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下町出身・小倉久史七段の三間飛車の流儀
「下町流三間飛車」とは、小倉久史七段が自身の三間飛車の流儀に対して名付けた愛称です。
後述する小倉七段の棋書「下町流三間飛車―居飛穴攻略の新研究」のまえがきに命名の由来が載っており、いわく「江東区大島(下町)に住み、ここで将棋教室を開いていて、愛着があるから」だそうです。
特筆すべき対居飛穴玉頭銀戦法
この「下町流三間飛車―居飛穴攻略の新研究」では、対居飛穴玉頭銀(第1図)、▲5八金型石田流、▲7八金型石田流(第2図)、相穴熊(第3図。先手番相穴熊だけでなく後手番相穴熊の解説もあり)といった戦法が解説されています。
この中で、対居飛穴玉頭銀が最も独創的で勢いがあって粋(いき)な雰囲気が出ており、下町流三間飛車と呼ぶにふさわしい戦法なのではないかと思います。
ここでは、この玉頭銀の手順の一例を紹介します。
この作戦は、後手の玉、5筋の歩、そして右銀の位置の条件がそろったときに可能となります。詳しくは本書を参照ください。第1図は、その条件がそろったケースの一例に当たります。
飛角銀の強襲
第1図以下の展開の一例は以下の通りです。
再掲載第1図以下の指し手
△5五歩
▲4五銀 △8四飛
▲5八飛 △1一玉
▲5六歩 △同 歩
▲同 飛 (第4図)
▲4五銀と上がった後に、▲5八飛から▲5六歩と銀が通り過ぎたところの歩を突くのが面白い手順です。狙いは飛車を5筋から縦横無尽に活用することです。
第4図以下、角のにらみと、飛車と銀による玉頭攻めを組み合わせて穴熊の攻略を狙っていくのが、本戦法の骨子となります。
下町流の棋書
小倉七段は、この愛称を用いて「下町流三間飛車―居飛穴攻略の新研究」という戦術書をリリースしています。
小倉 久史 毎日コミュニケーションズ 2006-04
2018年2月時点で13500円!というプレミア価格が付いており、手を出しにくいのが残念なところ。
幸い私は発売当時(2006年)に初版を購入していて今でも手元にあります。
出版社様には、「コーヤン流三間飛車の極意」のように電子書籍化して正常価格で再販して欲しいものです。
または、同じく小倉七段と弟子の山本博志奨励会三段による共著「三間飛車新時代」と合本してセット割引価格で電子書籍販売しても面白いのではないでしょうか。
2019年追記:復刊された下町流
うれしいことに、本書がプレミアムブックス版として復刊されました。
プレミアムブックス版のためやや高めですが、手の届く安定した価格で購入できるようになりました。Kindle版もあります。
復刊本の見どころは、2018年10月に四段に昇段した、小倉七段の弟子でもある生粋の三間飛車党・山本博志四段により加筆されているところです。
(追記ここまで)
▲6七銀型のオプションのひとつに
最近▲6七銀型(後手番の場合△4三銀型)の三間飛車が流行しており、この下町流玉頭銀は▲6七銀型から派生する有力なオプション(選択肢)のうちのひとつです。
飛角銀による比較的珍しい穴熊攻略の手筋を学ぶこともできます。
もっと有名になって良い、面白くて優秀な構想だと思います。
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