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I Love 三間飛車穴熊
「捌く振り飛車!三間飛車穴熊のすべて」のひとくちレビューをお送りします。
著者は小倉久史七段。三間飛車関連の棋書を多数執筆しており、最近では「プロの実戦に学ぶ 三間飛車VS左美濃」をリリースしています。
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同じく小倉七段執筆の「下町流三間飛車 居飛穴攻略の新研究」や「三間飛車新時代」でも三間飛車穴熊が解説されていますが、1冊まるごと三間飛車穴熊を解説する棋書は本書が初めてです。
三間飛車穴熊をテーマにした本書の執筆依頼があってからは、実戦で三間飛車穴熊を復活させたという小倉七段。それに関連して、まえがきで披露されたエピソードにしびれました。
三段リーグを戦った時には三間飛車穴熊を多用して16勝2敗で昇段することができた。
(中略)
昇段後は穴熊を封印したが、なぜ封印したかと言うと美濃囲いで居飛車穴熊を退治したいと思っていたからである。
自信みなぎるエピソードで、さすがプロとうならされます。一方で、プロ入り後も三間飛車穴熊で突っ走る小倉七段を見てみたかった気もします。
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小倉七段の三間飛車穴熊
ちなみに、三間飛車穴熊を復活させた小倉七段の対局のひとつが、本書の発売日の約一か月前である2021年10月8日に行われた第70期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)一次予選、高橋道雄九段戦です(参考1図。王座戦の棋譜利用のガイドラインに則り局面図を使用させていただきます)。
高橋九段相手に、三間飛車穴熊で挑んだ小倉七段。その後急戦を選んだ高橋九段に対し、切り合って玉の堅さと遠さで勝負すると思いきや、ていねいに受けに回る方針をとりました(参考2図)。
三間飛車穴熊が完成していないときは、相手の攻めに慌てずじっくりと対処する戦術も有効です。
その後もていねいに相手をする小倉七段(参考3図)。
参考2図から参考3図にいたる手順中、△8二銀を急がず△6二金寄とした手がポイントで、このおかげで△5二飛~△5四飛と飛車を大転換して縦横無尽に活用できるようになりました。
参考3図以下、高橋九段の攻めに乗じてカウンターを仕掛け、相手陣に飛車を成り込みましたが、その後一転して龍を自陣に引きつける緩急自在の指し回しで、自陣が穴熊で偏った陣形なのにもかかわらず相手の攻めを完封して快勝してしまいました。恐るべし、小倉七段。
本書の目次
閑話休題。本書の目次は以下の通りです。
本書の目次
序章 三間飛車穴熊の概要
第1節 ▲5七銀型穴熊
第2節 ▲6七銀型穴熊
第1章 相穴熊
第1節 ▲5七銀型相穴熊
第2節 ▲6七銀型相穴熊
第2章 三間飛車穴熊対左美濃
第1節 ▲5七銀型穴熊
第2節 ▲6七銀型穴熊
第3節 角道保留左美濃
第3章 三間飛車穴熊対急戦
第4章 相振り三間飛車穴熊
このほかに、「Z(ゼット。絶対詰まない形)」と「と金攻め」について語ったコラムがあります。
作戦負けせずに三間飛車穴熊に組む
序章から第3章までが、三間飛車穴熊VS居飛車の対抗形の解説で、すべて三間飛車穴熊側が先手です。
まず序章で、様々な三間飛車穴熊の布陣が紹介されています。
いずれの章も、まずは作戦負けせずに三間飛車穴熊に組みにいく方法にフォーカスしていると言えます。形によっては左辺の陣形を整えるのを優先する必要があったり、金を寄るのを優先しても問題なかったりするので、それらの優先度を各章・節で解説しています。
対持久戦では▲5七銀型と▲6七銀型を解説
第2章の相穴熊、第3章の三間飛車穴熊対左美濃では、居飛車持久戦を相手にするうえで選ばなくてはならない▲5七銀型(参考4図)と▲6七銀型(参考5図)それぞれについて、どちらが優秀ということは突き詰めず両方とも取り上げ、それぞれの長所・短所、および攻め筋・手筋を数多く解説しています。
三間飛車穴熊はノーマル三間飛車と組み合わせるのが一般的ですが、展開によっては石田流に組み換えにいくことも可能で、その戦い方も解説されています。
なお、第2章第3節の角道保留型とは、参考6図のような△3一玉型左美濃の形を指しています。
相振り三間飛車穴熊も
一方第4章の「相振り三間飛車穴熊」は向かい飛車VS三間飛車穴熊で、三間飛車穴熊側がすべて後手となっています。
△7一金・△7二金と金を縦に並べるいわゆる「戸辺流」の相振り三間飛車穴熊(詳しくは「戸辺流相振りなんでも三間飛車」(戸辺誠七段 著)参照)ではなく、相振り飛車戦でオーソドックスな△7二金・△6二金型の三間飛車穴熊を解説しています。
安全に三間飛車穴熊に組んで強く戦いたい方に
対居飛車穴熊、対左美濃、対急戦、さらには相振り三間飛車穴熊までをも網羅した、「捌く振り飛車!三間飛車穴熊のすべて」。
三間飛車穴熊がプロ棋界でも通用することは、著者の小倉七段が身を持って証明しています。
美濃囲いよりも堅い穴熊に組んで、強く戦いたい三間飛車党にオススメの一冊です。
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