西山朋佳女王のノーマル三間飛車
2020年5月12日に行われた第13期マイナビ女子オープン五番勝負第3局、▲加藤桃子女流三段 対 △西山朋佳女王。
棋譜と詳しい解説は、マイナビ女子オープンのWebサイトまたは将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
五番勝負第1局で角道オープン三間飛車、第2局でゴキゲン中飛車を採用した西山女王は、本局では角道を止めるノーマル三間飛車を採用しました。
加藤桃子女流三段のいきなり早仕掛け
それに対して加藤桃子女流三段の採った戦術が、非常に大きな注目を集めました。玉の位置が6八の状態で、13手目でいきなり4筋から仕掛けていったのです。
後手ゴキゲン中飛車に対する超速▲3七銀戦法も、▲6八玉型から右銀をどんどん繰り出していく素早い戦法ですが、本戦術は右銀は4八のままで4筋の歩による仕掛けが13手目で開始しているので、その早さは圧倒的です。
普通は見ることがない仕掛けなので、度肝を抜かれた観戦者の方が多かったようです。
もしこれで加藤女流三段が勝ったら、この仕掛け流行りますね😁
— 将棋情報局編集部 (@mynavi_shogi) May 12, 2020
ただ実は、この仕掛けには前例があり、定跡化されています。例えば将棋世界2010年11月号の付録「定跡次の一手 対後手三間飛車 いきなり早仕掛け」(将棋世界編集部 著)で本戦法が解説されています。
他にも、例えばアマチュアの方の棋書になりますが、トマホークでおなじみのタップダイスさんの棋書「三間飛車VS超急戦」の第1章でも本戦法が解説されています。
前例が少ないので広く知れ渡った名称ではありませんが、本ブログでは前述の将棋世界の付録のタイトルに則り、「いきなり早仕掛け」と呼んでいます。
アマチュア強豪の加部康晴氏が得意としていることから、「加部流」とも呼ばれています。
本戦法について、詳しくは下記記事を参照ください。
独自に研究していた加藤女流三段
しかし驚くべきことに、本戦法を採用した加藤女流三段はこの定跡を知らなかったそうです。
マイナビ女子オープン第3局ご観戦頂きありがとうございました。
仕掛けは前列があることを知らなかったです。(定跡名前ついていたのですね!失礼しました。)詳しい本があることも今日知りました。
来週の第4局に向けてまた体調を整えながら頑張ります!!(o^^o)— 加藤 桃子 (@mono_709) May 12, 2020
つまり、独自に後手三間飛車に対する先手超急戦の戦術を模索した結果、この13手目の仕掛けを見出し、そこから独自に研究を掘り下げていったことになります。恐るべき戦術眼です。
棋書が発売されること必至?
大いに盛り上がった、後手三間飛車に対する居飛車超急戦の秘策。さらに実戦例が増えたらもっと面白いことになりそうです。その際にはマイナビ出版さんからの棋書発売待ったなしかもしれません(笑)。
ただ、このいきなり早仕掛けだけで一冊のボリュームで仕上げるのはなかなか難しいかもしれません。狭く深すぎる変化の解説が多くなりそうです。
勝手に企画するのならば、昭和と平成、そして令和の▲4五歩からの各種仕掛け(▲5七銀左型急戦、▲4五歩早仕掛け、いきなり早仕掛け、腰掛け銀急戦など)の歴史をひもときながら各戦術を解説する棋書に仕上げれば、観る将にも指す将にも読み応えがあるものになるのではないでしょうか。
マイナビ女子オープン五番勝負の行方とともに、注目していきたいと思います。
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