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孤高のコーヤン流
2019年4月17日に行われた第45期棋王戦予選、▲澤田真吾六段 対 △中田功八段戦。棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
中田八段といえば、今年1月に矢倉規広七段の居飛車穴熊をコーヤン流で撃破し、八段に昇段したのが記憶に新しいところです。
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中田功七段、コーヤン流で居飛車穴熊を撃破し八段昇段 棋王戦
2019年1月21日に、第45期棋王戦予選、▲矢倉規広七段 対 △中田功七段戦が行われました。中田功七段は、言わずと知れたベテラン振り飛車党。とりわけ「コーヤン流三間飛車の極意」でおなじみの、コーヤン流三間飛車(中田功XP)の使い手です。
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VS居飛車穴熊の基礎知識 コーヤン流とは
「コーヤン流」とは、ノーマル三間飛車の伝説の棋書「コーヤン流三間飛車の極意」(中田功七段 著)によってその名が爆発的に普及した、主に対居飛車穴熊の戦術です。「島ノート 振り飛車編」(島朗九段 著)の命名で「中田功XP」とも呼ばれています。
本局で先手番となった若手強豪・澤田六段は、居飛車穴熊を採用。対する中田八段は、代名詞であるコーヤン流をブレることなく採用しました(第1図)。
この局面の前例25局で、後手番を持っているのはすべて中田八段。プロ棋界で孤高の存在であることがよくわかります。
藤井聡太四段の新手△5五歩
第1図から少し進んで第2図。
先後や形は違えど、コーヤン流VS居飛車穴熊で▲5五歩から仕掛けていくのは、2018年1月に行われた第31期竜王戦5組、▲中田功七段 対 △藤井聡太四段(段位はいずれも当時)戦での藤井四段の新手・新構想です。
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藤井聡太四段、新手△5五歩で中田功七段のコーヤン流に快勝
第31期竜王戦5組ランキング戦、中田功七段 対 藤井聡太四段戦は、後手・藤井四段の勝利。前回の対戦では先手・藤井四段の居飛車穴熊 対 後手・中田七段のコーヤン流三間飛車でしたが、今回も先後を変えてコーヤン流 対 居飛穴となりました。
結果的に藤井四段が勝利したこの一局のあと、遠山雄亮六段、佐藤秀司七段、及川拓馬六段らがこの▲5五歩を採用し、中田八段はその都度工夫を見せるも苦杯をなめてきました(前述の矢倉七段戦では矢倉七段は別の仕掛けを採用)。
新手△6二銀
そして迎えた本局。中田八段が用意した新手は、△6二銀!でした(第3図)。
タダで一歩を差し出すような▲5五歩に対し、取らずに逆に「どうぞ取ってください」と言わんばかりの驚異の銀引き。▲5四歩の取り込みに対し事前に当たりを避けた高等戦術です。
もちろんこれで三間飛車側が良くなったと言い切れるわけではありませんが、これぞコーヤン流という気持ちいい手順が続きます。第3図以下、▲2四歩△同歩▲5四歩△8五桂!▲5七銀△9六歩▲同歩△9七歩と進行しました(第4図)。
中田八段、快勝
第4図以下激戦が続きましたが、終盤澤田六段に錯覚があったようで、形勢が急激に傾き104手で中田八段の快勝となりました。詳しくは将棋連盟ライブ中継アプリでご覧ください。
棋王戦予選の次戦の相手は、同じく若手強豪の大橋貴洸四段。プロ棋界でのelmo囲い急戦の先駆者とも言える大橋四段のこと(関連記事参照)。
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安用寺六段、ノーマル三間で阿部健七段のelmo囲い急戦に快勝 順位戦
今年度、NHK杯戦で八代弥六段に角交換四間飛車で勝利し、続く広瀬章人八段にトマホークで奮闘(惜しくも敗戦)したり、王位戦予選で斎藤慎太郎七段(当時。現王座)に角交換四間飛車で勝利したりと、個人的に注目している安用寺孝介六段。そんな安用寺六段が、今度は順位戦C級1組にて、ノーマル三間飛車で強豪・阿部健治郎七段のelmo囲い急戦に快勝と、また魅せてくれました。
もしかしたら中田八段のノーマル三間飛車 VS 大橋四段のelmo囲い急戦が見られるかもしれません。こちらも要注目です。
師弟 中田功八段×佐藤天彦名人
なお、最新号である将棋世界2019年5月号の巻頭特集は、「師弟 Vol.2 ー弟子が叶えた亡き師への恩返しー 中田功八段×佐藤天彦名人」。
中田八段の師匠である大山康晴十五世名人とのエピソードも交えた、読み応えのある記事となっています。中田八段ファン、そして今まさに名人戦七番勝負を戦っている佐藤名人ファンは必見です。
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