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準決勝
棋聖戦における棋譜利用ガイドラインに沿って利用させていただきます。
2019年4月19日に行われた第90期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)決勝トーナメント準決勝、▲久保利明九段 対 △郷田真隆九段戦。
棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
本局に勝てば挑戦者決定戦進出となる、棋聖戦決勝トーナメント準決勝。先手番となった久保九段が採用した作戦は、三間飛車藤井システムでした(第1図)。
三間飛車藤井システムは、居玉のまま端歩と玉頭攻めの構えを優先する布陣です。
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「三間飛車藤井システム」とは、居玉のまま駒組みを進める、△4三銀型ノーマル三間飛車の総合戦術です。もともとは居飛車穴熊対策として誕生しましたが、居飛車側の戦術の多様化にともない、対急戦、対左美濃などを含んだ総合的なシステムとして体系化されました。
2019年2月に行われた第68期王将戦七番勝負第4局、▲久保王将 対 △渡辺明棋王戦(肩書はいずれも当時)では、似たような局面から後手・渡辺棋王がミレニアム囲いを採用。本局を含む4連勝で王将を奪取し二冠となったのは記憶に新しいところです。
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渡辺棋王、久保王将の三間飛車藤井システムを破り二冠に 王将戦
第68期王将戦七番勝負第4局(二日制)、▲久保利明王将 対 △渡辺明棋王戦の2日目。封じ手は、大本命の△6五桂。狙い通り右桂が躍進し、7七と5七に脅威を与えるとともに、後手の角が9五に出られるようになったのが大きく、後手優勢です。
序盤の駆け引きと中盤の手厚く冷静な指し回し
その後第2図に進行。
後手の角上がりの揺さぶりに対し、飛車を4筋に回って受けると今度は角を引かれて8筋を飛車で守らなくてはならなくなり、再度2筋に角を上がられて・・・となると千日手コースに入ってしまい、先手にとっては面白くありません。よって▲3七銀と上がりました。
その後、後手は堂々と玉を2筋に移動。一方の先手は角道を開けて四間飛車に振り直した後、桂を端に跳ねて玉頭攻めの姿勢を貫きました。
ここで△4五歩(第3図)と居飛車側から突くのが習いある手筋です。
角交換を迫り、相殺してしまったほうが居飛車は楽になります。先手の玉形が中途半端な一方、後手の金銀が綺麗に密集しているのも強みです。
以下、久保九段が攻め続けるも郷田九段が手厚く冷静な指し回しでそれを受けとめ、優勢に。終盤、久保九段の攻めが完全に息切れしたところで郷田九段が一気の寄せを見せ、1時間の持ち時間を残して快勝しました。
渡辺明二冠が挑戦者に
もうひとつの準決勝は▲菅井竜也七段 対 △渡辺明二冠戦で、渡辺二冠の勝利。振り飛車ファンにとっては残念な準決勝2局となりました。
そして挑戦者決定戦では渡辺二冠が郷田九段に勝利し、挑戦権を獲得しました。
現在名人戦で3連勝中と三冠が目前の豊島将之王位・棋聖と、渡辺棋王・王将の戦いとなった棋聖戦五番勝負。現在の棋界最強を決めるタイトル戦と言っても過言ではないでしょう。
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