藤井聡太三冠、竜王を奪取し四冠に
2021年11月12日・13日に行われた第34期竜王戦七番勝負第4局、▲豊島将之竜王 対 △藤井聡太三冠(王位、叡王、棋聖)戦にて、藤井三冠が超難解な終盤戦を制し、無傷の4連勝で竜王を奪取しました。おめでとうございます。
これで8大タイトルの半数を占める「藤井四冠」が誕生しました。一方破れて無冠となった豊島九段。「四強」時代の終焉と言えるかもしれません。
藤井猛九段(竜王3期)インタビュー
藤井聡太竜王(四冠)誕生を受けて、縁のある棋士や関係者がインタビューを受けていますが、藤井猛九段もその一人(過去に竜王位に就いた棋士として)。言わずとしれた「藤井システム」(参考1図)の創始者で、竜王3期の輝かしい実績を誇ります。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v金v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・v金 ・ ・v玉 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v銀 ・v角v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・v歩v歩v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩|五 | ・ ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ ・|六 | 歩 歩 角 銀 歩 ・ 桂 歩 ・|七 | ・ ・ ・ 飛 金 ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ ・ 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=25 ▲3七桂まで

重要なのは動機があるかどうかなんです。私は新戦法を編み出したくて藤井システムを指したわけではないです。勝つために、必要性があって考えたので。
相手に勝つためにはどうすればいいのか、という思想で指してきたので、コンピュータ的な強さは求めないです。将棋星人が攻めてきたら対応できないのが私です。
などなど、名言・至言多数の面白いインタビューとなっています。
「勝つために」編み出された新戦法
藤井九段といえば藤井システム、そして角交換四間飛車(参考2図)に代表される四間飛車の大家。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金v玉v金v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・v角 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 角 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ ・ 銀 飛 ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=7 ▲6八飛まで
ですが、それだけでは相手に的を絞られるので戦いにくく勝ちにくい面があります。
前述のインタビューの通り、「勝つために」それ以外の戦法・戦術を試行錯誤し研究しているのは間違いありません。相矢倉での藤井流早囲い(参考3図)もその一つです。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二 |v歩 ・v銀v歩 ・v金v銀v歩v歩|三 | ・ ・v歩v角v歩v歩v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五 | ・ ・ 歩 歩 歩 角 歩 ・ ・|六 | 歩 歩 銀 金 ・ 歩 銀 ・ 歩|七 | ・ ・ 玉 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=33 ▲6八金まで
2手目△3二飛戦法を初採用
そして研究のさらなる一端が垣間見れたのが、2021年11月5日に行われた第93期ヒューリック杯棋聖戦(主催:産経新聞社、日本将棋連盟)二次予選、▲佐々木慎七段 対 △藤井猛九段戦です。
振り飛車党の佐々木七段に対し、藤井九段は2手目△3二飛戦法(後手番猫だまし戦法)をはじめて採用しました(第1図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v玉v金v銀v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 玉 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=2 △3二飛まで

2019年には初手▲7八飛戦法(先手番猫だまし戦法)を初採用していた藤井九段。約2年半の時を経て、今度は後手番での初採用となりました。

端歩の駆け引きの末対抗形に
藤井九段の2手目△3二飛に対し、9筋の端歩を突いて相手の対応を打診する佐々木七段。対する藤井九段は端歩の相手をせず玉形の整備を急ぎました。それを見た佐々木七段は端歩を突き越して居飛車を採用。
端歩の駆け引き次第では相振り飛車になることも考えられたと思います。佐々木七段が相振り飛車で挑んでいたら藤井九段がどう対応していたのかも興味深いところでした。楽しみは次局以降に取っておきます。
端歩突き越し銀冠VS石田流+ダイヤモンド美濃
藤井九段は、端の位を取られた代償に角道を止めて石田流に組みに行きました(第2図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v玉v金 ・v金v銀v桂v香|一 | ・ ・v銀 ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・|四 | 歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 歩 ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ 角 銀 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 玉 金 ・ 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=14 △3五歩まで
その後、佐々木七段の居飛車+端歩突き越し銀冠VS藤井九段の石田流+ダイヤモンド美濃の戦型に(第3図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香 ・ ・v金 ・ ・ ・v桂v香|一 | ・v玉v銀 ・v金 ・ ・ ・ ・|二 |v歩 ・v桂v銀v歩 ・v角v歩 ・|三 | ・v歩v歩v歩 ・v歩v飛 ・v歩|四 | 歩 ・ ・ ・ 歩 ・v歩 歩 ・|五 | ・ 歩 歩 ・ ・ 歩 ・ ・ 歩|六 | ・ 銀 角 歩 ・ 銀 歩 ・ ・|七 | ・ 玉 金 金 ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=41 ▲8八玉まで
第3図以下、藤井九段が中央から動いていき一気に激しい展開になりました。
その後中盤の折衝の末優勢となった藤井九段がそのまま勝利。おめでとうございます。今後の藤井九段の戦型選択にも注目です。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 6.00 / 騨奎紫(たけし)
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