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振り飛車の天敵・居飛車穴熊
三間飛車のみならず、すべての振り飛車の天敵、「居飛車穴熊」。玉を隅(1一)に移動し、周りを金銀で固める、最強かつ最恐の囲いです。
一般に、居飛車穴熊は△4四歩を突いた△4四歩型穴熊(第1図)と、突かない△4三歩型穴熊(第2図)の2種類に分けられます。
△4四歩型穴熊では、4筋の歩を突いたスペースに第1図のように金を上がるのが基本です。一方で△4三歩型穴熊の完成形は、第2図のように2枚の金が3一・3二の位置にあり、玉の周りにぴったり張り付いた形です。したがって△4三歩型穴熊のほうが堅さで勝ります。
ただし最近ではここまでがっちり囲うケースは少なく、△5一金・△4一金型や、△3二金・△4一金(△6一金)型で戦いが始まることが多いようです。
対三間飛車では角筋に用心して△4四歩と突く必要性があまりないため、居飛車側はほぼ△4三歩型のほうを目指してきます。
さらには、△5四歩〜△5三銀すら省略して一直線に穴熊を目指す5筋不突き居飛車穴熊もあります(第3図)。
やや減少傾向だが
ところが、平成の終わりごろに居飛車穴熊に対する三間飛車側の新たな攻撃的戦術が次々に生まれ、そう易々とは居飛車穴熊に組めない時代になりました。
三間飛車側の新たな攻撃的戦術とは、三間飛車藤井システム(第4図)や、5筋不突き居飛車穴熊に対するトマホーク(第5図)などです。
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VS居飛車穴熊の基礎知識 三間飛車藤井システムとは
「三間飛車藤井システム」とは、居玉のまま駒組みを進める、△4三銀型ノーマル三間飛車の総合戦術です。もともとは居飛車穴熊対策として誕生しましたが、居飛車側の戦術の多様化にともない、対急戦、対左美濃などを含んだ総合的なシステムとして体系化されました。
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VS居飛車穴熊の基礎知識 トマホークとは
「トマホーク」とは、5筋の歩を突いてない居飛車穴熊を相手に、ノーマル三間飛車▲6七銀型から左銀と端桂の進出を軸に強襲を仕掛ける、超攻撃的戦法です。アマチュア棋界でタップダイスさんがトマホークを解説した電子書籍(「トマホーク解体新書」など)をリリースしたことが主なきっかけとなり、その名が広まりました。
そのため、5筋不突き穴熊は減少傾向にあり、また、角筋を用心して△4四歩と突いて△4四歩型穴熊やミレニアム囲い(トーチカ囲い)を目指す将棋が増加傾向にあると言えます。
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「ミレニアム囲い」とは、四間飛車藤井システムが猛威をふるった世紀末から新世紀をまたぐころ(西暦2000年ごろ)、居飛車穴熊に代わる堅い囲いが求められた時代に登場した、▲8九玉型が特徴の新たな囲いです。「トーチカ囲い」と呼ばれることもあります。
さらには、コンピュータ将棋の影響で左美濃やelmo囲い急戦の評価が高まり、居飛車穴熊の採用数が減っている側面もあります。
とはいえ、組めてしまえばやはり勝ちやすさはNo.1。今後も最も採用される囲いであり続けるでしょう。
銀冠穴熊とビッグ4
三間飛車対居飛車穴熊の戦いは、最近(注:2019年記)は囲いきる前に仕掛ける将棋が増えましたが、三間飛車側も振り飛車穴熊を目指す「相穴熊」の戦型の場合は、お互いに仕掛けず玉形の整備にとことん走り、 第6図(△2三銀型。銀冠穴熊とも呼ばれます)のようにさらに囲いが進展することもあります。
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VS居飛車穴熊の基礎知識 相穴熊とは
居飛車穴熊に堅さ負けしたくない、という人にとってうってつけでしょう。振り飛車側も同じく穴熊に組んでしまいます。振り飛車側の穴熊なので、「振り飛車穴熊」と呼びます。三間飛車との組み合わせの場合、「三間飛車穴熊」と呼んでもかまいません。そして、両者穴熊の戦型を「相穴熊」と呼びます(第1図)。
加えて、4四の銀が3三までくれば、第7図のように俗に「ビッグ4」と呼ばれる超堅陣となります。
手数がかかりすぎて、さすがにここまではなかなか組めませんが、居飛車穴熊の進展性の高さや優秀さを表しているといえるでしょう。
安定の居飛車穴熊
三間飛車の攻撃的戦術の登場や、トーチカ囲い、左美濃、elmo囲い急戦などの居飛車戦術の台頭により、やや採用数が減少傾向にある居飛車穴熊。
それでも堅さと勝ちやすさで上回る居飛車穴熊が、今後も最も採用される戦術であり続けるに違いありません。
振り飛車党は、この最強・最恐の囲いに対抗する手段を持っておかなくてはなりません。
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