奇襲戦法の成功例と複数の対策を解説
「これで万全! 奇襲破り事典」のひとくちレビューをお送りします。
本書では、奇襲戦法ごとにまず成功例を解説し、続いてその対策として
- 相手の狙いを外す
- がっちり受け止める
- ハメ手の裏をかく
の3通りもの戦い方を解説しています。
自分の棋風にあう対策を選ぶことができるのは大きな長所です。
著者は本間博六段。本間六段のこの他の著者には、「妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋事典」や「初手から分かる!将棋・序盤のセオリー」などがあります。
三間飛車関連のテーマが多数
本書の目次は以下の通りです。
第1章 「鬼殺し」
第2章 「新鬼殺し」
第3章 「急戦石田流」
第4章 「先手番早石田」
第5章 「パックマン戦法」
第6章 「筋違い角」
第7章 「嬉野流」
第8章 「超急戦棒銀」
第9章 「後手番角頭歩」
第10章 「端角中飛車」
第11章 おさらい問題
第1章から第4章が鬼殺し(第1図)、新鬼殺し、急戦石田流、先手番早石田(第2図)と、初っ端から三間飛車関連が並んでいます。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v王v金v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・v歩 ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 桂 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 ・ 銀 金 王 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=5 ▲7八飛まで
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・v金v王v金v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・v銀 ・ ・ ・v角 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 ・ ・ 王 ・ ・ ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=9 ▲7四歩まで



なお、第2図から△7二金▲7五飛?!と進む、いわゆる「久保流急戦」(第3図。久保利明九段が発案)も載っています。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂 ・ ・v王v金v銀v桂v香|一 | ・v飛v金v銀 ・ ・ ・v角 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 ・ ・ ・ 王 ・ ・ ・|八 | 香 桂 銀 金 ・ 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=11 ▲7五飛まで

ただし、新・石田流(第4図。鈴木大介九段が発案。「鈴木流急戦」とも呼ばれます)は載っていません。
後手の持駒:なし 9 8 7 6 5 4 3 2 1 +---------------------------+ |v香v桂v銀v金v王v金v銀v桂v香|一 | ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v角 ・|二 |v歩 ・v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩|三 | ・ ・ 歩 ・ ・ ・v歩 ・ ・|四 | ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五 | ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|六 | 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 歩 歩|七 | ・ 角 飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八 | 香 桂 銀 金 王 金 銀 桂 香|九 +---------------------------+ 先手の持駒:なし 手数=7 ▲7四歩まで

新・石田流は変化が多岐におよび難解ですし、居飛車良しまでもっていくのが大変なので、掲載を見送ったのかもしれません。
パックマンや嬉野流も
続く第5章には、今年春に山崎隆之八段が連続採用して話題になった「△4四歩パックマン」が載っています。振り飛車党ならパックマンを採用したときの違和感は比較的少ないはずで、こちらも見どころのひとつと言えるでしょう。


このほかにも、例えば第7章「嬉野流」は最近現れた奇襲戦法なので、「奇襲大全」などの昔の奇襲本には載っておらず、貴重な解説となっています。
奇襲を食らいたくない方、奇襲愛好家両方にオススメ
まえがきにて本間六段が以下のように書いている通り、本書は奇襲戦法を食らいたくない方だけでなく、奇襲戦法を愛する方にもオススメです。
また本書では、奇襲と称してはいるが、正しく対応されても実戦でも十分通用し、互角に戦える戦法も多数紹介している。
そういう意味では奇襲戦法に悩まされている方のみならず、奇襲戦法の愛好家の方にも喜んで頂ける内容になったのではないかと自負している。
奇襲戦法愛好家にとっても、奇襲破りの手順を知ることは勉強になりますし、さらにその裏をかく手順を編み出すためにも必要な知識と言えます。
観る将の方にも
奇襲戦法は、戦法の多様性や将棋の奥深さを物語ってもいる価値のあるものだと私は感じています。
普段プロ棋士の格調高い将棋しか観たことがない観る将の方にとっても、「こんな変な形の将棋もあるのか!」と意外性を楽しめるのではないでしょうか。
コメント