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ついに藤井九段も初手▲7八飛に参戦
2019年3月6日に行われた第67期王座戦二次予選、▲藤井猛九段 対 △松尾歩八段戦。
棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
本局で先手番となった藤井九段の初手は、▲7八飛(第1図)でした。
藤井九段は、3手目▲7五歩からの石田流三間飛車は過去に採用済みで、最近では例えば2018年5月24日に行われた第66期王座戦、▲藤井九段 対 △久保利明王将(当時)戦などがあります(参考1図)。
しかし、初手▲7八飛戦法(別名「猫だまし戦法」)を採用したのは本局が初めてです。
「振り飛車の新機軸!初手▲7八飛戦法」(門倉啓太五段 著)の発売が3月22日にせまる中、このタイミングで初手▲7八飛を初採用したのは、単に棋書発売にあやかったわけではなく、藤井九段の中でこの戦法で互角以上に戦えるという目処が立ったからなのでしょう。
事実、後述の通り驚愕の構想を用意していました。
ちなみに、面白いことにすぐ隣で指されていた同じく第67期王座戦二次予選、▲鈴木大介九段 対 △郷田真隆九段戦でも、鈴木九段が初手▲7八飛を採用していました。
鈴木九段は郷田九段と2018年にも2局、初手▲7八飛からの角交換三間飛車で戦っており、1勝1敗でした。毎回この戦型になるのは、背景に男と男の意地があるのかもしれません。
驚愕の▲7七同銀
藤井九段戦、鈴木九段戦ともに、角道オープンのまま駒組みを進めていきます。違いが現れたのは、奇しくも松尾八段、郷田九段が同じタイミングで△7七角成(第2図)と角交換してきた後でした。
これに対しては▲7七同桂が定跡です(初めて本局面を見た方にはこれでも驚きだと思いますが)。もうすぐ発売になる「振り飛車の新機軸!初手▲7八飛戦法」にも、おそらく▲7七同桂しか載っていないでしょうし、鈴木九段もこの手でした。
ところが、藤井九段の一手はまさかの▲7七同銀(第3図)!新手です。
これには当然△4五角が見えます。三間飛車党にはおなじみの、いわゆる「△4五角問題(先後逆の場合は▲6五角問題)」です。△6七角成と△2七角成が同時に受かりません。
▲3六角という切り返しはありますが、以下△6七角成▲6三角成△5二金▲3六馬△5七馬(第4図)で歩得できるので居飛車不満なし、というのが△4五角問題の基本的な考え方です。
しかし、この形なら実は振り飛車も互角以上に戦える、というのが藤井九段の周到な事前研究だったに違いありません。
が、松尾八段は男です。藤井九段の事前研究を恐れず第4図の変化を選びました。
以下、前例のない力戦が繰り広げられましたが、結果は松尾八段の勝ち。鈴木九段ー郷田九段戦も郷田九段勝ちとなりました。
三間飛車祭り、ふたたび
ちなみに、2019年3月6日の将棋連盟ライブ中継は、上記2局と▲飯島栄治七段 対 △小倉久史七段の3局。
上記2局が三間飛車で、三間飛車党の小倉七段が三間飛車を指せば中継局3局の戦型がすべて三間飛車というまさに三間飛車祭りとなっていましたが、なぜか小倉七段は2015年10月以来となる意表の向かい飛車を採用(参考2図。少しメリケン向かい飛車風です)。
とはいえ3局中2局で三間飛車というのは、十分三間飛車祭りの範疇と言えるでしょう。
なお、前回の三間飛車祭りは先月後半のこちら。
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今、三間飛車が熱いです。
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