VS急戦の基礎知識 箱入り娘とは

箱入り娘 VS急戦&右四間の基礎知識

玉を箱に入れたような囲い

「箱入り娘」とは、船囲いから5八の金を6八に寄った形の囲いです(第1図)。

【第1図は17手目▲6八金寄まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v玉 ・v金v銀v飛 ・ ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 金 ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=17 ▲6八金寄まで

船囲いから金寄りのたった一手で組むことができますが、玉が特別堅くなるわけでもなく一手の価値としては高くないので、採用数は多くありません。

飛車を5筋に転換するための事前の金寄りで箱入り娘になったり、天守閣美濃~端玉銀冠(参考1図)に組むにあたり▲8六歩の前に金を寄って一時的に箱入り娘になったり、といったケースが多いように思います。

【参考1図は31手目▲7八金上まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩 ・ ・v銀 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| ・ 銀 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七
| 玉 角 金 金 ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=31 ▲7八金上まで

余談ですが、「箱入り娘」の意味を知らず「鬼滅の刃」の禰豆子を想像してしまう方もいるかもしれないので、説明を載せておきます。

箱入り娘(はこいりむすめ)とはお嬢様の一類型で、極力他人に接触させずに(家の中などで)育てられた娘。

左銀を繰り出す船囲いが基本の昭和急戦

昭和時代から平成中期までの急戦といえば、左銀を6八や5七に進出する船囲い(参考2図。▲5七銀左型の例)が主流でした。

【参考2図は23手目▲5七銀左まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉 ・ ・v金v銀v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩 ・ ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
後手番
手数=23 ▲5七銀まで
▲5七銀左型急戦

VS急戦の基礎知識 ▲5七銀左型急戦とは

右辺や中央を手厚くして仕掛けていくのが狙いです。

箱入り娘だと右銀以外の金銀が左辺に偏りすぎ、右辺が軽すぎて攻めのパンチが弱いうえカウンターを食らいやすい、という評価だったのでしょう。

将棋AIも評価していない箱入り娘

平成後期から令和時代に入り、攻めの技術が上がったため、金銀3枚で玉をしっかり囲って攻めはシンプルに、という急戦が増えました。エルモ囲い(参考3図)や居飛車金無双(参考4図)が代表例です。

【参考3図は▲7九金まで】
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v王v銀 ・v金v銀v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 王 銀 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 金 ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=0 ▲7九金まで
【参考4図は▲6八金直まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v歩v銀v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 金 金 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=25 ▲6八金直まで
エルモ囲い

VS急戦の基礎知識 エルモ囲いとは

本

島ノートが解説する先手藤井システムVS後手居飛車急戦△8四飛+△7三桂+△6四銀型の変化

これらは将棋AI(コンピュータ将棋ソフト)が好んで指し始めた囲いです。

しかし一方で箱入り娘を高く評価してはいないようで、採用することは稀です。エルモ囲いや金無双のほうが堅いうえにバランスが良いと評価しているのでしょう。

実戦例:糸谷八段の箱入り娘VS西田五段のノーマル三間飛車

実戦例は少ないものの、裏を返せばたまに登場する箱入り娘。

最近では、2021年3月2日に行われた第69期王座戦二次予選、▲糸谷哲郎八段 対 △西田拓也五段戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)にて、西田五段のノーマル三間飛車に対し糸谷八段が箱入り娘を採用しました。

王座戦における棋譜利用ガイドラインに沿って利用させていただきます。

腰掛銀急戦VS四間振り直し

【第2図は26手目△5三銀まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金 ・v飛 ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v銀 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 歩 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 ・ 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=26 △5三銀まで

腰掛銀(▲5六銀型)に構えた第2図から、▲4五歩△4二飛▲6八金寄(第3図)と、糸谷八段は仕掛けたあとに右金を寄って箱入り娘に構える高等戦術を披露。

【第3図は29手目▲6八金寄まで】
後手の持駒:なし
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v玉v銀 ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v銀 ・v角v歩v歩|三
|v歩 ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 銀 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=29 ▲6八金まで

以下第4図のように進み、角と桂をきれいにさばいた西田五段が優勢になり、そのまま勝利しました。

【第4図は38手目△2五桂まで】
後手の持駒:角 歩二 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・v玉v銀 ・v金v飛 ・ ・ ・|二
| ・v歩v歩v歩v銀 ・ ・ ・v歩|三
|v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ 銀v歩 歩v桂 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ ・ 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 歩 
手数=38 △2五桂まで

参考:評価値グラフ

※棋譜解析エンジン / 評価関数:
 YaneuraOu NNUE 6.00 / 騨奎紫(たけし)

評価値が絶対ではありませんが、▲6八金寄とした29手目で評価値が互角から後手側に約300点ほど振れており、やはりソフトはこの箱入り娘をあまり高評価していないことがうかがえます。

箱から巣立つ日は来るか?

特別な名前が付けられながらも、プロ棋士たちからも、将棋AIからも高く評価されていない箱入り娘。

箱から巣立っていき、流行する日は来るでしょうか?

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