里見香奈女流王将、盤石の防衛
2018年10月に行われた第40期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負にて、里見香奈女流王将(四冠)が猫だまし戦法(初手▲7八飛戦法&2手目△3二飛戦法)を連続採用して加藤桃子奨励会初段に勝利し、女流王将位を防衛しました。
棋譜は、囲碁・将棋チャンネルのWebサイトで観ることができます(2018年11月時点)。
ゴキゲン中飛車や3手目▲7五歩からの石田流の採用が目立つ里見女流四冠ですが、本シリーズは角道オープン型三間飛車で一気に勝負を決めました。
以下、第1局と第2局の序盤戦をかんたんに振り返ります。
第1局 角道オープン型VS急攻策
第1局、先手番となった加藤奨励会初段の初手▲7六歩に対し、後手・里見女流王将は2手目△3二飛(第1図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v王v金v銀v桂v香|一 | ・ ・ ・ ・ ・ ・v飛v角 ・|二 |v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩v歩|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 ・ ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 王 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=2 △3二飛まで
その後、△3四歩を突いた後△4四歩とはせず、角道オープン型のまま駒組みを続けます。
そして16手目△4二銀を見て、加藤奨励会初段は意を決して▲2四歩と仕掛けていきました。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・v金 ・v桂v香|一 | ・v王v銀 ・ ・v銀v飛v角 ・|二 | ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 |v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 歩 ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ 角 王 ・ ・ 銀 ・ 飛 ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=17 ▲2四歩まで
後手が簡単につぶれているようですが、以下△2四同歩▲同飛△8八角成▲同銀△3一金(第3図)で耐えています。
後手の持駒:角 歩 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金 ・ ・v金v桂v香|一 | ・v王v銀 ・ ・v銀v飛 ・ ・|二 | ・v歩v歩v歩v歩v歩 ・ ・v歩|三 |v歩 ・ ・ ・ ・ ・v歩 飛 ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六 | ・ 歩 ・ 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|七 | ・ 銀 王 ・ ・ 銀 ・ ・ ・|八 | 香 桂 ・ 金 ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:角 歩 手数=22 △3一金まで
第3図以下、2筋で長い折衝が続きましたが、その後一気に局面が動き、結果は96手で後手・里見女流王将の勝ちとなりました。
第2局 石田流VS銀冠+袖飛車
第2局では、先手・里見女流王将の初手▲7八飛に対し、後手・加藤奨励会初段は角道を開けずに駒組みを進めます(第4図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・v金v王v桂v香|一 | ・v飛 ・v銀v金 ・v銀v角 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩v歩v歩 ・|三 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩|六 | 歩 歩 角 歩 歩 歩 歩 歩 ・|七 | ・ ・ 飛 銀 金 ・ 銀 ・ ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 王 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=17 ▲5八金まで
先手中飛車に対する角道不突き左美濃の戦術が、対先手三間飛車にも波及した格好で、実戦例もちらほら見られます。
第4図以下、加藤女流初段はついに△3四歩と突いて角道を開けましたが、対する里見女流王将の一手は角道を止める▲6六歩。
以下、先手石田流VS後手銀冠+袖飛車の戦型となりました(第5図)。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一 | ・ ・v飛 ・v金 ・v金v王 ・|二 |v歩 ・ ・v銀 ・v歩v桂v銀 ・|三 | ・ ・v歩v歩v歩v角v歩v歩v歩|四 | ・v歩 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 飛 歩 歩 歩 歩 歩 歩|六 | 歩 歩 ・ ・ 銀 ・ 角 ・ ・|七 | ・ ・ ・ ・ 金 ・ 銀 王 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=40 △7四歩まで
第5図以下、▲7四同歩△同銀▲4五歩?!△同桂▲6四角△5七桂成▲同金△7五銀打▲9一角成?!(第6図)と、里見女流王将は大きな駒損を甘受して攻めていきます。
後手の持駒:歩二 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ | 馬v桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・v香|一 | ・ ・v飛 ・v金 ・v金v王 ・|二 |v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・v銀 ・|三 | ・ ・v銀 ・v歩v角v歩v歩v歩|四 | ・v歩v銀 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 飛 歩 歩 ・ 歩 歩 歩|六 | 歩 歩 ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・|七 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 王 ・|八 | 香 桂 ・ ・ ・ 金 ・ 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:桂 香 歩二 手数=49 ▲9一角成まで
7筋の2枚の銀を遊ばせているという主張があるとはいえ、飛車を大事にするアマチュアには絶対に選べない手順です。
最後は自玉すらさばき切った里見女流王将が豊富な持ち駒を活かして後手玉をしとめ、2連勝で防衛を果たしました。
防衛戦は続く
女流王将位を防衛した里見女流四冠ですが、さらに第8期リコー杯女流王座戦五番勝負、第26期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負と防衛戦が続いています。
現時点でいずれも第1局まで終了しており、女流王座戦では清水市代女流六段相手にゴキゲン中飛車、倉敷藤花戦では谷口由紀女流二段相手にまさかの初手▲2六歩を採用(さらにまさかの力戦相居飛車戦に)。
的を絞らせないためにか作戦を散らしながらも、いずれも勝利しているのはさすがとしか言いようがありません。
今後も、タイトル戦の行方と里見女流四冠の戦型選択に注目です。
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