第34期竜王戦挑戦者決定三番勝負
2021年8月12日に行われた第34期竜王戦挑戦者決定三番勝負、▲永瀬拓矢王座 対 △藤井聡太二冠(王位・棋聖)戦。
棋譜と詳しい解説は、竜王戦中継サイトや将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます。
竜王戦中継サイトでは、2021年9月時点で無料で棋譜と解説を観ることができます。
永瀬王座、意表の先手番ノーマル三間飛車を採用
先手番となった永瀬拓矢王座が採った作戦は、まさかのノーマル三間飛車でした。
デビュー当時は三間飛車党だった永瀬王座(下記は永瀬王座が三間飛車とゴキゲン中飛車を多用する振り飛車党だったときの棋書)ですが、先手番で角道を止めるノーマル三間飛車を採用したのはなんと2010年以来。
過去、藤井二冠との公式戦で唯一の白星をあげた一局では後手四間飛車を採用していた永瀬王座(2020年10月26日に行われた第70期王将戦挑戦者決定リーグ戦)。
藤井二冠に対し振り飛車で戦うことに好感触を持っていたのでしょう。
相穴熊に
永瀬王座はさらに端香を上がって三間飛車穴熊を明示。それに呼応するかのように藤井二冠も居飛車穴熊に組み、相穴熊の戦型となりました。
先手番ながら、積極的に戦うというよりもじっくりと粘り強く戦おう、という永瀬王座の意気込みを感じる戦型です。
実際のところ、21時を過ぎても延々と中盤戦が続くようなものすごい将棋になりました。
盛り上がる振り飛車穴熊
それにしても、振り飛車穴熊なのに歩が盛り上がっていくとは、いったい何なんでしょうか。
空中分解せずにまとめ上げる高度な技術力が必要であり、永瀬王座にしか指しこなせないでしょう。
三間飛車党・山本博志四段は以下のようにツイートしています。
永瀬先生の振り穴、個性が凄いよう…
穴熊ってこう… 低く固く構えて捌くものというイメージがありましたが、五段目にこんなに歩が並んで飛車金も中段で、力強く押さえ込むなんて…
強者の個性は眩しいですね(山本)— 東竜門〜関東若手棋士〜 (@wakate_shogi) August 12, 2021
三間飛車祭りの一日
余談ですが、この対局が行われた8月12日は、将棋連盟ライブ中継アプリでの中継局9局のうちなんと6局で三間飛車が採用されました(相振り飛車となった女流王座戦、▲里見香奈女流四冠 対 △上田初美女流四段戦を含みます)。
さらには中継局以外で、山本博志四段が叡王戦予選にて齋藤明日斗四段と長谷部浩平四段を三間飛車で連破。
三間飛車の採用数が凄まじい一日で、上記以外の山本四段のツイートも冴え渡っていました。
藤井二冠勝利
本局に戻って、87手目の局面では藤井二冠の飛車が狭く取られそうな状況で、これは永瀬王座がやれるのではないかと感じましたが、次の一手が良い手で、藤井二冠の大駒がさばける見通しが立ち、いっぺんに景色が変わった気がします。
以降藤井二冠がじわじわと永瀬玉に迫り、永瀬王座も粘りに粘ったものの、最終的に184手で藤井二冠が勝利しました。
結果的に藤井二冠は一局を通じて大きなミスをすることもなく、形勢の針は常に藤井二冠を向いたまま押し切ったようです。振り飛車戦法の世知辛さを垣間見た一局でもありました。
しかしあの指し回しができるのは、藤井二冠をはじめ一握りのトッププロだけです。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 6.00 / 騨奎紫(たけし)
藤井二冠、竜王戦挑戦者に
そして2021年8月30日に行われた三番勝負第2局にて、藤井二冠が相掛かりの一戦を短手数で制し、竜王戦挑戦者に名乗りをあげました。
これで藤井二冠は、第62期王位戦、第6期叡王戦に続き、豊島将之二冠(竜王・叡王)とのいわゆる「19番勝負」に臨むことに。
王位戦は4勝1敗で防衛を果たした藤井二冠。はたして年末、そして年度末には何冠になっているでしょうか。目が離せません。
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