王将戦挑戦者決定リーグ、進行中
藤井聡太七段以外は全員順位戦A級以上、という大注目の第69期王将戦挑戦者決定リーグが現在進行中です。
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久保利明九段のマッスルトマホーク
リーグ戦メンバーのうち唯一の振り飛車党が、言わずと知れた久保利明九段です。
9/18に行われた王将リーグの開幕局、▲久保九段 対 △豊島将之名人戦で、先手・久保九段は角道を止めるノーマル三間飛車を採用。
その後、居飛車穴熊を目指す豊島名人に対し、久保九段は玉の移動はそこそこに、2枚の銀を前線に繰り出していきました。
独創的な新構想、と思いきや、これは「さわやか流疾風三間飛車」(杉本和陽四段 著)や将棋世界2019年9月号で解説されている戦術で、将棋世界2019年9月号にて三間飛車党・山本博志四段が「マッスルトマホーク」と名付けています。
この大舞台でマッスルトマホークが現れるとは驚きです。
AI巧者・豊島名人の研究範囲か
本譜はこの後、左香をすでに上がっている形でありながら豊島名人は居飛車穴熊には組まず、左美濃へ。
藤井システムなどの猛攻を避けるため居飛車穴熊をあきらめる場合、昔は玉を2二から単に3二に戻して船囲いにするのが普通でしたが、今は左銀立ちを入れてから玉を戻して左美濃にするのが面白いところです。
一見妥協したように見えますが、おそらく豊島名人の研究範囲でしょう。そもそも事前に5筋の歩を突いておけばトマホークを避けられたところを、あえて突かずに駒組みを進めている時点で、誘いの隙といえます。
豊島名人は以前にも佐藤和俊六段とのNHK杯戦で、佐藤和六段の三間飛車藤井システムに対し居飛車穴熊に組むと見せかけて左美濃から銀冠に囲う戦術を披露しています。
穴熊を高評価しないことで知られるコンピュータ将棋ソフトに本局面を解析させると、やはり穴熊には向かわず左美濃に組み換えるのかもしれません。本譜の進行は、ソフトを活用し研究する豊島名人にとっては、異筋でもなんでもなく、自然な構想のうちの1つなのでしょう。
ちなみにこの組み換えは、ソフト研究に比較的距離を置いているであろう菅井竜也七段らも指しており、豊島名人の専売特許というわけではありませんのであしからず。
豊島名人、王将リーグ開幕局を制す
本譜はこの後、中盤のねじり合いで優位に立った豊島名人がそのまま押し切って危なげなく勝利。王将リーグの開幕局を制しました。
10月11日時点で、まだ対局のない羽生善治九段を除くと早くも全勝者がいなくなった王将リーグ。今後の戦いからも目が離せません。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 4.88 / 振電改
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