目次
中飛車VS三間飛車の専門書
「中飛車の逆襲 対三間飛車編」のひとくちレビューをお送りします。
先手中飛車VS後手三間飛車の攻防にしぼった、中飛車目線で解説する一冊です。
著者は竹内雄悟五段。本書は竹内五段にとって初の著書となります。
本書の目次
目次は以下の通りです。
本書の目次
序 章 相振り飛車と中飛車左穴熊のポイント
第1章 相振り飛車編
第1節 相美濃囲い
第2節 美濃囲い 対 穴熊
第3節 角道不突中飛車
第2章 中飛車左穴熊編
第1節 基本図までの話
第2節 対穴熊
第3節 対美濃囲い
第3章 実戦譜
中飛車左穴熊 対 美濃囲い
コラムがひとつもない、難易度が高く硬派な一冊です。
A図で▲○○○は千日手を避ける手だ。
序章の最初の一文がこれ(「○○○」には実際には指し手が入ります)。A図は手作りが難しそうな序盤戦の局面で、あまりの唐突さに度肝を抜かれました。
序章ではA図以下もいくつかの序盤局面のプチ解説が続くのですが、それらは第2章以降の各種テーマ図であることが読み進めるとわかります。ですが、節の数が少なく、比較的似た局面が多いため、それぞれどこに載っているのか探すのに苦労しました。
指し手(符号)の量が多く、その指し手の意味の解説が少なめなので、上級者向きと言えます。
実戦譜は、第45期棋王戦予選、西田拓也四段との一戦です。
オーソドックスな相振り飛車
第1章は、後手三間飛車に対し先手中飛車が玉を右辺に囲いに行く、オーソドックスな相振り飛車です。
相美濃囲い(参考1図)、美濃囲いVS(右)穴熊、角道不突き中飛車(参考2図)が解説されています。
中飛車左穴熊一筋
第2章は、玉を左に囲う中飛車左穴熊です。
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相振り飛車の基礎知識 中飛車左穴熊とは
「中飛車左穴熊」とは、穴熊を右辺ではなく左辺に構える中飛車戦法です。「左」を付けない「中飛車穴熊」の場合、昔からよく知られている、穴熊を右辺に構える中飛車戦法を指すので、これと区別するため中飛車「左」穴熊と呼ばれています。
最近は左穴熊がやや指しづらいとされ、代わりに中飛車左玉が登場したりオーソドックスな相振り中飛車に回帰したりする風潮があると思いますが、本書では妥協せずに左穴熊にしぼって解説しており、漢気を感じます。
第1節の「基本図までの話」では、基本的な中飛車左穴熊VS石田流の形に進む前の変化について解説しています。「角交換相振り飛車 徹底ガイド」(杉本昌隆八段 著)の第5章、「中飛車左穴熊風相振り」に似た形も取り上げられています。
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三間党注目「角交換相振り飛車 徹底ガイド」2019年9月発売
2019年9月に、角交換するタイプの相振り飛車の棋書「角交換相振り飛車 徹底ガイド」が発売されることがわかりました。著者は、「相振り革命」シリーズなどの相振り飛車の棋書でおなじみの杉本昌隆八段です。最近では、杉本八段が順位戦C級1組で昇級した一方、弟子の藤井聡太七段が頭ハネで昇級を逃したことでも話題を集めました。
第2節はVS三間飛車穴熊(参考3図)、第3節はVS美濃囲い(参考4図)の解説です。
第3節のVS美濃囲いでは、VS△4四銀型、VSダイヤモンド美濃など、比較的大きく形の異なる布陣に対する戦術が解説されており、バリエーションに富んでいて読みごたえがあります。ページ数の面でも、この第2章第3節がすべての節の中で最もページ数が多い節となっています。
私自身が中飛車左穴熊には基本的に三間飛車美濃囲いで挑むので、そういう意味でも最も注目の節です。
「藤森流中飛車左穴熊破り」(藤森哲也五段 著)に載っているすべての三間飛車側の戦術への対抗策が解説されているわけではないので、三間飛車側としては一安心です。
先手中飛車党は押さえておきたい一冊
難易度が高く読みにくさはありながらも、オーソドックスな相振り中飛車で戦う術と、中飛車左穴熊ならではの手筋の解説がふんだんに盛り込まれた「中飛車の逆襲 対三間飛車編」。
先手中飛車党は押さえておきたい一冊でしょう。三間飛車党にとっても、相手の狙いを知っておくために読んでおきたい一冊です。
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