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西田拓也五段の石田流組み換え 対 伊藤匠五段の居飛車持久戦

奇襲戦法の基礎知識 早石田とは

早石田
目次

玉を上がってから▲7四歩

「早石田」(はやいしだ)とは、石田流のオープニングから▲4八玉と上がった直後に▲7四歩(第1図)と速攻を仕掛けていく戦法です。

【第1図は9手目▲7四歩まで】
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v王v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ 王 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=9 ▲7四歩まで

意外性、決まったときの破壊力、そして相手に正しく応対されると不利になるという特徴から、奇襲戦法に分類されています。

なお、▲7四歩と仕掛けず▲3八玉と無難に玉を囲いにいけば、「升田式石田流」となります(下記記事参照)。

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石田流の基礎知識 升田式石田流とは 「升田式石田流」は、その名の通り升田幸三実力制第4代名人が編み出した石田流の布陣です。升田式石田流の駒組みの特徴として、下記が挙げられます。「角交換型」「▲6六歩はできるだけ保留」「▲7八金型」

早石田の成功例

▲7四歩に対し、普通に△同歩と取ると先手良しになります。

一例は以下の通り。

【再掲載第1図は▲7四歩まで】
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v王v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ 王 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=9 ▲7四歩まで

第1図以下の指し手
      △7四同歩
▲2二角成 △同 銀
▲5五角  △7三銀
▲7四飛  (第2図)

【第2図は15手目▲7四飛まで】
後手の持駒:角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v王v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|二
|v歩 ・v銀v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 王 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=15 ▲7四飛まで

第2図以下、△7四同銀だと▲8二角成でわかりやすく先手良し。

△6四角が最善手で、以下▲7三飛成△5五角!?▲8二龍△同角▲8三飛(第3図)が定跡ですが、この局面は先手やや良しと言われています。

【第3図は21手目▲8三飛まで】
後手の持駒:飛 角 歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v王v金 ・v桂v香|一
| ・v角 ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|二
|v歩 飛 ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 王 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀 歩 
手数=21 ▲8三飛まで

トリッキーな端角の変化も

ちなみに、△6四角に対し▲同飛△同銀▲1五角(参考1図)というトリッキーな変化もあり、いい勝負とされています。

【参考1図は19手目▲1五角まで】
後手の持駒:飛 歩 
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v王v金 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v銀 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・v銀 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ 角 ・ ・ ・ 角|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ ・ ・ ・ 王 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=19 ▲1五角まで

参考1図以下、△3三桂(銀)には▲同角左成から三枚替え。△4二金や△5二玉のように飛車の利きをさえぎってしまう手には▲2二角成があるので、△2四飛または△3三飛と打つことになります。

単に▲7四同飛でも先手優勢

また、戻って第1図以下△7四同歩に対し、単に▲同飛(参考2図)でも先手良しとされています。

【参考2図は11手目▲7四同飛まで】
後手の持駒:歩 
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v王v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 飛 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 ・ ・ ・ 王 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=11 ▲7四同飛まで

以下△7三歩▲7六飛で一歩を手持ちにして先手満足です。このあと△8八角成▲同銀△4五角には▲5五角(▲1一角成が受からない)△6七角成▲7九飛(参考3図)などがあります。

【参考3図は19手目▲7九飛まで】
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・ ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ 角 ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・v馬 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 銀 ・ ・ ・ 玉 ・ ・ ・|八
| 香 桂 飛 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩 
手数=19 ▲7九飛まで

居飛車の早石田対策

それでは第1図での後手の正しい受け方は何かというと、△7二金(第4図)です。

【第4図は10手目△7二金まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v王v金v銀v桂v香|一
| ・v飛v金v銀 ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ 王 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=10 △7二金まで

このように金銀を並べて手堅くがっちり受け止めれば、先手からは暴れようがない、というのが後手の主張です。

第4図以下▲7三歩成には△同銀▲7四歩△6四銀(第5図)で問題ありません。

【第5図は14手目△6四銀まで】
後手の持駒:歩 
  9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v玉v金v銀v桂v香|一
| ・v飛v金 ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・ ・v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩v銀 ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ 玉 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=14 △6四銀まで

進化する定跡

以上のように、「早石田の仕掛けは無理筋」というのが通説となっていましたが、2009年2月、第34期棋王戦5番勝負第2局の大舞台で、佐藤康光棋王(当時)に挑戦した久保利明八段(当時)が第4図で新手を披露しました。

それが「久保流急戦(久保新手▲7五飛)」です。

この戦術の指し手と狙いについては、下記記事を参照ください。

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石田流の基礎知識 久保流急戦(久保新手▲7五飛)とは 久保流急戦とは、2009年に行われた第34期棋王戦五番勝負第2局、▲久保利明八段 対 △佐藤康光棋王(段位は当時)戦で、久保八段が披露した新手▲7五飛、およびその後の一連の構想です。この新手で、久保八段は第36回升田幸三賞を受賞しました。

関連棋書

久保の石田流

久保 利明 毎日コミュニケーションズ 2011-03-24

早石田だけでなく、久保流急戦(久保新手▲7五歩)や鈴木流急戦(新・石田流)、対持久戦などの解説も載っている久保利明九段の著書です。

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「久保の石田流」ひとくちレビュー 2018年から2019年にかけて、「さわやか流疾風三間飛車」、「三間飛車戦記 2008~2019」、「必勝 三間飛車破り」など、三間飛車関連の棋書が多数リリースされました。一方で、2020年は四間飛車関連の棋書のリリースが目立っています。
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これで万全!奇襲破り事典

早石田だけでなく久保流急戦や鬼殺しなど、数多くの奇襲戦法の解説が載っている一冊です。

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「これで万全!奇襲破り事典」ひとくちレビュー 「これで万全! 奇襲破り事典」のひとくちレビューをお送りします。本書では、奇襲戦法ごとにまず成功例を解説し、続いてその対策として、「相手の狙いを外す」、「がっちり受け止める」、「ハメ手の裏をかく」の3通りもの戦い方を解説しています。

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