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対左美濃の玉頭攻め戦術
「宮本流」とは、先手石田流▲7七角型 対 後手左美濃の戦いにおいて、左美濃に対して序盤早々玉頭攻めを狙っていく戦術です(第1図)。
▲3六歩+▲3七桂型からではなく、▲1七桂から▲2五桂を狙うのが大きな特徴です。また、▲2八玉型だと反動がきついので▲3九玉型で仕掛けていきます。
▲2五桂のあとは、後手の対応次第では、左銀の進出(5六→4五→3四)や飛車の右辺展開も絡めて更なる玉頭攻めを仕掛けます。
2014年11月に行われた第73期順位戦C級2組で、宮本広志五段が永瀬拓矢六段戦で初披露したことから、宮本流と呼ばれています(結果は見事宮本五段の勝ち)。
宮本流の特徴
宮本流の特徴をまとめると、以下の通りです。
POINT
- ▲3九玉型
- 端桂から▲2五桂
- 右辺への左銀の進出
- 飛車を横に活用
それぞれ説明していきます。
▲3九玉型
玉は▲2八玉型ではなく▲3九玉型で仕掛けていきます。▲2八玉型だと、玉頭から反撃を受けた時にむしろ弱い形となってしまうからです。
そのため、序盤で玉は4八→3八と囲うのではなく、▲3八銀(第2図)と上がってから4八→3九と囲います。
端桂から▲2五桂
一番の特徴はこれでしょう。▲3六歩+▲3七桂型からではなく、▲1七桂から▲2五桂を狙います。
メリットは▲3六歩の一手を省略できることです。これには以下のような効果があります。
POINT
- 一手早い仕掛けが可能になる
- 隙が少ない、低い美濃囲いを保てる
- 飛車を右辺に展開する余地を残せる
▲1七桂が早すぎると△1五歩から逆に仕掛けられてしまうため、▲2六歩〜▲2五歩(第3図)と先に2筋を突き捨ててから▲1五桂と跳ねます。
早い▲2五歩の突き捨てをとがめる術が後手にないため、成立しています。
右辺への左銀の進出
▲2五桂と跳ねたあとは、▲4五銀から▲3四銀がひとつの狙いです。△4四歩と突いていたとしても▲4五銀が成立するケースもあります(第4図。2015年順位戦、▲西川和宏五段 対 △阿部光瑠五段戦より。結果は西川五段の勝ち)。
もちろん、居飛車が玉頭銀を警戒してきた場合は6五から活用していくこともあります(第5図。前述の▲宮本五段ー△永瀬六段戦より)。いずれにせよ、左銀を攻めに活用していくのがポイントです。
飛車を横に活用
「端桂から▲2五桂」のところでも説明した通り、▲3六歩を保留しているため飛車を3六や2六に展開することができます。前述の▲西川五段ー△阿部五段戦では▲4六飛が現れました(第6図)。
また、文末の関連記事で紹介した2017年NHK杯、▲宮本五段 対 △三浦弘行九段戦では、▲3六飛が現れています(第7図)。
閉そく感を打ち破った宮本流
宮本新手は、将棋世界2016年6月号の付録「新手年鑑2015」の栄えあるトップバッターを飾っており、藤井猛九段が
2015年度1番の振り飛車の新手
と賞賛しています(宮本流が初めて登場したのは2014年11月でしたが、2015年度に流行しました)。
宮本五段自身、宮本新手について詳しく解説した「わかる!勝てる!!石田流」をリリースしています。
このほか、戸辺誠七段の「石田流を指しこなす本【持久戦と新しい動き】(最強将棋21)」のなかでも解説されており、戸辺誠七段は
行き詰まった感のあった石田流▲7七角型に、大きな風穴を開けた斬新な新手
と述べています。
積極的に狙っていきたい宮本流
宮本流誕生の結果、プロ棋界では居飛車側が早めの△2二玉を避けるようになりました。それほど影響力のある新手・新構想でした。
しかしアマチュア棋界ではそんな定跡はつゆ知らず、△2二玉と上がってくれることもあるでしょう。
石田流対左美濃は、居飛車にしっかり駒組みされると意外と左辺から仕掛けづらく、局面が硬直して打開するのが難しくなりがちです。
宮本流を覚えて、チャンスがあれば積極的に狙っていくことができれば、躍動感のある楽しい将棋が指せるのではないでしょうか。
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