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WCSC31に「白ビール」と「二番絞り」で出場
今年(2021年)3月現在も将棋倶楽部24に元気に駐在している、振り飛車党ソフトのHefeweizenと居飛車党ソフトのJKishi18gou。
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Hefeweizen、振り飛車党に転向?して将棋倶楽部24に参戦中
2018年5月に行われた第28回コンピュータ世界コンピュータ将棋選手権(WCSC28)で優勝した、Hefeweizen。ドイツ南部の酵母入りビールで、濁った白ビールだそうです。このHefeweizenがWCSC28で優勝して以降、異なるスペックだそうですが将棋倶楽部24に参戦しています。
開発チームの方々は、5月に行われる第31回世界コンピュータ将棋選手権(WCSC31)には「白ビール」と「二番絞り」の2チームで出場されるようです。シンプルで直球なネーミングですね。
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第31回世界コンピュータ将棋選手権はオンライン開催
2021年5月3日から5日にかけて、第31回世界コンピュータ将棋選手権(WCSC31)が開催されます。COVID-19の猛威が続く今年は、はじめからオンラインでの開催予定となり、世界コンピュータ将棋オンライン大会ではなく第31回世界コンピュータ将棋選手権として行われます。
昨年5月に行われた世界コンピュータ将棋オンライン大会(WCSOC2020)では惜しくも準優勝だったHefeweizen-2020。
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WCSOC2020 水匠が優勝 HoneyWaffleは11位に
2020年5月3、4日に行われた世界コンピュータ将棋オンライン大会(WCSOC2020)にて、昨年の第29回世界コンピュータ将棋選手権(WCSC29)で第7位だった水匠が大きく順位を上げ、優勝しました。おめでとうございます。
もっとさかのぼると過去3年間で優勝→準優勝→準優勝と好成績を残し続けていますが、果たして今年はどうなるか、注目しています。
このほか、「やねうら王」「たぬきち」「elmo」「モルカー」「HoneyWaffle」など、常連開発者の方々の将棋AIソフトが目白押しです。詳しくは上述の参加チームのページを参照ください。
嬉野流
将棋倶楽部24でのHefeweizenの一局を紹介させていただきます。
見出しに書いた「嬉野流」とは、先手で初手▲7六歩、そして3手目▲7九角(参考1図)と指す奇襲戦法です。
嬉野流に対し後手が△8四歩~△8五歩と居飛車で挑むと、嬉野流らしい個性的な展開となります(飛車先交換に対し▲8八歩?!と控えて打つなど)。
一方で後手が飛車を振った場合は、角道を開けない対振り飛車の急戦策「鳥刺し戦法」に合流することが多くなります。
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Hefeweizenの三間飛車(7)鳥刺しに刺されないさばき
現在、第30回世界コンピュータ将棋選手権(World Computer Shogi Championship。以下WCSC)の参加者募集が行われています。参加申し込み期限は2020年1月31日(金)です。毎年ゴールデンウィークに行われているWCSC。今回の大きな特徴は、「ライブラリ制度の廃止」でしょう。
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Hefeweizenの実戦次の一手(2)石田流VS鳥刺し棒金
Hefeweizenの先手石田流に対し、後手が角道を開けずに引き角にする鳥刺し戦法を採用し、さらに右金を繰り出し棒金戦法と組み合わせてきた第1図。7五の地点への双方の駒の利きがすごいことになっています。
先に玉を7八に移動する通常の鳥刺しよりも、居玉のまま左銀を進出することもできる嬉野流からの鳥刺しのほうが、より素早く仕掛ける選択肢を持つメリットがあります。
一方振り飛車から見て、三間飛車の場合ははじめから3筋に飛車を構えているため、そのような「居玉超急戦鳥刺し戦法」に対応しやすい面があります。詳しくは「奇襲研究所 ~嬉野流編~」(天野貴元 元奨励会三段 著)などを参照ください。
嬉野流対策
これから紹介する一局(後手がHefeweizen)は、初手▲6八銀ではないですが、▲4八銀すら保留し、嬉野流を指す人が好みそうな超急戦鳥刺しです(第1図)。
第1図以下の指し手
△5一角
▲3四歩 △同 銀
▲3八飛 △8二玉(第2図)
先手が袖飛車に構えたのに対し、Hefeweizenはじっと△8二玉。落ち着いています。
2筋の攻めを絡められるのが怖く見えますが・・・
第2図以下の指し手
▲2四歩 △同 角
▲2二歩 △3一金?!
▲2一歩成 △同 金(第3図)
駒の損得と玉の堅さ
2筋の突き捨てからの▲2二歩。△同飛だと▲3四飛があります。
Hefeweizenの指し手は△3一金!そして▲2一歩成に△同金(第3図)。
桂損しましたが、2歩得(かつ先手は歩切れ)と玉の堅さの差で後手不満なしとHefeweizenは見ているようです。また、左金がそっぽに行かされましたが、先手からの速い攻めがないので体勢を立て直せるとも考えているのではないでしょうか。参考になる形勢判断です。
局面の均衡を保つ指し回しは他にもあったと思いますが、これでも一局というのが将棋の奥深いところです。
第3図以下の指し手
▲6八角 △1四歩
▲5五銀 △6八角成
▲同 金 △2七角
▲4四銀 △3七歩(第4図)
ゆっくりとした展開に持ち込む
先手としては、後手の左金がそっぽでかつ美濃囲いが完成していないうちに戦いを起こしたほうがよいでしょう。6八の位置で角交換できるよう▲6八角としてから▲5五銀~▲4四銀と動いていきます。
対するHefeweizenは、素直に角交換に応じたあと△2七角から△3七歩(第4図)。
以下▲3七同飛は△4九角成で一気に後手が大優勢(+1000点以上。以下▲3三歩には△3六歩~△3五歩)、また▲3七同桂は△3六歩があります。
そこで▲4八飛としました(ソフト的にも最善手)が、Hefeweizenは△4五角成(図略)としてゆっくりとした流れに持ち込むことに成功しました。
その後30手ほど進んだ局面が第5図。
形勢の均衡は保たれ続けています。人間、ソフト双方の構想がかみ合った、美しい序盤戦第2ラウンドといえるのではないでしょうか。
このあとの中終盤戦の戦いは割愛しますが、馬筋を活かしたHefeweizenの玉頭攻めが見事でした。人間の方のがんばりも素晴らしかったです。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 6.00 / 騨奎紫(たけし)
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