桐山九段、現役続行
2021年5月14日に行われた第34期竜王戦5組、▲桐山清澄九段 対 △上村亘五段戦にて、桐山九段が勝利し、引退を回避し現役続行を決めました。おめでとうございます。
棋譜と詳しい解説は、将棋連盟ライブ中継アプリで観ることができます(有料)。
いきなり三間飛車
50年以上にもおよぶ現役生活の終了がかかった一局にて、先手番となった桐山九段は初手でいきなり三間飛車を明示する、猫だましを採用しました。
桐山九段がこの初手を指したのはわずか2度目。慣れない戦術で惨敗するリスクがあるにもかかわらず、それを採用できる度胸と若々しさには驚嘆させられます。
師匠の戦法・升田式石田流を採用
その後、後手・上村五段との駆け引きの結果、升田式石田流に進行しました。
桐山九段の1人目の師匠は、故・升田幸三実力制第四代名人です。
「1人目」の理由は、桐山九段ははじめ升田門下となり上京して内弟子となったものの、慣れない環境もありホームシックのため帰郷し、その後故・増田敏二六段門下として再入門し、プロ棋士となった経緯があるからで、このあたりのエピソードは将棋世界2020年5月号の「師弟 Vol.7 桐山清澄九段×豊島将之竜王・名人【前編】2人の師匠」にて、インタビューとともに掲載されています。
引退のかかった一局にて桐山九段が升田式石田流を採用したのは、何かの偶然でしょうか。いや、偶然到達する戦法ではない(三間飛車にするのが前提条件)ので、意図的に狙っていったのではないかと思います。後述のインタビューツイートの通り、振り駒で先手になれば▲7八飛と決めていたそうです。
会心の一局
本局では、
- 序盤戦での後手が角を手放したのを見て左金を玉方に引き付けていく振り飛車の呼吸
- 中盤戦での崩れない力強い指し回し
- 終盤戦での自玉の安全度を見極めての激しい切り合い
と、一局を通じて見事な戦いを見せた桐山九段。桐山九段にとって、会心の一局だったのではないでしょうか。
終局後、主催社から代表質問がありました。以下抜粋。
・負ければ引退という一番でしたので、悔い残らないように思い切って指そうと。嬉しいの一言
・振り駒で先手になれば▲7八飛と決めておりました
・来期は昇級しないとダメなんで、全力を尽くしたい
写真:日本将棋連盟提供 pic.twitter.com/ITjl0T1Tz3— 中日新聞 東京新聞 将棋【公式】 (@chunichishogi) May 14, 2021
弟子・豊島竜王による解説ツイート
桐山九段の弟子である豊島竜王(叡王)は、師匠の現役続行が当然ながらうれしかったようで、祝福のツイートとともに、本局のプチ解説をつぶやいています。
せっかくなのでモバイル中継ユーザーの皆様向けに振り返り解説します。
1~15手目
趣向の出だしから升田式石田流に。師匠は升田先生のご自宅で内弟子経験あり。
35~45手目
後手が角を手放したので、金銀を玉にくっつけて堅陣を築きました。やや作戦勝ちでしょうか。
57手目
本局の命運を懸けた角です— チーム豊島 (@abT_toyoshima) May 14, 2021
95~103手目
後手の飛車、銀、金に当てながら先手先手でポイントを稼いでいきました。最後先手が飛車を捌いたところは飛車の差で一手勝ちが見込める態勢です。
133手目
おしゃれな詰み。▲33歩成△同玉の時に51の竜が縦に利いていて詰ましやすくなっています。中継ブログのインタビューも必見です。
— チーム豊島 (@abT_toyoshima) May 14, 2021
通算1000勝は厳しいが
これで桐山九段は現役生活通算996勝となりました。
残るは来期の竜王戦のみ。通算1000勝達成は厳しいと思いますが、どこまで勝ち星を伸ばすことができるか、桐山九段の奮闘に注目です。
参考:評価値グラフ
※棋譜解析エンジン / 評価関数:
YaneuraOu NNUE 6.00 / 騨奎紫(たけし)
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