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防衛か奪取に王手がかかる第3局
2019年5月29日に行われた第30期女流王位戦第3局、▲里見香奈女流四冠 対 △渡部愛女流王位戦。
棋譜と詳しい解説は、女流王位戦中継サイトか将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます(2019年6月時点)。
第1局はゴキゲン中飛車(里見女流四冠の勝ち)、第2局は角道オープン四間飛車(渡部女流王位の勝ち)ときて迎えたこの第30期女流王位戦第3局。
先手・里見女流四冠のとった作戦はノーマル三間飛車でした。対する後手・渡部女流王位は、今流行りのエルモ囲い急戦で対抗しました(第1図)。
エルモ囲いは、6月12日に発売開始になる「さわやか流疾風三間飛車」(杉本和陽四段 著)や、先日発売され大ヒットしている「あぴまる流将棋定跡シリーズ 今日から捌ける三間飛車③: ノーマル三間飛車vs.斜め棒銀」(アマチュアのしめりけさん 著)でも取り上げられている、大注目の囲いです。
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新手・▲3六歩
エルモ囲い急戦を迎え撃つ里見女流四冠。当然事前に周到な研究が行われていたことでしょう。第1図以下、▲5七銀、▲6七銀、▲4六歩あたりが自然ですが、里見女流四冠の一手は新手・▲3六歩!でした(第2図)。
難しい一手ですが、▲5七銀、▲6七銀だと銀の形を決めすぎで、▲4六歩だと後々の▲4六角の筋が無くなって不満、と見たのかもしれません。
次に▲2六歩か▲4六歩も突ければ一人前の自然な形と言えそうですが、瞬間的にとても違和感のある怖い形です。
はたして渡部女流王位は、第2図以下▲3六歩をとがめるべく△5五歩と突いてきました。▲同歩と取ると△同角で玉のコビンのにらみが嫌味です。
しかしこれが誘いの隙で、△5五歩に対し▲5七銀で里見女流四冠のペースになったようです。以下△8六歩▲同歩△5六歩▲同銀△5四銀▲5七金△5五歩▲6七銀と進行し、銀が追い返されて先手不満のようですが、ここから△6四歩▲4六歩△6五歩▲4七金△7三桂▲5八飛(第3図)と進み、先手が中央から反撃する布陣が整いました。
さらには左辺での折衝にて、相手の厚みのある攻めをいなし切り、左銀を中央に寄せて美しい4筋位取り四枚高美濃囲いが完成(第4図)。
手数が長く解説は割愛しますが、飛車の細かい動きと歩の小技を組み合わせた指し回しは美しく絶品です。このあとの中・終盤も含め、盤に並べて観てみることをオススメします。
里見女流四冠、奪取に王手
実戦はこのあと、里見女流四冠に攻め間違いがあったようで難解な戦いになりましたが、最後は里見女流四冠が振り切って勝利。女流王位奪取に王手をかけました。
第4局の戦型と結果に注目です。
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