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「出る杭は打たれる」ノーマル三間飛車対策本
2019年1月に、三間飛車対策の棋書「必勝 三間飛車破り」が発売されることがわかりました。
著者は畠山鎮七段。最近初タイトルを獲得した斎藤慎太郎王座の師匠としてもおなじみです。
近年三間飛車が流行しており、いきなり三間飛車を明示する初手▲7八飛は2017年度のプロ公式戦採用局数が61局と大きく増加し、勝率0.583という好成績を残しています。
こうなれば居飛車党も黙ってはいません。三間飛車対策の研究が進むことになり、そして満を持してノーマル三間飛車対策本リリースとなりました。
居飛車穴熊と流行のエルモ囲い
将棋情報局将棋情報局またはAmazonの本書販売ページにて、いわゆる立ち読み機能で目次を含む約20ページ分を読むことができます。
コンピュータ将棋が当たり前のように普及しこれまでにはないユニークな構想を披露しているため、戦法の多様化がより一層進んでいますが、本書では居飛車側の囲いを居飛車穴熊(第1図)とエルモ囲い(第2図)に絞っています。
一方で、三間飛車側の作戦は石田流組み替え(第3図)、コーヤン流(第4図)、下町流、三間飛車穴熊など数多く紹介しており、それらに対する対策を網羅しているのが本書のすごいところです。
とりわけ見どころとなるのは、プロ棋界で流行中のエルモ囲い急戦でしょう。著者の畠山七段によると、エルモ囲いが書籍化されるのは本書がはじめてだそうです(中飛車左玉における類似の囲い(文末の菅井竜也七段の参考記事参照)を除く)。なお、本書ではアルファベットの「elmo」ではなくカタカナで「エルモ」と表記しているため、本記事もそれに合わせています。
△3一金型は昔からあった
立ち読み機能で読めるページの中で、勉強になったのはやはりエルモ囲いについてのページ。冒頭のプロローグで畠山七段は、△3一金型はクラシックな中飛車に対する△6四金戦法(参考図)との組み合わせで昔よく指されていたという背景を解説しています。
これを読んで、昔のプロ棋士は△3一金型の発想がなかったわけではなく、知った上で対四間飛車や対三間飛車で採用していなかったという過去を知り、人間の発想も負けていないとほっと胸をなでおろしました。
ただし△3一金型に加え右金まで5一に寄る発想があったかどうかはわかりません。当時の実戦譜には無かったようです。
三間飛車党も注目の三間飛車破り
古くて新しい居飛車穴熊戦法と、流行のエルモ囲い急戦。
三間飛車党としては、この三間対策本を読んで敵の狙い筋を知るとともに、棋書で解説されている手順の穴を見抜き、対策の対策を準備しておく必要があります。要注目です。
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