目次
コンピュータ将棋連続対局場所、floodgate
オンラインのコンピュータ将棋連続対局場所、floodgate。
将棋AIの新たな開発手法の実験の場として活用されており、水匠やBURNING BRIDGESなど、強豪将棋AIがしのぎを削っています。
Deep Learning系の将棋AI、dlshogiもそのひとつです。
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2021年8月15日に行われた電竜戦長時間マッチ、水匠 VS dlshogi戦。当初先後を入れ替えた2番勝負の予定でしたが、第1局で後手・水匠にバグが発生し短時間で先手・dlshogiの勝利となったため、急遽第1局と同じ先後とした第3局も行われました。
dlshogi+振り飛車定跡HoneyWaffle
そのfloodageに、dlshogiと振り飛車定跡・HoneyWaffleを組み合わせたソフトが登場しました。
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文春オンラインにハニーワッフル開発者のインタビュー記事
文春オンラインに、コンピュータ将棋ソフト・ハニーワッフルの開発者、渡辺光彦氏のインタビュー記事が掲載されました。ハニーワッフルは振り飛車を指す「振り飛車党」のコンピュータ将棋ソフト。私も昔から注目しており、コンピュータ将棋選手権(WCSC)28、29におけるハニーワッフルの戦いぶりを解説した記事も書いています。
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名前は「dlshogi_HoneyWaffleBook_v100x8」。
レーティングは2022年3月21日時点で4267点と上位に位置しています(なお、同日時点でのトップは「Suisho5_TR3990X」の4439点)。
dlshogi_HoneyWaffleBook_v100x8は、三間飛車、四間飛車、中飛車(ゴキゲン中飛車)とまんべんなく指しているように見えます。先手の場合、初手▲7八飛が比較的多いような気がします(数えたわけではなく、気のせいかもしれません)。
dlshogi開発者のうちのどなたかが登録しているものかどうかはわかりません。また、将棋AIの名前がそうであるだけで実際にdlshogiとHoneyWaffleを組み合わせたものかどうかはわかりません。その前提であることをご承知おきください。
dlshogiの開発者である山岡忠夫さんは自身の2022年3月のブログ記事にて、定跡無しでAIの戦型指定を行う手法を公開しています。
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参考棋譜
dlshogi_HoneyWaffleBook_v100x8の棋譜を2つ紹介します。
1局目
【第1図は18手目△5二金左まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀v玉v金v銀v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 角 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=18 △5二金まで
第1図まで定跡で、評価値0と判断しているdlshogi。
しかし以下▲8六歩△7四歩と進んだ局面(第2図)で評価値が一気に474点先手良しに変化します。
【第2図は20手目△7四歩まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀v玉v金v銀v飛 ・ ・|二
| ・v歩 ・v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩 ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ ・ 角 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=20 △7四歩まで
▲8六歩の局面では△7四歩が最善手と判断し、それを指しても474点先手良しということです。
悪いとわかっていながら振り飛車定跡通りに「指さされ」続け、定跡を抜けたところで自分が不利の点数を付けるというのがなんだか不憫です。
しかしdlshogiはここから地力の違いを見せつけます。相手の「AobaZero_w3900_n_p30k」のレーティングは3663点(2022年3月21日時点)と格下。
【第3図は36手目△6三金まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・ ・ ・v飛 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v銀 ・v角v歩v歩|三
|v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 銀 角 金 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 金 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=36 △6三金まで
少し進んだ第3図(居飛車銀冠VS三間飛車美濃囲い△5三銀型)では339点先手良しとdlshogiは判断していますが、中盤のねじりあいが進み互いに珍妙な囲いへと変化した第4図では、651点後手良しに形勢判断が入れ替わっています。
【第4図は70手目△7二銀引まで】
後手の持駒:歩三
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v玉v銀 ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v金v銀v金 ・v角 ・ 歩 ・|二
| ・ ・v桂 ・ ・v飛 ・ ・v歩|三
|v歩 歩v歩 ・v歩v歩 ・v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩|五
| 歩v歩 歩 角 歩 歩 ・ 飛 ・|六
| ・ ・ 銀 金 ・ ・ 桂 ・ ・|七
| 香 金 銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 玉 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=70 △7二銀まで
結果もそのままdlshogiが勝利。
2局目
初手▲7八飛から角交換振り飛車に進んだ一局(第5図)。
【第5図は11手目▲1六歩まで】
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v玉 ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 桂 歩 歩 歩 歩 歩 ・|七
| ・ ・ 飛 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ 金 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角
手数=11 ▲1六歩まで
この局面で先手dlshogiは454点後手良しと判断。無難な▲8八飛ではなくじっと▲1六歩というのも何気にすごい一手です。
第5図以下、△8六歩▲同歩△同飛▲7九金△3二銀▲8八飛△同飛成▲同金(第6図)という角交換三間飛車としては自然な応酬を経た第6図では、評価値が互角(先手の93点)に戻っています。
【第6図は19手目▲8八同金まで】
後手の持駒:飛 角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・v玉v銀 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 ・ 桂 歩 歩 歩 歩 歩 ・|七
| ・ 金 ・ 銀 ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:飛 角 歩
手数=19 ▲8八同金まで
続いて以下△9二角▲3八銀(第7図)と進んだ局面では、一気に1569点!先手良しとの判断を下すdlshogi。
【第7図は21手目▲3八銀まで】
後手の持駒:飛 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金 ・v桂v香|一
|v角 ・ ・ ・ ・v玉v銀 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 ・ 桂 歩 歩 歩 歩 歩 ・|七
| ・ 金 ・ 銀 ・ ・ 銀 ・ ・|八
| 香 ・ ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:飛 角 歩
手数=21 ▲3八銀まで
たしかに持ち駒の角を手放してしまったうえさほど働きそうもないので評価値が動くのはわかりますが、駒割は互角の状況でこの点差を付けるのは、さすがdlshogiという感じがします。
以下、地力の違いもありdlshogiが快勝しました。
新たな振り飛車の手筋や構想の確立に期待
もちろん、相手が強くなると最初に不利になった分を巻き返せずにそのまま敗れてしまうこともあります。
しかし、それでも振り飛車ソフトのレーティングがどこかで頭打ちすることなく4200点まで到達できていることは、レーティング4000点あたりであってもやはり中終盤力が重要であることを物語っていると言えます。
三間飛車で、駒組の段階で自ら▲6五歩(△4五歩)と戦いを挑んでいく筋や、居飛車銀冠に対する玉頭攻め&地下鉄飛車など、将棋AIのおかげで新たな振り飛車の手筋や構想が今後も確立されていくことでしょう。
さらにはDeap Learning系の将棋AIと振り飛車の組み合わせにより、その可能性が益々広がることを期待したいと思います。
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