盛り上がった2020年夏の将棋界
2020年夏、藤井聡太七段が棋聖獲得、そして王位獲得で二冠になったことにより、大いに注目された将棋界。第3回AbemaTVトーナメントも、将棋ファンの間で大変盛り上がりました。
これらに加えて私が注目していたのが、三間飛車党・山本博志四段のNHK杯とオンライン講座です。
棋譜は、NHK杯のWebサイトで無料で観ることができます。
近藤四段戦の自戦記
2020年7月5日に放送された第70回NHK杯将棋トーナメント、近藤誠也七段戦で勝利した山本四段。
山本四段による本局の自戦記が、NHK将棋講座テキスト2020年9月号に掲載されています。
Twitterやnoteでの軽妙なスタイルとは異なる、いわゆる自戦記らしい真剣なスタイルで書かれています。
対戦相手の近藤七段のことや、対局内容の解説はもちろんですが、最も印象に残ったのは最後に書かれている「三間飛車を指す理由について」です。
過去に私は「三間飛車党・山本博志四段、相掛かりを採用 順位戦」にて、
「予告三間飛車」だけで勝っていけるほど、プロ棋界は甘い世界ではない
と、これだけ切り取って読むとなんとも不遜なことを書いているのですが(その実態は、ファンとしては三間飛車を指してほしいけれども、ファンの想いに縛られて三間飛車だけを採用しているのだとしたら、そんなことはせずに勝つことを考えて戦法を選んでほしい、という意図です)、山本四段の述べる「三間飛車を指す理由」は、それに対するアンサーと言える内容になっており、さすが勝負師、という一面を披露してくれています。
中盤の辛抱と終盤の詰むや詰まざるや
そして、近藤七段戦の次に迎えた屋敷伸之九段戦が、2020年8月23日に放送されました。
この一局では、屋敷九段のエルモ囲い急戦に対し、ノーマル三間飛車から一風変わった手順で中飛車に振り直す意欲的な構想を披露。
その後、山本四段の積極的な仕掛けに対する屋敷九段の巧みな応対で苦しくなったものの、暴発せずに馬を自陣に引き付けて粘り強く指す手順には、終盤戦と同様感心させられました。
そして追い込みに追い込んで迎えた最終盤の「詰むや詰まざるや」の局面では、録画したものを1.5倍速(音声あり)で観ていた私に解けるはずもなく(笑)、ただただ手に汗握る攻防に圧倒されました。山本四段にとって、本当に惜しい一局でした。
スペシャリストが分かりやすく教えます!プロの三間飛車の現在地
さらにもうひとつ、2020年8月21日に山本四段のオンライン講座「スペシャリストが分かりやすく教えます!プロの三間飛車の現在地」が開催され、参加してきました。
8/21(金) 山本博志四段 オンライン講座「スペシャリストが分かりやすく教えます!プロの三間飛車の現在地」
<講師コメント>
「プロ間で三間飛車が増えていますが、どういった駆け引きがなされているのか解説される事は中々ありませんでした。
級位者の方にも分かりやすく、有段以上の方にも勉強になるような内容にしたいと思います。」
オンラインの良し悪しの議題は仕事でもたびたび議論されており、食傷気味なのでここでは触れませんが、オンラインでないとこの講座には参加できなかったので、その点は間違いなくメリットです。
三間飛車物語
この講座の後に配布されたのが、「三間飛車物語」と棋譜集でした。
明日締め切りです!!
お客さん少ないと、悲しみます。今執筆中ですが、「三間飛車物語」という文章(ここ12,3年の三間飛車の変遷を私の目線から振り返る)を書いて、受講者の方にメール等でお送りする予定です。講座の内容もそういう内容ですので、復習用でもあります。よろしくお願いします! https://t.co/F7TgFTwdXj
— 山本 博志 (@yamahiro3ken) August 19, 2020
とりわけ私にとっての収穫は、最近よく指されている最新形の特徴とそれに至る経緯がわかったこと。言われてみればそういう特徴があったんですね。
今後の居飛車対三間飛車の観戦がより一層楽しめるようになったのではないかと感じています。
スペシャリスト達が築いていく次なる物語
山本四段をはじめ、石川優太四段や古森悠太五段など、三間飛車を主力として採用する若手棋士が複数名いる現在のプロ棋界。
来月(2020年9月)はじまる第68期王座戦五番勝負、永瀬拓矢王座(叡王) 対 久保利明九段にて、久保九段も三間飛車を織り交ぜてくることでしょう。
夏から秋にかけて、スペシャリスト達が築いていく三間飛車の次なる物語にも引き続き注目していきたいと思います。
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