三間飛車VS左美濃を徹底解説
「プロの実戦に学ぶ 三間飛車VS左美濃」のひとくちレビューをお送りします。
著者は三間飛車を多用している振り飛車党・小倉久史七段。昨年(2019年)夏の「三間飛車戦記 2008~2019」以来の棋書リリースとなりました。
本書では、昭和、平成、そして令和時代で章を分け、それぞれの時代で特徴的な左美濃の形とそれに対する三間飛車側の戦術を取り上げながら、三間飛車VS左美濃の戦いを徹底解説しています。
3手目に▲7五歩と突いて真っ先に石田流を目指す将棋は解説されていませんが、ノーマル三間飛車から石田流に組み換える戦術はふんだんに解説されています。
また、初手▲7八飛から角道をとめずに角交換三間飛車、角交換向かい飛車に進む戦術も解説されています。
プロの実戦譜の解説が充実
本書は、タイトルからも後述の目次からもわかる通り、プロの実戦譜の解説が充実しています。
各章の実戦編では、1局当たり見開き2ページとかではなく、6ページから10ページ(手数などによってバラツキます)という大ボリュームで、投了まで解説されています。
序盤戦術を突き詰めるというよりも、中終盤のプロの攻防を学ぶほうがメインといえるでしょう。難易度は高めかもしれません。
しっかり読めば、中終盤力が確実にアップすると思います。
実はものすごく長い目次
本書の章レベルまでの目次は以下の通り。
第1章 昭和の三間飛車 対 左美濃
第2章 平成の三間飛車 対 左美濃
第3章 令和の三間飛車 対 左美濃
章レベルでいうとたったこれだけで、棋書販売ページにもこの章レベルまでの目次しか載っていません。
しかし、節レベルまで含めると非常に長く、濃密で魅力的な内容であることがわかります。節レベルまでの目次は、裏表紙の帯に載っています。
第1章 昭和の三間飛車 対 左美濃
例えば「第1章 昭和の三間飛車 対 左美濃」の節レベルまでの目次は以下の通りです。
第1節 △2二玉型左美濃 対 三間石田流
第2節 △2二玉型左美濃 対 ▲5七銀型四枚美濃
第3節 大山十五世名人の三間飛車穴熊
第4節 大内延介の三間飛車穴熊
第5節 △2二玉型左美濃右四間飛車
第6節 実戦編
「第3節 大山十五世名人の三間飛車穴熊」をはじめ、非常に魅力的に映る節構成となっています。第6節の実戦編では、5局の実戦譜が解説されています。
この章では、△2二玉型左美濃(参考1図)にフォーカスが当たっています。
第2章 平成の三間飛車 対 左美濃
「第2章 平成の三間飛車 対 左美濃」はさらにボリュームが多く、第7節まであり、第7節の実戦編では7局の実戦譜が解説されています。
この章では、△2三玉型左美濃(参考2図。「天守閣美濃」とも呼ばれています)にフォーカスが当たっています。
第3章 令和の三間飛車 対 左美濃
最後の「第3章 令和の三間飛車 対 左美濃」については、まだ令和が始まったばかりなので第2節までですが、第2節の実戦編では4局もの実戦譜が解説されています。
この章では、△3一玉型左美濃および角道オープン三間飛車(参考3図)にフォーカスが当たっています。角交換に進む将棋もしない将棋も取り上げられています。
ベテランならではの豆知識も満載
さらに、定跡ウォッチャー兼うんちく好きの私にとってうれしいのは、小倉七段がベテランらしく昭和からの豆知識を所々に散りばめてくれていることです。
戦法の流行り・廃りをはじめ、
(三間飛車に対し、舟囲い急戦や居飛車穴熊などいろいろあるが)過去50年間の将棋を振り返ると左美濃が最も多く指されている。
穴熊や○○○○などは「下品」な戦法とされていた。
(注:「○○○○」には戦法名が入ります)
などなど、ためになる(?)豆知識が満載です。
なお、コラムは全部で3つ掲載されています。
対左美濃の歴史を知り、中終盤戦に強くなりたい方に
昭和、平成、令和の時代の流れに沿って、三間飛車VS左美濃の戦いを徹底解説している「プロの実戦に学ぶ 三間飛車VS左美濃」。
プロの実戦譜が豊富で、投了まで解説されているので、しっかり読めば中終盤が強くなるのは間違いないでしょう。
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