛車
2019年4月22日に行われた第12期マイナビ女子オープン五番勝負第2局、▲里見香奈女流四冠 対 △西山朋佳女王戦。
棋譜と詳しい解説は、将棋情報局内のマイナビ女子オープンのサイトか将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
第1局で相振り飛車の激闘の末破れていた先手・里見女流四冠は、3手目に▲2六歩と突き居飛車を明示。得意とする振り飛車を後手・西山女王に譲った形となりました。
対する西山女王は4手目に△4四歩と角道を止め、ノーマル三間飛車を採用しました(第1図)。
第1図は早くも▲4五歩からの仕掛けを見せた一触即発の局面です。昭和の急戦定跡として研究されてきた形で、△7二銀、△5二金、△5四歩、△4三銀の組み合わせで仕掛け方や受け方が微妙に異なってくる、人類の叡智が詰まった珠玉の急戦定跡と言えるでしょう。
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天守閣美濃VS△4三銀型三間飛車
第1図以下、西山女王は△4三銀を選択しました。ここで▲4五歩と仕掛けたり▲3七桂と一手ためたりする手も当然ありましたが、里見女流四冠は▲8六歩を選択。これは▲8七玉からの天守閣美濃を狙った手で、急戦は無くなりました。以下第2図のように進みます。
天守閣美濃は、本譜のような米長玉(端玉銀冠)や四枚美濃への組み換えが可能な、伸展性に優れた美しい布陣です。将棋倶楽部24に常駐している超強豪コンピュータ将棋ソフト、人造棋士18号(JKishi18gou)もよく採用しています。
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米長玉VSダイヤモンド美濃
第2図以下、何度も仕掛けのチャンスがありましたが、里見女流四冠はあえて機をうかがい続け、前述のように米長玉に組み上げました。
対する西山女王は、その間にダイヤモンド美濃へ(第3図)。
戦いが始まるが惜しいほどの(これは言い過ぎですが)、お互いに美しい布陣です。
玉頭攻めとは限らない
長い序盤戦のあと戦いが始まり、迎えた第4図。
本譜は△8五歩と突きました。5三や6四に角を設置して△8五歩と突く攻めは、部分的には米長玉や銀冠に対する急所の一手で、ぜひとも覚えておきたい反撃の手筋です(▲同歩には△8六歩)。
しかしここでは△5六歩▲同銀(▲4八銀には△4六角▲4七歩△3七角成!▲同銀△4七飛成)△4六飛▲2一馬にじっと△4三歩!(参考図)の方が優っていたことで、将棋の奥深さを感じます。
防衛に王手
第3図以下、里見女流四冠がやや有利と思われる局面が続きましたが、西山女王の端攻めに対する応手にミスがあったようで、形勢逆転。以下、難しい局面もありましたが西山女王が押し切って勝利しました。詳しくはマイナビ女子オープンのサイトか将棋連盟ライブ中継アプリでご覧ください。
2連勝で防衛に王手をかけた西山女王。里見女流四冠の巻き返しなるか、戦型ともども注目です。
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