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棒金に並ぶ対石田流の急戦策
第4期叡王戦の段位別予選、▲中村修九段 対 △木村一基九段戦。
本局の棋譜と動画解説は、叡王戦のWebサイトで観ることができます(2018年8月時点)。
中村修九段は過去に王将のタイトルを2度獲得した古豪で、その棋風は「不思議流」や「受ける青春」と呼ばれています。本局では石田流三間飛車を採用しました。
対する「無冠の帝王」木村一基九段は振り飛車対策として急戦を選ぶ傾向が比較的高く、「木村一基の急戦・四間飛車破り」という棋書をリリースしてもいます。本局では石田流対策として、二枚銀(5三銀+6三銀の形)を築いてからの袖飛車を選択しました(第1図)。
袖飛車は、棒金と並ぶ対石田流の代表的な急戦策です。
攻めをいなす飛車引き
石田流側としては、袖飛車による3筋の攻めを相手にせず、いなしてさばくのが基本方針となります。
第1図以下の指し手
▲7八飛 △7四歩
▲同 歩 △同 銀
▲5七銀 △8五歩
▲4六銀 △7五銀
▲5五歩 (第2図)
飛車を引くのが、対袖飛車や対棒金でよく現れる手筋です。
その後先手は第2図のように▲5五歩と中央から手を作りにいきました。
千駄ヶ谷の受け師炸裂
少し進んでむかえた第3図。
△5五同銀には▲7五飛があります。
△8六飛や△7六歩など、相手陣にせまる手が見えますが・・・
第3図以下の指し手
△7四歩!
▲5九飛 △5四歩!(第4図)
下から△7四歩、そして△5四歩。歩切れになることをいとわない、渋い受けです。「千駄ヶ谷の受け師」らしい、棋風の現れた指し手だと思います。
石田流対急戦の中終盤戦
第4図以下中村九段は、居飛車の包囲網をなんとかかいくぐり、駒損しながらも細い攻めで木村玉に食らいついていきました。
石田流対急戦の中終盤戦にふさわしい展開です。
この後も木村九段は中村九段の攻めに対してていねいに受け続け、最後は詰めろ逃れの詰めろをかけて勝負あり。序盤から終盤まで、見ごたえのある攻防でした。
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棒金戦法とは、主に石田流三間飛車対策で用いられる、金銀による押さえ込み作戦です。数ある振り飛車戦法の中で石田流は、浮き飛車にして金銀よりも前線に飛車を配置する、特殊な作戦です。ならばその飛車を狙って金銀を盛り上げて押さえ込んでしまおう、というのが棒金の狙いとなります。
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