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BURNING BRIDGES、ファイナルを制す
2020年12月30日から31日にかけて行われた、局面指定のコンピュータ将棋大会・電竜戦TSEC(Top Shogi Engine Championship)ファイナル108番勝負にて、「BURNING BRIDGES」が「どうたぬき 極」(以下「どうたぬき」)を65勝43敗で下し、優勝しました。おめでとうございます。
ファイナルのすべての棋譜は、以下のWebページから観ることができます。
また、BURNING BRIDGESとどうたぬきを除く全チームで争われたB級ウルトラリーグでは、水匠が1位、 Grampusが2位となりました(第1回電竜戦を制したGCTはB級ウルトラリーグ4位)。おつかれさまでした。
B級ウルトラリーグのすべての棋譜は、以下のWebページから観ることができます。
電竜戦TSECの概要については、12月26日の予選後に書いた以下の記事を参照ください。
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2020年秋に開催された新たなコンピュータ将棋大会、第1回世界将棋AI 電竜戦は、ディープラーニング勢のひとつであるGCTの優勝で幕を閉じました。そしてこの冬、今度は局面指定のコンピュータ将棋大会である「電竜戦TSEC」が開催されています。
評価関数公開
BURNING BRIDGESの作者・frenzyさんが、さっそくBURNING BRIDGESの評価関数を公開しています(やねうら王 標準NNUE型)。
同梱されている「最初にお読みください.txt」を読むと、開発の背景などもわかります。
振り飛車評価関数「騨奎紫(たけし)」も
上のツイートの通り、振り飛車評価関数も同時に公開されています。
漢字の当て方が鬼滅の刃の「猗窩座(あかざ)」みたいですね。そして「TAKESHI」人気はあいかわらずです。
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2020年11月21~22日に、第1回「世界将棋AI 電竜戦」が行われます。例年秋にあったドワンゴ社主催の電王トーナメントが昨年で終了となり、代わりにCSA(コンピュータ将棋協会)の有志の方々によりオンライン開催されることになったのが本大会です。
こちらにも「最初にお読みください.txt」が同梱されています。一部引用させていただきます。振デレラを上回る、最強クラスの振り飛車評価関数となっているとのことです。
book無で振り飛車率が80%以上であり、振り飛車の王道ソフトのシンデレラより強い数値がでましたので公開に至りました。
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最強レベルの振り飛車評価関数・振デレラ
「振デレラ(shinderella」とは、WCSC29で5位、WCSOC2020で4位と常にトップクラスの成績を残しているコンピュータ将棋ソフト・Qhapaqの開発者、Ryoto Sawadaさんが2019年8月に公開した振り飛車評価関数です。
どうたぬき 極、水匠3の評価関数も
どうたぬきと水匠3の評価関数も公開されています。
追記:「水匠3改」公開
水匠3の公開から約半月後、改良された「水匠3改」が公開されています。
(追記ここまで)
ファイナルでの三間飛車党注目の局面
ファイナルおよびB級ウルトラリーグでは、54もの指定局面が用いられました。
三間飛車党注目の指定局面をピックアップしておきます。
14回戦 ▲ノーマル三間VS△居飛車穴熊
予選でもあった局面です。
BURNING BRIDGESが先後両方で勝利しました。
15回戦 石田流乱戦
石田流側が先手で、4手目△4二玉に5手目▲7八飛と突っ張ったときの定跡の、先後逆バージョンです。
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3手目▲7五歩に対する4手目△4二玉。先手石田流に対する定跡のひとつです。以下▲6六歩と突き、石田流▲7七角型VS左美濃に進むのが平成後半の基本定跡です。が、▲6六歩の代わりに▲7八飛とすると、△8八角成▲同銀△4五角▲5八玉△2七角成▲7四歩△同歩▲5五角△3三桂▲7四飛と、大駒が乱舞する乱戦定跡に進みます。
本指定局面では居飛車が先手で、初手から▲7六歩△3四歩▲2六歩△3五歩の進行なので、居飛車の飛車先の歩が突いてあります。
第2図以下▲3七歩(▲1八飛は△2六飛があるので損)△7六飛が定跡ですが、ファイナルでは先後入れ替えたいずれでも▲6五馬△2八角成▲同銀△3五飛(第3図)と進行しました。
定跡では△3五飛のところは△3八飛打として石田流優勢とされていますが、△3八飛打の局面は個人的にも難しい形勢と考えていた(実戦で同局面から石田流側を持ってレーティング下位の相手に負けたことあり)のでさほど驚きはありません。
第3図以下、先後入れ替えたいずれでも居飛車が勝利しているのは興味深いところです。
25回戦 ▲中飛車VS△三間飛車
先手は中飛車から向かい飛車に振り直しています。
いずれも先手が勝利しました。
26回戦 ▲ノーマル三間VS△2二玉型左美濃
BURNING BRIDGESが先後両方で勝利しました。
34回戦 初手▲7八飛からの相三間飛車
初手▲7八飛からの相三間飛車。先手から角交換し向かい飛車に振り直しています。
いずれも後手が勝利しました。
36回戦 ▲ノーマル三間VS△天守閣美濃
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どうたぬきが先手のときは千日手、BURNING BRIDESが先手のときは先手(三間飛車)が快勝しました。
51回戦 王道の相三間飛車
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BURNING BRIDGESが先後両方で勝利しました。
第2回TSEC開催はあるか
将棋界でおそらく初の試みとなった、局面指定のコンピュータ将棋大会・電竜戦TSEC。
個人的には、定跡局面の形勢の優越を計る上でとても有益だと感じました。
第2回の開催にも期待したいと思います(開催時期は変えたほうがいいかも?)。
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コメント
コメント一覧 (2件)
2021年1月18日に水匠3改が公開されました!
検討をするとき、とても参考になるソフトだと思うので、コメントしておきます。
導入方法 https://migigyoku.com/?p=4145
naturalさん
コメントありがとうございました。
後ほど追記したいと思います。