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西田拓也五段の石田流組み換え 対 伊藤匠五段の居飛車持久戦

久保王将、里見女流四冠、山本博志四段の三間飛車が揃い踏み

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三間飛車祭り

一昨日(2019年2月19日)行われた第4期叡王戦挑戦者決定三番勝負第2局は大熱戦でした。

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菅井竜也七段、菅井流三間飛車で永瀬拓矢七段に勝利 叡王戦 2019年2月19日に行われた第4期叡王戦挑戦者決定三番勝負第2局、▲永瀬拓矢七段 対 △菅井竜也七段戦。挑戦者決定三番勝負の初戦に敗れた後手・菅井達也七段は、カド番の第2局で菅井流三間飛車(阪田流三間飛車)を採用しました。

菅井竜也七段の「菅井流三間飛車(阪田流三間飛車)」VS永瀬拓矢七段の「永瀬流 負けない将棋」の一戦は、188手の大熱戦の末菅井七段の勝利となりました。

本局の余韻が冷めやらない中、昨日さらなる三間飛車祭りが発生しました。将棋連盟ライブ中継アプリで中継された6局のうち、半分の3局が三間飛車だったのです。

三間飛車を指した3人とは、プロ棋界トップの振り飛車党・久保利明王将と、女流プロ棋界トップの振り飛車党・里見香奈女流四冠、そして次代を担う新進気鋭の三間飛車党・山本博志四段です。まさに揃い踏みと言って良い組み合わせでしょう。

初手▲7八飛戦法と楠本式(風)石田流

山本四段と里見女流四冠は、いずれも初手▲7八飛戦法(猫だまし戦法)を採用しました(第1図、第2図)。

【第1図は11手目▲3八玉まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v王 ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・|七
| ・ 角 飛 銀 ・ ・ 王 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=11 ▲3八玉まで
【第2図は13手目▲3八玉まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・v銀 ・ ・v王v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 角 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七
| ・ ・ 飛 銀 金 ・ 王 ・ ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=13 ▲3八玉まで

初手▲7八飛戦法は、2年ほど前からプロ棋界でよく指されるようになり、来月(2019年3月)初の戦術書「振り飛車の新機軸!初手▲7八飛戦法」(門倉啓太五段 著)が発売されることが決まり、ますます盛り上がりをみせています。

門倉啓太 (著) 発売日:2019/3/22

そして久保王将は、3手目▲6六歩のノーマル三間飛車から石田流に組み替える戦術を採用しました(第3図)。

【第3図は37手目▲3七角まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金v王 ・|二
| ・ ・v歩v銀v歩v歩v角v銀 ・|三
|v歩 ・ ・v歩 ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・|五
| ・ ・ 飛 歩 銀 ・ 歩 ・ 歩|六
| 歩 歩 桂 ・ 歩 歩 角 歩 ・|七
| ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 王 ・|八
| 香 ・ ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=37 ▲3七角まで

居飛車側の持久戦志向を見て、▲5九角から石田流に組み替え、さらに▲3六歩から▲3七角とB面攻撃を狙う趣向を披露しました。

この布陣は、居飛車穴熊に対する楠本式石田流に似ています。

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ただし、居飛車が縦に強い左美濃でありかつ1筋の端歩を突き合っているため、楠本式のもう一つの狙いである端玉(▲1八玉型)に組むことはできません。

里見女流四冠と久保王将、勝利

3局のうち、最初に終局したのは第1期ヒューリック杯清麗戦、▲里見女流四冠 対 △堀彩乃女流2級戦。初手▲7八飛から結果的に角交換しないノーマル三間飛車に落ち着き、長い駒組みの後里見女流四冠がうまく打開して快勝しました。

次に終局したのは第90期ヒューリック杯棋聖戦、▲久保王将 対 △斎藤慎太郎王座戦。中終盤の激しいねじり合いの末、183手の長手数で久保王将が勝利しました。

山本博志四段、惜敗

最後に残った第32期竜王戦6組、▲山本四段 対 △佐々木大地四段は、序盤早々初手▲7八飛戦法らしい面白い攻防が見られました(第4図)。

【第4図は12手目△8六歩まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・v王 ・v角 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 ・|七
| ・ 角 飛 銀 ・ ・ 王 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=12 △8六歩まで

第4図は、8筋を受けない山本四段の誘いに対し、佐々木四段が意を決して△8六歩と突っかけた局面です。

以下、▲8六同歩△同飛▲7九金△8二飛▲8六歩△4四歩▲7七角△7二銀▲8八飛△3二玉▲8五歩△8三歩と進行しました(第5図)。

【第5図は24手目△8三歩まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・v金v銀v桂v香|一
| ・v飛v銀 ・ ・ ・v王v角 ・|二
|v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩 ・|三
| ・ ・ ・ ・ ・v歩v歩 ・v歩|四
| ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六
| 歩 ・ 角 歩 歩 歩 歩 歩 ・|七
| ・ 飛 ・ 銀 ・ ・ 王 ・ ・|八
| 香 桂 金 ・ ・ 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=24 △8三歩まで

途中▲7九金が習いある手筋で、△8八角成に▲同飛と取れるようにしています。続いて当たりを避ける△8二飛に対し▲8六歩と強気に対応。取ると角交換から▲7七角で両取りが決まります。以下、先手が8筋を押し込むことに成功しました。

第5図を左右反転させると参考図のようになります。

【参考図は24手目△2三歩まで】
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金 ・v金 ・v桂v香|一
| ・v角v王 ・ ・ ・v銀v飛 ・|二
| ・v歩 ・ ・v歩v歩v歩v歩v歩|三
|v歩 ・v歩v歩 ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 歩 歩 歩 歩 歩 角 ・ 歩|七
| ・ ・ 王 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八
| 香 桂 銀 金 ・ ・ 金 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=24 △2三歩まで

振り飛車としては不満のない序盤戦でしょう。

この後、山本四段が優勢なのでは、という局面もあったようですが、相手は現在13連勝中(対戦相手には広瀬章人竜王や行方尚史八段、千田翔太六段らトッププロを含みます)の若手強豪・佐々木大地四段。終盤押し込まれ、結果は山本四段にとって無念の敗北となりました。

2勝1敗で終わった本日の三間飛車祭り。次の祭りはいつになるでしょうか。楽しみです。

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