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中飛車→浮き飛車→石田流
「中飛車型石田流」とは、中飛車にしたあと5筋と3筋(先手番なら7筋)の位を取り、浮き飛車(△5四飛)を経て石田流に構える戦術です(第1図)。
三間飛車(△3二飛)から浮き飛車にするのが普通の石田流の組み方ですが、中飛車にしてから石田流に組むのが面白い構想です。5筋と3筋の位を取った、欲張りな布陣とも言えます。
特に通称はありませんが、本記事では「真・石田伝説」での呼び方に則り「中飛車型石田流」と呼ぶことにします。
後述の「久保&菅井の振り飛車研究」(久保利明九段と菅井竜也八段の共著)では「久保流5筋7筋位取り中飛車」と呼んでいます。
なお、四間飛車から浮き飛車(△4四飛)を経て石田流に構える構想もあり、こちらは「立石流四間飛車(立石式石田流)」と呼ばれていて非常に有名です。
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石田流の基礎知識 立石式石田流(立石流四間飛車)とは
「立石式石田流」は、アマ強豪・立石勝己氏が編み出した石田流構想です。一般的には「立石流四間飛車」と呼ばれていますが、「真・石田伝説 (マイナビ将棋文庫)」 にて、「立石式石田流」と紹介されています。本記事でも、この立石式石田流という名称を用います。
ゴキゲン中飛車から組むのが現代的
上述の「真・石田伝説」は、ゴキゲン中飛車が登場する前の1992年に発売された棋書です(その後文庫版が発売されています)。
この棋書で解説されている、中飛車型石田流に組むまでの手順と居飛車の対抗策は、現在の感覚とはやや異なるものであり参考になりにくいかもしれません。
2000年以降の定跡で中飛車型石田流に組める変化としては、後手ゴキゲン中飛車に対する先手▲7八金型からの変化、先手▲5八金右超急戦に後手が妥協した変化(第1図)、先手一直線穴熊からの変化(第2図)などがあります。
後手番ゴキゲン中飛車からの中飛車型石田流は、自分から積極的に狙っていける戦法というよりも、相手の駒組み次第でチャンスが生じた時に石田流に組み換える(または組み換えをチラつかせて相手を揺さぶり牽制する)戦法といえます。
先手番で積極的に狙う構想も
一方で、先手番ゴキゲン中飛車で積極的に中飛車型石田流を狙いにいくケースもあります(第3図)。
この場合、より模様の良い形を目指して▲7七角や▲7八金の省略を狙います(左金は7八に上がらずに済むなら上がらずに玉方に移動したほうが、玉が堅くなって終盤で活きてきます)。
「久保&菅井の振り飛車研究」のChapter⑤先手中飛車のTheme13「久保流5筋7筋位取り中飛車」にて、久保九段も菅井八段もこの先手番中飛車型石田流を高く評価しています。ただし隙なく組み上げるには苦労が付きまといます。
大きな舞台では、例えば2019年7月5日に行われた第32期竜王戦決勝トーナメント、▲久保利明九段 対 △藤井聡太七段戦(段位は当時)が一例です。
このときは玉が3八のときに7筋の位を取りました。
その後、2020年10月14日に行われた第68期王座戦五番勝負第5局、▲久保九段 対 △永瀬拓矢王座戦(段位は当時)では、玉が4八にいる段階で7筋の位を取る、より意欲的な構想を久保九段は披露しました(第4図)。
本譜は第4図から永瀬王座が早速△5四歩と反発。以下▲5四同歩△8八角成▲同角△4五角(第5図)と激しい戦いに。
結果は永瀬王座が勝利し、王座を防衛しました。
ゴキゲン中飛車党の戦術の選択肢のひとつに
無事に組み上げれば、後手の角を使いにくくしながら伸び伸びと戦える中飛車型石田流。
しかし組めるかどうかは相手の駒組み次第です。また、2つの位が「伸びすぎ」にならないように戦う必要があります。
ゴキゲン中飛車党が戦術の選択肢のひとつにすることはできますが、石田流党がこの転換を狙ってゴキゲン中飛車を採用するのは、いつも転換できるわけではないのでリスクが伴うと言えるでしょう。
関連棋書
久保 利明,菅井 竜也 マイナビ 2015-01-23
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