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西田拓也五段の石田流組み換え 対 伊藤匠五段の居飛車持久戦

「久保の石田流」ひとくちレビュー

本
目次

四間飛車関連棋書、リリースラッシュ

2018年から2019年にかけて、「さわやか流疾風三間飛車」(杉本和陽四段 著)、「三間飛車戦記 2008~2019」(小倉久史七段と山本博志四段の共著)、「必勝 三間飛車破り」(畠山鎮八段 著)など、三間飛車関連の棋書が多数リリースされました。

一方で、2020年は四間飛車関連の棋書のリリースが目立っています。「将棋革命!振り飛車ミレニアム戦法」(村田顕弘六段 著)、「久保利明の四間飛車」(久保利明九段 著)、「耀龍四間飛車」(大橋貴洸六段 著)などです。6月に発売される藤井猛九段の全局集も実質四間飛車本と言えるでしょう。

久保利明二冠の石田流本

上述の四間飛車本の中で、注目したのが「久保利明の四間飛車」。そのものズバリのタイトルで、久保九段の力の入りようが伝わってくるようです。

久保九段は過去にもこのように戦法名ズバリの棋書を2冊リリースしています。「久保の石田流」「久保の中飛車」です。

本記事では、「久保の石田流」のひとくちレビューをお送りします。

久保 利明 (著) 発売日:2011/3/24

「久保利明の四間飛車」同様、非常にシブい表紙デザインです。

「久保の石田流」は、久保九段が棋王・王将の二冠だった2011年3月に発売された棋書です。久保九段は2010年ごろこのダブルタイトルを複数年保持しており、それらのタイトル戦の先手番で石田流を多数採用していたので、解説に説得力があります。

目次と概要

目次は以下の通りです。

目次

第1章 石田流の入り口
第2章 升田式石田流の基礎知識
第3章 早石田定跡
第4章 鈴木流急戦
第5章 久保流急戦
第6章 その他の石田流
後手の棒金戦法
後手の左美濃
後手の居飛車穴熊
4手目△5四歩
第7章 後手の石田流
後手の石田流
2手目△3二飛戦法
第8章 最新の石田流
第9章 実戦編
参考棋譜

久保九段の棋書なので第5章の久保流急戦がメインと言えますが、それ以外にも棒金対策、左美濃対策、居飛車穴熊対策から2手目△3二飛戦法まで、幅広く解説されています。

相振り飛車を除く全戦型が網羅されていると言っても過言ではないでしょう。ただしその分、章ごとのページ数はやや少なめです。

第9章の実戦編、参考棋譜では、羽生善治九段、渡辺明三冠、佐藤康光九段ら、そうそうたる棋士と石田流で戦った自戦譜が解説されています。

久保流急戦(久保新手▲7五飛)

本書の特徴は、なんといっても第5章の久保流急戦(第1図。「久保新手▲7五飛」とも呼ばれています)の解説でしょう。

【第1図は▲7五飛まで】
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・v王v金v銀v桂v香|一
| ・v飛v金v銀 ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 ・ ・ ・ 王 ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=0 ▲7五飛まで
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石田流の基礎知識 久保流急戦(久保新手▲7五飛)とは 久保流急戦とは、2009年に行われた第34期棋王戦五番勝負第2局、▲久保利明八段 対 △佐藤康光棋王(段位は当時)戦で、久保八段が披露した新手▲7五飛、およびその後の一連の構想です。この新手で、久保八段は第36回升田幸三賞を受賞しました。

第3章の早石田、第4章の鈴木流急戦(新・石田流)の手筋や構想をバックボーンにしながらも、久保流急戦の構想はより自由奔放で過激と言えます。

この新手・新構想で、久保八段は第36回升田幸三賞を受賞しました。

石田流側を持ってこの久保流急戦を解説する棋書は、2020年時点でおそらく本書だけだと思います。

久保流急戦対策は、「これで万全!奇襲破り事典」に載っています。

さらなる乱戦石田流も

【第2図は△8五歩まで】
後手の持駒:なし
 9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v王v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 金 王 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=0 △8五歩まで

また、第8章の「最新の石田流」では、第2図から

  1. ▲7四歩△同歩▲4八玉
  2. ▲7四歩△同歩▲5八玉
  3. ▲7六飛

の変化が解説されています(▲4八玉〜▲7六飛の変化は解説されていません)。

いずれも大乱戦の将棋となります。知らなきゃ指せない、いや、この本を読んでいても怖くてなかなか指せるものではありません。

復活が期待される石田流

最近(平成末期〜令和初期)は居飛車党が後手で2手目に△8四歩と突くケースが増えたり、石田流対策が進んだりしたからか(エルモ囲い右四間飛車も現れました)、プロ棋戦では2010年ごろに比べて石田流の登場機会が激減しています。

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とはいえ、そもそも石田流は昭和40年代に升田式石田流が流行したあと、数十年の時を経て2000年代に入って再流行した戦法です。

再度流行することを願って、長い目で見守っていきたいと思います。

再度流行した際には、久保九段や菅井竜也八段らが新たな石田流解説書をリリースしてくれるのではないでしょうか。

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